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日常系にある非日常系  作者: 雅
世界を乱す力の章
8/8

猫に魔法

テスト期間の方が小説は進みますね!

ココアに見送られ家を出ると、少し行ったところで詩音と出会った。

「おはよう凌牙くん」

オレは軽く「おはよう」と返し、詩音の隣に並んだ。

なんか女の子と朝一緒に登校するって言うのは新鮮だなぁなんて思っていると、

「そういえば今日うちの学院に転校生が来るらしいよ。多分明日菜さんだと思うけど」

「それは間違いなく明日菜だろうな」

この前の試合で明日菜はオレたちの学院に転校すると言っていた。

本人に聞いたところ、

『とりあえずまずは総理の首を縦に振らせてからだから、転校はもう少し先になるかもしれないわ。それまで他の女子生徒に手を出してみなさい。どうなるかわかってるわよね?に・い・さ・ん』

今思い出しただけでも背筋が凍るようだ。

ていうか今思えば総理の首を振らせに行ってくるってすごいな。

明日菜はオレたち魔法使いの憧れであり、世界に八人しかいないゼウスと言う称号を持つ天才の中でも上位にいる日本代表のゼウスであり、オレの幼馴染だ。

明日菜とは少し距離を置いていたが、前の襲撃事件をきっかけに前と同じように仲良くなれたはず・・・・

そんな明日菜の能力は雷であり、世界中からは雷神と呼ばれてる二つ名を持っている。

あの電撃で総理を脅すのだろうか?

そんなことを考えながら歩いていると、子猫が道端に出てきた。

全身が白で覆われ、黒い虎のような模様があり、愛くるしい瞳をこちらに向け、ニャーと鳴いている。

「かわいい」

詩音はそう言うと子猫へ真っしぐら。

抱き上げると頬ずりしたりギューと抱きしめたりしている。

「ねぇ見て凌牙くん。すっごく可愛いよ」

詩音は猫に頬を寄せ、オレを見てきた。

こんなにはしゃいでる詩音を見るのは初めてだ。もしかして詩音は猫好きなのかもな。

オレも詩音に近寄り、子猫を触ろうとした時、子猫がオレに向かって飛び付いてきた。

なんだこの猫可愛いじゃねぇか。

オレが受け止めようとした時、子猫が明らかにオレを引っ掻くつもりで爪を出し、さっきまでとは違うゴルゴ◯3みたいな顔をしてオレを襲ってきた。

オレはとっさに避け、地面に着地した猫を見るとまた可愛らしい顔をしてニャーと鳴いていた。

さきほどのゴルゴはいずこえ?

「凌牙くん子猫を受け止めてあげなきゃ可哀想じゃない」

詩音がもう一度抱き上げ子猫を胸に抱いた。

「いや、今一瞬その子猫がゴルゴに見えて」

「何言ってるのよ。はいっ」

そう言うと詩音がオレに子猫を差し出してきた。

両手で猫の前足の脇を持ち、後ろ足は垂れ下がっている。

さっきのはオレの見間違いだと思ったオレはもう一度その子猫を触ろう手を伸ばしたが、

オレの手が近づくにつれ顔がゴルゴになっていく。

やっぱりこいつおかしい。

手を引っ込めると猫は愛らしい子猫になり、オレが手を伸ばすといかついゴルゴになる。

こいつはどこの殺し屋だよ。

「詩音、その子猫はもうぺっしなさい。ぺっ」

「凌牙くん何を言ってるの?こんなに可愛い子猫をぺなんてできないよ」

「いやだってそいつはゴルゴだぞ」

「そんな殺し屋みたいな顔をするわけないじゃない」

「ならば証拠を見せてやろう」

オレが手を近づけ猫の顔が変わった瞬間、詩音に「今見てみろ!」と言うと詩音が猫の顔を覗き込んだ。

覗き込んだことがわかると、猫はまた愛くるしい顔になり、にゃーと鳴いた。

すると、「かわいい〜」と言って詩音は自分の胸に抱き寄せた。

猫は詩音の胸に顔を埋められた。

その顔をよく見ると猫の顔が明らかにおっさんがニヤニヤしている顔になっている。

ただのエロ猫だな。すると猫はオレの視線に気付いたのか、これ見よがしに詩音の胸にすりすりしてオレにドヤ顔をしてくる。

「ねぇ見て、この子猫ちゃん私にすりすりしてくるよ」

詩音がさらにはしゃいでいる。猫の顔は詩音から見えないのか、明らかに猫はゲス顏をしている。

オレは猫を引き剥がそうと猫を掴もうとして、詩音の胸に手を伸ばした時、猫がいきなりオレにジャンプしてくるとオレの頭を蹴って塀に飛び移った。

それはただの猫ならオレはなんともなかったのだが、オレは猫に蹴られた時、すごい力を頭に入れられた。

もともと詩音に手を伸ばそうと体重を前にかけていたからかも知れないが、オレはそのまま詩音の方へ押し倒すように倒れた。

「きゃっ!」

「うわ!」

詩音と体が重なり気が付けばオレが詩音を道端で押し倒している図の完成だ。

それに猫に伸ばしていた右手はそのまま詩音の胸を鷲掴みしていた。

目の前には目を閉じている詩音の可愛らしい顔と桜色の綺麗な唇。それに女の子特有のいい香りがオレの鼻腔をくすぐる。

しかし、控えめな胸でも女の子は柔らかいんだな。

オレはなぜかもう一度揉みたい衝動にかられ、右手で胸を揉んでしまった。

そうすると詩音は「んっ」なんて声を出してくるから、オレはことの重大に気付いた。

オレが詩音に見入っているとなぜか背筋が凍る様な気配が背後からしていた。

「へぇ〜凌牙は朝からこんな道端で女の子を押し倒して胸を揉む習慣があったんだぁふ〜ん」

あ〜、このパターンはわかっていた。何となくはわかっていたんだ。

後ろを振り向くといつもは端正な顔立ちをして、世界中に笑顔を届けるはずの美少女が腕を組み仁王立ちをして、オレの後ろに立っていた。

「凌牙、私は前に言ったわよね?私のいない間に他の女の子に、手を出したらどうなるかって」

「はい」

「とりあえず、凌牙正座」

「え?」

「聞こえなかったの?とりあえず正座」

「一応言っておくがここは学院のすぐ近くの通りであり、たくさんの生徒が行き来する場所でも・・・」

「正座して」

「はい」

オレは明日菜の迫力に負け、しぶしぶ正座した。こういう時の明日菜はそれはもう鬼のように怖い。

それに明日菜がオレのことを兄さんではなく呼び捨てで呼ぶということは本気で怒っているということだ。

おとなしくして従った方が身のためである。

決して明日菜に屈したわけじゃないぞ!

