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吾輩はシュテル、飼い猫である。
それもただの飼い猫では無い、産まれた頃より苦しい訓練を積み重ねたエリートである。
そんじょそこらの飼い猫とは勿論格が違うし、ノラ猫なぞとはもはや存在自体が違うと言っても過言ではない。
吾輩は爪砥ぎも爪砥ぎ板とやらでやるし、トイレもきちんと決まった場所で行う。
無駄に暴れる事もしないし、人間共が吾輩と遊びたがれば遊び相手になってやる。
吾輩はエリートなのだ。
「シュテルー!」
うん?あの声は吾輩が世話をしてやっている人間の子だ。
名前は明日香、吾輩にシュテルという呼び名を付けた奴でもある。
それ以前に呼ばれていた名もあるが、子供の相手をしてやるのもエリートである吾輩の役目であるからな。
好きに呼ばせてやってるのだ。
「シュテル、こんな所にいた。まったく、呼んだらすぐに来ないとダメなんだよ」
明日香が吾輩を見つけて抱き上げる。
抱き上げ方は全くなってないが、まだ子供という事で大目に見てやるのがエリートというもの。
明日香は吾輩を抱き上げたまま移動し、広い部屋に置かれているテーブルとイスの所に来ると、空いているイスに吾輩を置き、自分もその隣の席に座る。
「じゃ、わたしは宿題をやるからシュテルは良い子で待ってるんだよ。終わったら遊んであげるからね」
そういってテーブルの上で宿題とやらを始める。
この明日香は小学生とかいうのをやってるらしく、毎日ああして意味の分からない事をしている。
全く、人間と言うモノはおかしな事ばかりするがこれは極め付けだ。
吾輩が遊んでやっている時は楽しそうだが、これをしてる時は全然楽しそうでは無い。
そんな事を進んでやるとは、人間はおかしな生き物だ。
まぁ吾輩には関係の無い事。
これを始めた明日香は長い間ここから離れようとはしないし、吾輩が移動しようとすると文句を言ってくる我が儘な奴だ。
する事の無い吾輩はひと眠りするか、テーブルの上に乗って遊んでやるかだが、この後は散々遊んでやる事になるのだ。
今はひと眠りして英気を養うとしよう。