身から出た魔法
次回からはキャラクターの個人設定を前書き書きたいと思います!
みなさん!
楽しみして下さい!
これは夢だ。小さいオレと明日菜が神社で追いかけっこをしている。
「明日菜ちゃん早く早く!」
「待ってよ凌牙くん!きゃっ‼︎」
小さいオレが手招きしていると、少し後ろの方で明日菜が転んだ。
「明日菜ちゃん大丈夫?」
明日菜が転ぶとオレがすぐさま駆けつけ、明日菜の心配をしていた。
昔の明日菜は確かに天才肌だったが、少しドジなところがあった。今もそこは健在か分からないが、オレの知っている明日菜はそうだった。
「うん。凌牙くんは優しいね。」
彼女がにっこり微笑むと、オレも安心した様に笑った。彼女の笑顔がオレの宝物だった。彼女との時間がかけがえのないものだった。
「当たり前だよ。明日菜ちゃんはボクの友達だもん。だからボクと明日菜ちゃんは大きくなってもずっと、仲良しでいようね。」
そう言うと小さいオレは明日菜に小指を立てて、指切りをした。
「ずっと一緒にいてね。約束だよ?」
「うん!」
「じゃあ凌牙くんが一緒にいてくれるために、私のお兄さんになってよ!」
「お兄さん?良いよ!今日からボクは明日菜のお兄さんだ」
「うん!これからもよろしくね。・・・・・・・・・・・さん」
明日菜の言葉の最後が聞こえないまま、また神社の奥に走って行った。
あそこでオレが返事をしていなければ、明日菜は傷ついたりしなかったのか。
いや、恐らくオレにそんなことはできなかった。
すると周りが段々と暗くなっていた。
(起きるのかな?)
そこでオレの夢は終わった。
時計を見ると朝の6時半。
オレは昨日、明日菜に会ったことを考えてしまっていた。
「まさかあんなところで会うとはなぁ。だからあんな昔の夢を見たのかな。」
頭をかきならがそう呟いていた。
もう二度と明日菜と会うことがないと思っていた。
明日菜が特別ゲストとして、この魔法特区にいるのは、オレも当然知っていた。その場所が魔法闘技場だってことも知っていた。
だったらあの場所に明日菜と会うかもしれない可能性があった。
これはオレの失敗。いや、失態だった。
「嘘つきかぁ」
そりゃそうだよな。明日菜はどんな時もオレの側にいてくれたのに、オレは明日菜の前からいなくなったんだからな。
でも、昨日の明日菜の冷たい瞳は予想以上に堪えた。
「次こそは会わないように気をつけないとな」
そう決心をし、ココアに行ってきますを言ってから学校に行った。
しかし、今朝は何かが変だった。
家を出てからずっと、誰かに見られている様な気がするのだ。
気がすると言うか明らかに後ろにいると言うか。オレが後ろを振り向くと、誰かが電柱の陰に隠れた。
オレがまた歩き出すと、後ろの奴も一緒に付いてくる。
そしてオレはこの茶番を終わらせるために道の角へ曲がった。
そこでオレを追ってくるヤツに問い詰めようと思ったのだ。
オレを尾行してたヤツが角を曲がるとオレは、わっ!っと声を上げ、それに驚いたヤツは、きゃっ!と可愛い声を上げながら、尻餅をついた。
まぁなんとなくは分かっていた。昨日の今日だから、もしかしたらあいつなんじゃないかって思った。
でも、ここまで予想が当たると少し拍子抜けと言うか、なんと言うか。
「あっ」
あまつさえ少し間抜けな声を出し、オロオロしていた。
何と言っても見た目が怪しすぎる。
茶色のロングコートに、サングラスにマスク。帽子まで被っている。
いつの時代だよ。
そんな突っ込みを心の中でしていた。
「こんな所で会うなんて、ぐ、偶然ね」
わざと咳き込んでからそんな嘘を言ってきた。
でも、そんな格好をして、オレを尾行し、最後にはオロオロしてたにもかかわらず、偶然を装うその精神力はあっぱれだ。
「本当にたまたまだから!偶然ここを通りかかったら、凌牙のいたらずにビックリしただけなんだから!私の情報網で凌牙の住んでいる寮を探して、場所を見つけたのは良いものの、恥ずかしくてずっと夜も見張って、朝は凌牙にバレないように尾行して、いつ話しかけようかタイミングを見てたり、たくましなったなぁなんてことは絶対に思ってないから!」
顔を真っ赤にして、腕を上下にブンブンと振りながら叫んでいた。
なるほど。