だって男の子だもん。

「さて、凌牙はなんで朝から女の子の胸を鷲掴みしていたのかな?」

「ゴルゴみたいな顔をした猫に頭を蹴られてそのままの勢いでああなってしまいました」

ここは正直に話してあの子猫が悪いってことを証明させよう。

そうすればさすがの明日菜もオレにこれ以上殺意を向けないだろう。

「ふ〜ん、で、その猫は?」

「あそこにいるじゃないか」

オレが猫の登った塀を指差すが、そこには猫の姿はなくなっていた。

あの猫!逃げやがったな!

「凌牙はとうとう猫にまで自分の罪を擦りつけるようになったのね」

この雰囲気はやばい!明日菜の顔は髪に隠れて見えないがあれは相当よろしくない。

なにせ肩がプルプルと震え、両手の拳なんか音が聞こえそうなほど握られている。

「ほ、本当だぞ。詩音が抱くと可愛い子猫になるが、オレが触ろうとするとゴルゴになるんだ!それに蹴る力が強くて、頭を蹴られた反動で、詩音を押し倒す形になっちまったんだよ!」

「理由がどうであれ許さないから」

こうなった詩音に助けを求めるしかない唯一頼れるのはしおえもんだけだ。助けてしおえもん!

「詩音も説明してくれないか?オレが無実だってこと」

すると詩音はオレから顔をそらし「知らない」と一言だけ。

あれ?なぜかしおえもんはご立腹のようだ。

「ほらみなさい。やっぱり猫なんていなかったじゃない」

「だから本当にいたんだって!」

「でも、理由はどうであれ胸を揉んだのよね?」

「揉んじゃいました」

思わず言ってしまった。オレが気づいた時には時すでに遅し。

「凌牙のバカァァァァァァァ‼︎‼︎‼︎‼︎」

朝一番でオレの断末魔が、その通りに響き渡ったと言う。

事の経緯を見ていた詩音が倒れているオレの側により、「自業自得」と声をかけてきたが返事をすることができず、オレはしかばねのようだった。


まぁこの後の展開も予想してたよ。

今は朝のホームルーム。オレたちの担任である松坂先生が出席を確認する前に、オレたちに新しい仲間を紹介してくれるらしい。

確かにそんなこと言われたらこっちだってワクワクする。どんな子が来るのかとか、男か女かとか。実際周りにいる連中は「女の子かな?」「イケメンがいいなぁ」「美少女求む!」とか色々言っている。

多分最後に言った奴が当たりだろうよ。今から転校してくるのは美少女だ。それも世界を代表する力を持ち、天才と言われる女の子。

「じゃあ入ってきて」

担任が扉に声を掛けると、その扉が開き、転校生が入ってきた。

その姿を見て、誰もが言葉を失い。その女の子以外は時間が止まったのかと思うほど、固まっていた。

女の子が壇上に立ちオレたちの方を見た。

「じゃあ自己紹介してくれ」

「はい。今日からこの学校に通う事になった姫神明日菜です。早くみんなと仲良くなりたいと思っているので、みんなよろしくね」

言い終えるとスマイル(営業)をみんなに振りまいていた。その笑顔で何人の生徒が可愛いと思ったか、おそらく全員だろう。

転校初日にしてクラスの人気と好感度がマックスになる人間は本当にすごい。

「それじゃあ姫神さんの席は・・・」

先生が席を言う前に明日菜は壇上から降り、オレに向かって歩いてきた。

一体何をするつもりだ?

明日菜はチラッとオレを見ると、オレの隣の席の男子生徒に、

「ここの席、私に譲ってもらってもいいかな?」

そんなことを言ってスマイル(営業)を男子生徒にしたのだった。美少女からのお願いとあれば男が動かない通りはない。

「は、はい!ど、ど、ど、どうぞ!」

その生徒は前もって準備されていた本来明日菜が座る予定だった机のところへ行き、明日菜は笑顔でオレの隣の席に座るのだった。

男子生徒は「明日菜さんに話しかけられた」とか言って喜んでいる。

明日菜が転校してくることは知っていた。心の中ではもしかしたら同じクラスになるのかと思っていたら、本当に同じクラスになってしまうとは・・・

「え〜とじゃあ姫神さんの面倒はクラス委員長の・・・」

「ちょっといいですか?」

松坂先生が言葉を続けようとした時、明日菜が手を挙げた。

「なんだ?姫神」

「私は隣の席の兄さんに面倒を見てもらうので、大丈夫です」

これまた笑顔が最高だが、言葉は最悪だな。

周りからは「なんだよ凌牙かよ」「あいつと姫神さんって兄妹なのか?」「姫神さん可愛い・・・」「凌牙って鬼畜よね」色々な不平不満がオレに雨のように降り注ぐ。ならば、

「先生。オレは色々と忙しいのでここはクラス委員長にお願いしたほうがいいと思います」

オレはそう言うと、明日菜が下を向きガッカリとした雰囲気を醸し出していた。オレは一目でそれが演技だと思った。

「およよ。私は兄さんの邪魔になるのは嫌なので諦める。ごめんね」

この言葉を聞いたクラスの連中は「姫神さんを泣かせやがったなぁ」「あいつ本当に最低ね」「姫神さんかわいそう・・」「ゴミ野郎だな」などさっきまでとは違うことを言っている。

