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冬だし雪虫のことを語ろう

作者: 鑑光あみか

 寒くなってくると、ふわふわと白い妖精のようなものが宙を舞い始めます。

 幼いころに父が教えてくれました。

「あれは雪虫と言って、あれが現れたら一週間くらいで初雪が降りだすと言われているんだよ」

 子供だった私にとってそれはとてもファンタジックで。

 毎年十一月くらいになって雪虫を見たらそんな、今は亡き父との会話を思い出すのです。


 ま、ここ九州では雪虫飛んだところで初雪なんか翌年一月になっても降らなかったりするんですけど。



 と、ここまで読んだ方は、思うかもしれません。

「は? 九州で雪虫??」

 確かに調べると、北海道と本州の北の方で見られると書かれています。

 なら今、私の目の前をふわふわ飛んでいるこれはなんなんでしょう……?

 九州四国でも目撃情報はあると書かれているページもありますし、九州にもいるんだという前提でお読みください。

 だっているんだから。




 ではなぜ九州ではいないような風潮なのでしょうか。

 それについてはひとつ、思い当たることがあるのです。


 雪虫、綺麗で大好きなので、見かけたら友達にとかにも言うんですよ私。

「雪虫が出始めたね。今年雪降るかなあ」

「は? 雪虫? なにそれ?」

 自分が子供のころは、ああこの人雪虫知らないんだで終わらせたけれど。


 私の子供が幼稚園に行っていたころ、集団登園の集合場所にて。ママ友と。

「あー雪虫だ」

「ん? 雪虫?」

「え、あ、今ここに飛んでる白くてふわふわした……」

「あ、いるね、虫。気づかなかった」


 ……見えていないんです。存在を認識していないんです。

 九州ただでさえ虫多いからって、みんな雑すぎない!?


 理解しました。

 九州には雪虫がいないんじゃない。

 認識されてないんだ、と。


 父は九州人ですが、高校を出てすぐ自衛隊に入隊し、関東の駐屯地にいました。

 もしかしたらそこで雪虫を認識したのではないか?

 しかしこれは予測でしかありません。今となっては本人に尋ねることはできませんから。



 今日も私の子供たちと一緒に小学校までの道を歩きながら、ふわふわと白い雪のような妖精のような雪虫を見ました。

 子供たちも雪虫が好きなようで、私に「雪虫いるよー」と教えてくれます。

 九州の多くの人には、認識されてもいない雪虫。

 私たちぐらい、愛でてあげても、いいんじゃないかな。

 それに子供たちが、写真でしか見たことのない彼らの祖父の、虫を愛でる心を継いでるなんて素敵じゃないですか。



 ……あ、あれ、ただのアブラムシの飛行形態ってことはヒミツですよ!

半年前に公開した姉妹作「春だし虫のことを語ろう」も、読みやすいよう改稿しました。

そちらもぜひ!

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