オレはどうすればいいんだよ⁉︎

引き受ければクラスから罵倒を浴びせられ、断ればクラスからゴミ扱いされる。どっちを取ってもオレにいいことなんかないな。

でも明日菜があの泣き真似を止めるとしたら、オレが引き受けた時だけだよな。

オレは、はぁ〜とため息をつき、手を挙げて、「オレが明日菜の面倒を見ますよ」と言うと明日菜の顔がニヤリと笑っていたような気がしたが、気のせいではないだろう。

これも全部あいつの計算通りなんだろうな。

「そうか。じゃあ生田目頼んだぞ」

松坂先生は気だるそうに言うと「ではHRを終了する」と言って、教室を出て行った。

すると明日菜は隣からオレの肩を指でつつきオレに話かけてきた。

「同じクラスになるなんて奇遇よね」

こいつの笑顔を信じてはいけない。これはこいつによって仕組まれた巧妙な罠だからだ。

「何が奇遇だ。どうせゼウスの職権乱用だろ」

「そんなことしないわよ。私はただ総理を脅しただけだから」

こいつはなんてことをしてるんだ!

「そ、そうか。それにしても明日菜は今までどこの学校にいたんだ?」

明日菜は日本のゼウスだが、立派な女子高校生でもある。国がそんな重要人物に最高の教育機関を用意してないわけがないと思った。

「私が学校に通う必要があると思う?」

明日菜は得意そうな顔で笑ってる。

確かにそうだな。明日菜は何をやらせても天才だったんだ。勉強ももちろん日本で上から数えるくらい頭がいいだろうな。

「それに私は小学生の頃には高校でやる勉強をしていたから」

「それもそうだな」

「だから私がここにいるのは兄さんに会うためなの」

そんなオレたちのやり取りをクラスの連中は遠目から眺めている。

さっきからチクチクとした視線がオレを捉えて離さない。

「明日菜は他の連中とは話さないのか?」

「さっきも言ったでしょ?私がここにいるのは兄さんが目的だから別にいいの」

こいつ今さらっととんでもないことをいったな。オレ目的でこの学校に入学するために国のトップを脅すなんて、普通じゃ絶対にできないことだ。

そんなことを考えていると、「姫神さん!」と明日菜を大きな声で呼ぶ奴らがいる。

この声は三バカだな。

するとすぐにオレと明日菜の間の通路にやって来て明日菜に話しかけていた。

「姫神さん!私の名は陸平と言います!以後お見知りおきを」

「ぼくは海原といいます!」

「空知と言います」

「「「三人揃って陸海空です!」」」

自衛隊かよ!

思わず突っ込みそうになったじゃないか。そんな決めポーズをどこで練習したんだか。

そんな三人を見て明日菜は、

「そのポーズダサいわよ?」

なんて無慈悲な奴なんだ。

見ろ、三人は膝を折り、床を叩いてるじゃないか。

三人はかっこいいと思ってやっているのにそれをズバリと切り捨てやがった。

「もっとかっこいいポーズができたらまた私が見てあげるわ」

なんという飴と鞭だ。さっきまでガックリとうなだれていた三人がムクリと立ち上がり、

「わかりました!姫神さんがかっこいいと言ってくれるように頑張ります!」

そう言うと三人は「うぉぉ!」と言いながら教室を出て行った。

あと少しで授業が始まるのにな。

そして三人が明日菜に話しかけたのを皮切りに、先ほどまで遠目から明日菜のことを見ていた連中も話しかけてきた。

最初はポツリポツリだったが、話しかけてくる連中は段々と増える一方であり、その数は隣のクラスの連中も混ざり、教室は人混みでいっぱいであった。

オレは一度この空間から抜け出そうと人混みを掻き分け廊下に避難しようと席を立つと、「ちょっと!どこ行くのよ!」っと後ろから声が聞こえたような気がしたが知らんぷりをして廊下へ出た。

すると階段の方から黒い髪を揺らし、見るからにスタイルが良く、短いスカートから出たスラっと伸びた脚、そして何よりも凛とした瞳が似合う綺麗な顔立ちをした女の子が取り巻きの男を引き連れ、こちらへと向かって来た。

廊下で騒いでいた連中もその姿を見ると、いきなり静まり返った。

「この騒ぎは一体何事だ?」

彼女がそう言うと周りからは「やべっ、風紀委員長がいるぞ」「オレはもう戻る!」「私たちも行こう」「なんで風紀委員長がいんだよ」と口々に言いながら教室へと戻っていった。

教室の中にいた連中も廊下の異変に気付いたのか次々と自分の教室へと戻った。

最後に廊下に残っていたのはオレだけだった。

うちの学校の風紀委員長と言えば、強い魔力を持ち、生徒の中では実力ナンバーワンとも言われている人だ。

この学校の風紀委員長のシステムは特別なもので、各学年に一人、風紀委員長をつけており、毎年テストの成績上位から選抜され、風紀委員には校内にパートナー(エルフ)を出入りさせても良い特権が与えられている。

確かオレたちの担当は女の子だったような気がする、それがこの人なのか。

今まで会ったことがないから顔を見るのは初めてかもしれない。

彼女はオレを見ると、

「君はクラスに戻らないのか」

そんな言葉をかけてきた。

この人の声はとても透き通って聞こえる。こんな声を聞くのは久しぶりなのような・・・

「オレはここのクラスだから今から戻るとこだ」

「そうか。うん?君はどこかで私に会ったことはないか?」

オレの顔をマジマジと品定めをするような目で見てくる。

綺麗な顔を近づけられるとオレも照れくさいのだが、そんなことはお構い無しに、彼女が顔を近ずけてくる。

オレが思わず顔をそむけると、彼女は何かに気付いたのように、「その横顔!」と言いながらオレから離れた。

「ん?なんだ?オレの顔に何か付いてたか?」

彼女は違うと言った感じで首を振った。

「君はもしかして、りょうくんか?」

風紀委員長がそんなことを言ってくるからオレは驚いた。

その呼び方は昔オレが小学校の頃、近所の公園で一緒に遊んでた男の子がオレに付けてくれたアダ名だ。

「なんでその呼び方・・・」

「やっぱりりょうくんか!私だ!天ヶ瀬薫あまかせかおるだ!」

なん・・・だと。この目の前にいる凛とした雰囲気を出しているクールビューティー美少女が薫だと?

「お前が薫?あのオレと一緒に公園で遊んでた男の子が今は女になったと?」

彼女がクスクスと笑うと、

「やっぱり私のことを男の子だと勘違いしていたんだな。確かに昔の私は少し女の子っぽさがなかったのかもしれない」

彼女は少し顔を赤くし、モジモジとした様子でオレを見ていた。

「でも今はどうだろうか。少しは可愛くなれたかな?」

吸い込まれそうなほど大きい瞳でオレの瞳を覗き込んでくる。

オレは恥ずかしくなり、顔を赤くしながら「コホン」と咳払いをし、薫と思わしき美少女から顔をそむけた。

「ふふふ。やっぱり昔と変わらないな。恥ずかしくなったらすぐに顔をそむける」

「オレは普通の反応をしたまでだ」

美少女に見つめられたら顔をそむけて当たり前だろ。

自分でも頬が赤くなるのを感じ、照れ隠しのために頬をかいた。

これじゃあまともに話せそうにないから、話題を変えないとな。

「そう言えば薫はパートナーは連れてないのか?」

「私のパートナーはりょうくんだけだぞ?」

「いや、そういうことじゃなくて、パートナーのエルフは一緒じゃないのかってことだ」

「ああ。なんだ、勘違いさせるな。私のパートナーはここにいるぞ」

「一体どこに・・・」

オレが薫を見ると、薫の制服のポケットの中で何かがモゾモゾと動いている。

そいつは顔を出すと「にゃー」と鳴いてオレを見つめた。

その猫を見た途端、オレは怒りがこみ上げ、プルプルと指を震わせながら猫を指差した。

「お前は朝のゴルゴ‼︎」

「どうしてりょうくんがこの子を知っているんだ?」

薫は少し驚いた感じでオレに訪ねてきたので、朝会ったことを説明した。

「なるほど。それはすまないことをした」

「別に薫が謝ることじゃないだろ?謝るのはこいつだ」

薫が頭を下げてきたので、オレはこの猫を指差し、こいつが悪いと主張するも、『ゴルゴの責任は私の責任でもある』と言うのでオレはとりあえずこの猫を許することにした。

「それにしてもまさかゴルゴの名前まで知っているなんて」

「いや、ただこの猫がオレを引っかこうとした時ゴルゴ見たいな顔をしてたからな。たまたま言っただけだ」

「ゴルゴは戦う時にしかその顔を見せないんだ。そういう意味ではある意味レアかも知れないな」

オレがそうなのかと答え、ゴルゴを触ろうとすると、やっぱり顔がゴルゴになる。

「全然レアっぽくないぞ。むしろコモンじゃないか?」

「そんなことはない。もしかしたら警戒しているのかも知れないから、顔を変えても触ってみたらどうだろうか」

薫の提案なので、オレはゴルゴを触ろうとして人差し指をゴルゴに出した。

するとゴルゴは顔を渋くしたと思ったら、オレの指をめがけて唾を吐いた。

「てめぇ!何しやがる!」

オレが猫を指差し叫ぶと、

「けっ!男が俺に触れるんじゃねぇよ」

こ、こいつ・・・喋るぞ!

「だいたいお嬢もお嬢だぜ!こんな男に俺を紹介するなんてよ」

こんな男で悪かったな。

だいたい猫が流暢りゅうちょうに言葉を話すとすごく気持ち悪い。

「おいお前!今俺のこと流暢に話すから気持ち悪いとか思っただろ!」

バレてる・・・・

「まぁいい。それより、男が俺に触るんじゃねぇ。引っ掻くだけじゃすまないぜ」

何言ってんだこの猫。ゴルゴ見たいな顔してるくせに喋り出すとうるさいな。一回猫掴みして、外に放り投てやろうか。

などと考えていると、

「おいおい!俺を一回猫掴みして外に放り投げようとか思ってるんじゃないだろうな?」

やっぱりバレてる。

そんなオレとゴルゴのやりとりを見て、薫は少し笑っている。

「りょうくんとゴルゴは仲が良いんだな」

「冗談が過ぎるぜお嬢、こんなさえ無さそうな奴とオレが仲良くなるわけないだろ」

「オレもこんな宅急便と同じしゃべる猫と仲良くなったら、プロペラ自転車作らないといけなくなるじゃないか」

「誰がジジだって?ガキ?」

「誰がガキだって?ジジ?」

「オレはゴルゴだ」

「オレは凌牙だ」

オレと猫、改め、オレとゴルゴは火花が出そうなほど睨み合いをしている。

そんな時、教室から明日菜が出てくると、オレと目が合い、オレたちの方へやって来た。

「兄さん何やって・・・」

話しかけようとした途中でオレの隣にいる薫に気づくと、オレたちの方へ歩んでいた足が止まり、明日菜は途端笑顔になった。

「兄さん・・・そちらの方は?」

そちらの方?もしかして薫のことか。

「薫って言うんだ」

「初めまして、ゼウスの姫神明日菜さん。私はりょうくんの幼馴染の天ヶ瀬薫と言います」

途端周りの、いや、明日菜の周りの温度がすごい勢いで下がっていったような気がした。

「へ、ヘぇ〜兄さんの幼馴染ですかぁ〜ふ〜ん」

あれ?もしかしてオレ、睨まれてる?

そして薫も何が起こったのか、明日菜に対抗意識を燃やしているような気がする。

「私も兄さんの幼馴染なの。よろしくね薫さん。ちなみに私と兄さんには切っても切れない縁(おもに赤い糸)があるからごめんなさいね」

明日菜はなぜかオレの腕を取り、自分の腕を絡ませて来た。

すると肘のあたりに程よい柔らかさの感触があり、オレは自分の頬が熱くなるのを感じた。

そして薫も明日菜とは反対側の腕を自分の腕に絡ませて来た。

「私もりょうくんの幼馴染だ。ゼウスの人と言えどもこれは譲れない。それに私の方が、りょうくんとの縁は強いと思う」

薫も強気だな。明日菜は泣く子も黙るゼウスの雷使いだ。それを前しても尻込みしないなんて、さすが風紀委員長だと素直に思った。

「兄さんとの縁なら私の方が強いわよ?何しろ兄さんにキスされたこともあるんだから」

明日菜は少し自信ありげに薫を見ているので、オレは薫に誤解されないために訂正しよう思い、真実を伝えることにした。

だって薫がオレを見る目が捨てられた子犬みたいになっているんだ。

「あれ明日菜の魔力が無くなってたから魔力供給をしたんだ。だからオレはなんとも思ってないから」

なんとも思ってないは嘘だけど、こればかりは言わざるを得なかった。

すると薫は安心したようにほっとしているが、明日菜はオレのことをキッと睨んでいる。

おそらく余計なことを言うなと言いたいんだろうな。

すると薫はオレの方に振り返り、オレを見つめて話した。

「りょうくんは昔のことを覚えているか?」

「昔のことはなんとなく覚えてるぞ」

オレが答えると薫は瞳を輝かせ、オレに詰め寄ると、二つの膨らみがプルンと揺れる。

視界の端では明日菜が半眼で、「兄さんのおっぱい星人」とか言っている。

しゃうがないだろ、これが男のさがだ。

「では覚えているか?あの時の約束を」

約束?

オレは少し考えてみたが、何も思い出せない。

約束なんてしたか?

「その様子では忘れているようだな。まぁ無理もない。私たちはまだ子どもだったからな。でも今は違うぞ。私は・・・」

薫が何か言おうとしたところで、授業開始のチャイムが鳴ると、薫は少し残念そうな顔をしながら、

「授業が始まるから私は教室に戻るとしよう。りょうくん、また放課後にでも時間はないか?」

「まぁヒマと言えばヒマだな」

「では放課後はお茶をしながらゆっくりと話でもしよう。りょうくんのパートナーも呼んでもらっても全然大丈夫だから」

「まぁココアなら喜ぶかもな」

「じゃあ決まりだな!ではまた放課後に校門前で会おう」

そう言って薫は去って行った。

オレも教室に戻ろうとした時、明日菜が頬を吊り上げながら笑って仁王立ちをしている。

「なにやってんだ?」

「別に〜ただ、蚊帳の外にされて私が知らなかった兄さんの幼馴染が出てきて、それでいてイチャイチャとデートの約束を目の前でされたら誰だってイラつくものでしょ?」

やばい・・・完全においかりだ。

「デートじゃないって、ココアも呼んでお茶するだけだ」

「そうなんだ〜兄さんは可愛い幼馴染を放っておいて、幼馴染二号と遊ぶんだぁ。ふーん」

幼馴染二号ってなんだよ。

そんな何夜叉なにやしゃに出てくるお尻が可愛い退治屋みたいに怒らなくてもいいじゃないか。

「放課後は明日菜は色々と忙しいだろ?」

ゼウスである明日菜は世界中を飛び回っているので、学校に来ることはないと思っていたが、来ることができたのはたまたまで、すぐにでも日本を旅立つかも知れない。

「放課後じゃなくて今から忙しくなるの。これから本島に戻らなきゃいけないから授業には出れないし、だから放課後も本当はダメなんだけど、あんな泥棒猫どろぼうねこに兄さんを取られないためにも今日は兄さんに一日中張り付いてた方がいいかもしれないわね」

「泥棒猫って、薫はただオレのことが懐かしいんだろ」

きっと積もる話もあるはずだ。

「そうかも知れないけど・・私だって兄さんとたくさんおしゃべりしたいもん・・・」

明日菜が少し悲しそうに言うのでオレは少し戸惑ってしまった。

そうだよな。明日菜にはずっと寂しい思いさせてたもんな。

オレは安心させるように少し大きめの声で言って、明日菜の頭を撫でた。

「大丈夫だ。これからいくらでも話してやるよ」

「本当?」

「ああ。本当だ」

「じゃあ今度仕事がひと段落したら、私とデートして」

デート⁉︎ま、まぁ今まで明日菜を悲しませてたからな、これくらいは大目に見ないと。

「わかった。じゃあ明日菜が戻ってきたらデートしよう」

オレが返すと、明日菜はその場でジャンプして喜ぶと、オレに抱きついてきた。

「約束だからね。兄さん」

「ああ。約束だ」

こうやって素直に喜ばれると、オレも嬉しくてついつい頬が緩んでしまう。

「よしっ!兄さん充電完了!じゃあ私は仕事に行ってくるから。帰ってきたら約束守ってね」

「わかってるって。早く行かないと遅れちまうぞ?」

「うん。じゃあまたね兄さん」

「おう!頑張ってこいよ」

オレがそう言うと、明日菜は笑顔で階段の方へと消えていった。

そうしてオレも教室に入ろうとした時、後ろから走ってくる足音が聞こえてきた。

振り向くと三バカが息を切らせながら走ってくる。

この絵面なんだか怖いな。

すると三バカはオレの前で煙を上げながら停止し、陸平が肩を掴んできた。

「姫神さんは⁉︎」

「明日菜ならもう仕事にいったぞ?」

「そ、そんな・・・」

三人は膝を折り、悔し涙を流していた。

その三人を見て、オレは心の中で願ってやるのだった。

明日菜、なるべく早く帰ってこいと。



放課後になり早速校門へ向かうと、校門に背中を預けながら空を見ている薫を見つけた。

オレは少し足取りを早くし、薫のところへ行った。

「じゃあ行くか」

「うん。ココアさんも来てくれるのか?」

「さっき電話して呼んだ。多分もう向かってるはずだ」

「そうか。なら良かった。では私たちもさっさく行こう」

オレと薫は並んで歩き、前にココアと紅音とモカの三人で行った喫茶店まで向かった。

喫茶店までの行く途中で、オレと薫は昔の話をたくさんし、二人で思い出を振り返っていた。

そんな話をしているうちに、オレたちは喫茶店につき、オレたちの少し後にココアも合流した。

ココアはオレの隣に座り、薫はオレの対面に座った。

オレとゴルゴはアイスコーヒーを頼み、ココアはイチゴパフェ、薫は抹茶パフェを注文した。

猫のくせにコーヒー飲むのかよとか思っていると、「今猫のくせにコーヒー飲むのかよって思わなかったか?」と絡まれたことは言うまでもない。

それよりも、ココアは店に入った時から不思議そうに薫を見ていたのでオレはココアに薫の紹介することにした。

「と言うわけで、薫はオレの幼馴染なんだ」

「なるほど・・・よろしくお願いします」

ココアが礼儀正しく薫に頭を下げ挨拶をしたので、一応こいつも紹介するか。

「そしてこっちがバカ猫だ」

「バカ猫じゃねぇゴルゴだ」

「ゴルゴちゃんって言うんですね」

「ちゃんはやめろ。せめてMr.ゴルゴと言え」

「ゴルゴちゃんの方が絶対可愛いです」

「だからちゃんはやめろって言ってるだろ小娘!」

オレは二人が楽しそうに話しているのを見て少し安心した。子どもと猫が微笑ましく見えてしまう。

あの二人、実は相性いいのかもな。

「おい小僧!このガキをなんとかしろ!」

「ガキじゃないです。ココアって言うんですよ。あと小僧ではなく凌牙さんです」

「何でもいいから離せ!」

ココアがゴルゴに頬づりをし、ゴルゴは頬づりさせまいと、肉球でココアの顔をプニプニと押している。

やっぱりこの二人いや、一人と一匹は仲が良いな。

そう考えていると、薫が話を切り出した。

「さて、じゃあ私たちは私たちで話をするか」

「それもそうだな」

オレと薫はこれでも小学校低学年まで一緒に遊んでたんだ。

色々懐かしい話ができるんじゃないかと少し楽しみにしていた。

「それにしも驚いたよ。りょうくんが魔法学院に入学していたなんて、知っていればもっと早くに話ができたのに」

「そうだな。でもオレだって前はある意味では有名になったんだから薫の方が知る機会があったような気がするぞ?」

自分で言っていても前にオレは学院の掲示板に名前が載り、あのマジバトカーニバルにも出場したんだ。

それを知らない生徒はあまりいないはず。

「私はちょうどその時期、アメリカへいたんだ。そこでカーニバルが襲撃されたと聞き、少し驚いたが、最後に写った光の鳥が闘技場を壊す場面の方が驚いた」

そう言えば、世間では光の鳥が闘技場を、壊したと報道されたんだよなぁ。

もし、その鳥を出したのがオレだと世間に知られたら、オレは捕まるのかな。

ここは気付かれる前に話題を変えなくては!

「薫はアメリカへ何しに行ってたんだ?」

「ん?私は世界風紀委員会の会議に出席していたんだ」

「なんだそれ?」

「簡単に言えば、総会みたいなものだよ」

「そうかいそうかい」

「りょうくんそれは笑えないぞ?」

「まぁ気にするな。それにしても、その世界ナンチャラ委員会は何をするだ?」

「世界風紀委員会。簡単に言えば、魔法に関する犯罪や事故を防ぎ、魔法が悪用されないように規律を守る委員会なんだ」

「そんな委員会があったんだな」

「まぁ集まる機会はあまりないんだけど、今回はなぜか取集されたんだよ」

「そうなのか。大変だったな」

「ううん。本当に大変だったのはりょうくんの方じゃないか?あの襲撃事件では大活躍だったって聞いたよ」

「オレは何もしてない。頑張ったのはココアだからな」

オレはココアを見て改めてこの笑顔を守れたことを良かったと思っている。

それにしても、そろそろゴルゴをはなしてあげないとまずそうだ。口から泡が出てるぞ。

「そう言えば、りょうくんはどのような経緯でココアさんに会ったんだ?」

「それは、まぁなんと言うかあれだ。運命的なやつだ」

「誤魔化さないで答えてほしい」

薫が少しジト目でオレを見てくるが、こればかりは言う気にはなれない。

オレとココアの出会いは他のエルフとは少し違う。運命で繋がっている人間とエルフは時が経てばいずれは出会う運命にある。

でも、オレとココアは運命ではない。それはもう必然だったからだ。

薫は話してくれるまで目を離さないと言う瞳をしているが、今はそのことを話す気はない。

「オレとココアは・・・」

オレが断ろうとした時、外から大勢の悲鳴が上がった。

オレと薫は窓から外を見ると、一組の魔法使いが噴水広場で騒動を起こしているらしい。

それを見た薫は席を立ち、

「仕事だぞ、ゴルゴ」

「わかってらぁ。その前にこのガキを剥がしてくれ。よっと!」

ココアも噴水広場を見ていたためか、ゴルゴはココアの手から抜け出せたようだ。

「りょうくんは危ないからここで待っていてくれ。すぐに終わらせてくるから」

「終わらせるって、一体どうやって?魔法は許可がない限り使用はできないんだぞ?」

それを破った場合、それ相応の罰があったはずだ。

「りょうくん。私を誰だと思っているんだ。私は風紀委員だぞ?」

薫は左腕に風紀委員と書いてある腕章を付けながら言った。

「私の仕事は学院の平和と、魔法特区で起きた問題を解決すること。それが風紀委員会としての役目だ。すぐ終わるからここで待っていてくれ」

ゴルゴが薫の肩に乗ると、薫は喫茶店を出て向かい側の噴水広場へと走って行った。

「あいつ、大丈夫かな?」

ただオレとココアは薫を見送ったのだった。



こんな街中で騒ぎを起こす人がいるとは・・・

「ゴルゴ、まずは状況を確認してからエルフを拘束する」

「了解だ。それにしてもあの凌牙とかいう小僧に、お前はご執心のようだな」

「な⁉︎い、今は関係ないじゃないか」

自分の頬が熱くなるのを感じる。

私はきっとりょうくんに会えて嬉しいんだ。たまに今はどうしてるのかなって考えるときもあったけど、久しぶりに出会ったりょうくんはとてもかっこいい。

「そこまで動揺するお嬢も珍しいな」

ゴルゴの言葉で仕事前に乱されて、自分の心をしっかりと保てないところだった。

「だいたいゴルゴが余計なことを言うからだぞ」

「悪かったお嬢。じゃあいつらを片付けて、早くあの小僧のところへ戻るとするか」

「そうしよう。でも、まずは状況確認が先だ」

私は女子生徒の腕を掴んでいる男に向かって話しかけた。

「私は風紀委員会一学年会長の天ヶ瀬薫と言うものだ。一体何をしている」

すると男の方は動揺したように、「なんでもない」と言う。

「ではその女子生徒の手を離してもらおうか」

私がさらに近づくと男は女子生徒を放り投げ、逃げるようにエルフと公園の出口に走って行った。

だが私もそれを見逃すことはできない。

「逃がすな。ゴルゴ」

「当たり前だ」

《ライグル》

私が呪文を唱えると、ゴルゴは白い虎になる。これが私とゴルゴの形態変化魔法。

ゴルゴは出口に向かう男を背中から押し倒そうとするが、彼のエルフが妨害してきた。

「そこをどけ」

「悪いがどけねぇな」

その言葉でゴルゴは少し距離を置き、いつでも二人を倒せる間合いに入った。

「お前らなんかに捕まってたまるかよ!」

《アムラ》

男が呪文を唱えるとエルフの少年は銃を持ち、それをゴルゴへと撃ってきたのだった。

「これであなたたちは魔法の無許可使用と、住民を襲ったことの二つの罪が課せられます」

「それがどうしたぁ!」

「あなたのようなチンピラを野放しにしているほど風紀委員は落ちぶれていません。ゴルゴ!」

「おうよ!」

ゴルゴは掛け声とともにエルフへと走った。

少年も銃を撃つが、ゴルゴが早すぎて当たらないようだ。

ゴルゴがエルフの背後を取り、そのエルフを前足で噴水の中まで飛ばした。

「なんなんだこいつら・・・起きろ!オレたちの最大魔法だ!」

《アムラ・スグル》

そう叫ぶと、ハンドガンくらいの銃が、形を変え大きくなり、バスターライフルのような形になるとエルフが飛び、回り出した。

「戻れゴルゴ!」

おそらくあれは噴水広場全体を攻撃する魔法だ。

もしあれが女子生徒に当たったら・・・と思い、後ろを振り向くが女子生徒がいない。

「どこへいったんだ?」

あたりを見回し、出口に走っている女子生徒の背中を見つけた。

「ゴルゴ!その女子生徒を守ってくれ!」

「なに⁉︎お嬢は!」

「私のことはいいから早く!」

それを聞いてくれたのか、ゴルゴは女子生徒の襟首を口で掴むと自分の背中に乗せた。

それと同時にエルフの銃から魔力の塊が雨のように打たれる。

私はとっさに頭を庇うようにしたが、一発が

肩に当たってしまったが、すぐにゴルゴが私のとこに来てくれたので、これ以上は攻撃を受けなくて済みそうだ。

私もゴルゴの背中に乗り、ゴルゴが相手の魔力が切れるまで術を避け続けた。

相手は諦めたのか銃の威力と、数が弱まり、簡単にエルフに近づくことができた。

この女子生徒がいなければもっと早めに対処できていたと思うが、助かったので良しとするか。

「ゴルゴ!エルフを押さえつけて!」

この声でゴルゴはエルフの両肩を二本の前足で押さえつけ、エルフの前で、口を大きく開けて吠えると、相手のエルフは涙を流しながら気絶してしまった。

パートナーの男は尻餅をつくが、出口に走って背を向けた。

するとその男の前にりょうくんとココアさんが見えたので、私はとっさに叫んだ。

「危ないりょうくん!」

その叫びとともに出口にいたはずの男が私とゴルゴのところまで飛んできた。

白目をむいて気絶しているので、出口を見ると、ココアさんが両手を前に突き出している姿が見えた。

すぐにココアさんがやったのだと思い、思わず笑ってしまった。

そしてこの場で一番驚いている顔をしているのは、りょうくんかも知れない。


「それにしてもココアがあんなバカ力だったとは・・・人は見かけによらないな」

「私も驚きました。前に会長さんから私と凌牙さんの魔力を繋いでもらった時から、体がものすごく軽くなったような気がするんです。それだけだと思っていたら、まさかこんなに力が出るなんて思いませんでした」

でも、前々から気づいてはいた。

前まで重い買い物袋を持てなかったココアが今は簡単に持ち上げることができている。

こんな小さな変化が今になってわかるとは思ってもいなかったけどな。

今は魔法特区の魔法警察たちに事情聴取をされ終わり、帰路についている途中だ。

薫は風紀委員の仕事を魔法警察とやるそうだから今日は別れた。

帰り際、「今度はよろしく頼む」っと変なことを言われたが、理由を聞く前に薫は行ってしまった。

「そう言えば、ココアは薫のことどう思った?」

「どう思ったと言いますと?」

ココアはオレを見上げながら首を傾げた。

「簡単に言えば、薫とゴルゴの強さかな。あの二人は強い。風紀委員という事もあるが、さすがにそれだけの力がある。おそらく今後のマジバトで戦う機会はもちろんあると思う。その時に、オレたちは薫に勝てると思うか?」

ココアは少し悩んだ後、笑顔で答えてくれた。

「私は大丈夫だと思います。だって凌牙さんがいるんですから、私たちは無敵です」

心の底から信じてくれている瞳、ココアがオレを見る目に、何の疑いもないという目をしていた。

なんだか照れくさくて顔をそむけそうになる。

「そうか・・・そうだよな。オレにもココアがいるから安心だな」

オレも笑顔でココアに言うと、ココアは嬉しそうに笑い、「はいっ!」と返事をしてくれた。

「でも、あの怪力でオレを殴るのだけはやめてくれよ」

あんなの受けたらオレの身が持たない。

するとココアはオレより少し先に進み、こちらをむいて仁王立ちをしてきた。

「何かあってもこれで凌牙さんを守ります」

えっへんと言わんばかりに、自信満々に言うココアが面白く、思わず吹き出してしまった。

「あ‼︎笑いました‼︎」

ココアはオレが笑ったことが悔しいのか、涙目でオレを見上げて、頬をふらませている。

「悪い、自信満々に言うココアが可笑しくてつい笑っちまった」

オレはココアの目線と同じ高さまでしゃがみ、ココアの頭を撫でた。

するとそれが気持ち良いのか、ココアの顔が笑顔になっていく。

「これからもよろしくな。ココア」

照れながら笑うココアの顔は本当に可愛く、思わず抱きしてあげたいと思うほどだった。

「こんな道のど真ん中で何してるの?」

声の方を振り向くと、そこにはマーハがいた。

「マーハこそなんでこんなところにいるんだ?」

「私は学院長に・・・」

「あ!マーハちゃんです!」

「え?あっ!ちょっと!離れてよ。恥ずかしい」

マーハの姿を見ると、ココアはすぐに抱きついた。

マーハは少し恥ずかしがっているが、本気で嫌がっている訳ではないので良しとしよう。

「それにしても本当にどうしたんだ?マーハは雪乃さんのところで働いてるんじゃなかったか?」

「そうなんだけど、今日は学院長に伝言を頼まれて来たの」

「伝言?だったら電話とかでも良かったんじゃないか?」

「別にいいじゃない。ココアにも会いたかったし、それに・・・凌牙と直接色々な話をしたかったし」

なるほど。これで自分の中で確信したことがいくつかできたな。オレは子どもに好かれやすいのかもしれない。

「まぁとりあえずなんだ。オレの家に寄ってけよ。久しぶりにココアの作る夕飯でも食べて行ってくれ」

「そうですよ!一緒にお風呂入ったりしましょう!」

マーハは困った顔する事なく、笑顔で頷いてくれた。

家に着くと、早速ココアが料理に取り掛かり、オレとマーハはソファーに座り、雪乃さんの伝言を聞いていた。

「なるほどな。つまりココアの体に異変がないか報告して欲しいってことだな」

オレは学院長の伝言を聞き、少し安心した。

「うん。学院長が言うには、ココアが本来持っていた力が出てくるだけだから心配はいらないって言ってたけど」

ココアの本来の力か・・・

「最近ココアが変わったと言えば、物凄い力が付いたってことぐらいかな」

「物凄い力?」

「肌で感じればわかる」

オレはそう言うとココアをキッチンから呼び、マーハの対面に座わってもらった。

「これから二人に腕相撲をやってもらう」

二人は少し戸惑った様子だが、マーハが口を開いた。

「こう言っちゃなんだけど、私とココアじゃ勝負にならない。鍛え方が違うもの」

「まぁそれは勝ってからいくらでも言っていいから」

マーハは渋々といった感じでココアの手を握った。

ココアはまだ状況が飲み込めないようだったので、とりあえず腕相撲で勝ってくれとお願いした。

「じゃあ始めるぞ。レディファイト!」

オレが言うと同時にマーハの手はテーブルに叩きつけられた。

「え?」

倒された本人は信じられないといった顔をしてココアを見た後、オレを見てきた。

「これでわかっただろ?ココアの力」

オレがそう言うと、負けたのが悔しいのか、もう一度と言ってきた。

もう少しで夕飯ができるからラストと言うと、今度はマーハも本気のようで、ココアを握る手に力が入っている。

オレがもう一度「レディファイト」と掛け声と同時にまた勝負が決まった。

勝者はココア。圧倒的な力の差を見せつけた。

負けたマーハはがっくりとうなだれている。

「え〜と、マーハ?」

オレが声を掛けると、キッと睨みながらオレに詰め寄った。

「なんで?ココアに何があったの?なんであんなに怪力になったの!」

「おい落ち着け。雪乃さんが言ったように、これがココア本来の力なんだろ」

「こんな力、チートとしか言えない」

「まぁそうだろうな」

「力の変化が現れたら学院長室に来てとも言ってたから、明日学院長室に行って」

「わかった。それより大丈夫か?」

伝言を伝えてくれのはありがたいが、こうも目に涙を溜めながら言われるといたたまれない気持ちになる。

「別に泣いてないし」

「いや誰もそんなこと言ってないだろ」

「 別に悔しくないし」

「大丈夫ですよ。マーハちゃんはとっても強かったです」

オレとマーハのやり取りを見て何を思ったのか、ココアは笑顔でマーハをフォローしたが、圧倒的に勝った本人が言う台詞では無いので、火に油を注いでしまった。

「くぅ〜。ご飯を食べたら勝負よココア!」

「はい!」

悔しがりながら再戦を申し込むマーハと、笑顔で答えるココア。

本当にこの二人は仲が良いんだな。

その後、ココアの作った美味しい夕飯を食べ、オレが夕飯の片ずけをしている間、ココアとマーハの腕相撲対決があったらしいが、結果は言うまでもなく、ココアの圧勝だったそうだ。

マーハは色々と言い訳を言っていたが、ココアに笑顔で頷かれてばかりいて、途中でむなしくなったのか、ため息をついた。

そしてマーハは悔しい顔を浮かべながらココアに手を引かれ風呂場へ向かったが、その途中でココアがなぜかマーハの頭を撫でていたが、マーハが顔を真っ赤にしながら、すぐにココアを風呂場へと連れて行った。

風呂から上がったあと二人はすぐに布団に入ると、疲れてしまったのかすぐに眠ってしまった。

オレは二人の寝顔を見てから瞼を閉じると、自分も意外と疲れていたのか、すぅっと、眠りに落ちていった。

「おやすみ。ココア、マーハ」

どうも!

雅です!

今回は新キャラも登場し、ますます盛り上げていけるか心配になってはいますが、これから二人にどんなことが待ち受けているのしょう!

ぜひ楽しみにしていてください!

ここまで読んでくださった皆様には心のそこから感謝しています。

ありがとうございます。

これからも書いていくので、温かい目で見守ってください。

応援よろしくお願いします。

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