つまり明日菜は昨日オレの前から走り去った後、国の情報網を使ってオレの住んでいる場所を調べ、探し当てたは良いもののオレの部屋に入ることができず、夜もオレのことを見張っていて、オレが部屋から出てきたのが登校時間だったから、怪しまれないように変装したけど、話しかける前にオレにバレてしまい、今にいたるらしい。
「くっ。完璧な変装だったのに、どうしてバレたの」
小声でそんなことを言っているが、あんな怪しい格好を完璧と言い張るところは昔の明日菜と変わらないとこかも知れないな。
「何笑ってるのよ?」
「いや。昔とあまり変わらないなぁって思ってな。それに元気そうで何よりだ」
「ふ、ふん!凌牙も元気そうね。それで、ココアちゃんも元気にしてるの?」
「あぁ。ココアも毎日元気だよ」
「そう。なら良かったわ。また偶然会うかもしれないけど、その時は絶対に話しかけないでよね!良い?絶対よ!ふんっ」
そんなことを言うと、明日菜は来た道を戻っていった。
(最後のは日本伝統のフリだよな。)でも、ココアを心配する明日菜は、とても優しい顔をしていた。
そんなわけで、オレの決心はたったの10分で砕けたのだった。
学校に着くと、学校の掲示板に生徒が群がっていた。
「何かあったのかな?」
そんな好奇心で、オレも野次馬のところへ行き、掲示板を見た。
そこには『マジバト祭を舞台とし、学院切手の最弱コンビ(R&C)があの高野家財閥の御曹司と直接対決‼︎もし最弱コンビが負けたら退学だ!勝てばそのまま在学する!少年少女の未来を決める大勝負‼︎絶対に見逃すな!』と書いてあった。
多分オレはこの野次馬の中で一番間抜けな顔をしていたかも知れない。でも、これを書いたやつの目星は付いている。
「どうだ凌牙!オレたちが書いた新聞わ!」
「やっぱりお前らか」
背後から声をかけられて振り向くとそこにはオレをよく煽ってくる三人トリオがドヤ顔してきた。
「これで凌牙はバトルから逃げることはできないはずだ!」
「何と言ってもこれだけだけの人が見ているのですからね!」
「作った甲斐があった」
「そんなことより、オレの退学の話はどこで聞いたんだ?」
一番の謎はこれだ。
あの話は学院長とオレしか知らないはずだ、なのにこいつらが知ってるとなるとあの話を誰かに聞かれていたとしか思えない。
「あ〜それは学院長に聞いたんだ」
「は?」
その時のオレはどんなに間抜けな顔をしていただろう。
「学院長が昨日、放課後オレたちに言ってきたんだ」
『次のマジバト祭で凌牙くんと高野くんを戦わせて、凌牙くんが負けたら退学になるから。この情報をどう使うかはあなた達しだいよ』とのことらしい。
「学院長ぉぉぉぉぉぉ!」
オレの叫びは周囲から見られ、そこにいずらくなってしまったので、おとなしく教室に戻ることにした。
そして昨日に続いて昼休みに学院長室に向かった。
オレがドアをノックして学院長からの返事が来ると、すぐにドアを開けた。
「きゃあー!」
なぜか学院長が着替えてる最中だった。
「なんで着替え中なんですか!ノックした時にはどうぞって言いましたよね‼︎」
「いや〜やっぱりわたし的にはこの後キミが襲ってくると思ってるんだけど、どうかな?」
「はいはい。襲いませんから服を着て下さい」
オレが言うと学院長は渋々といった雰囲気で服を着直すと、学院長椅子に座わった。
「それで今日は何のようなの?」
少し気だるそうにして雪乃さんは聞いた。
「今朝オレに関する記事が掲示板に載っていました。その情報提供者は雪乃さんだとオレは聞きました」
「そう。それで?」
雪乃さんはそれが何か?みたいな顔をしている。
「まぁそれだけなんですが」
そんな返し方をされてはオレは何も言えない。
「あなたに本気を出してもらうためよ。その最高の場を提供しようと思ってね。絶対にキミが逃げられないような状況を作りたかったの」
「オレの本気?」
またこれだ。この人はオレの戦いを全て見ているはずなのに本気を出せ言う。
「オレは誰かと戦うためにこの学院に入ったわけじゃありませんから」
「そんな理屈は通らないわ。ここにきた以上は誰かと戦ってもらう。それがルールよ」
「で、でも!」
「少年よ」
オレの言葉は途中でどこからともなく、学院長の隣に立っていたマルクによって遮られた。
「少年は何のためにここに来たのかね」
「オレがここに来た理由?」
「そうだ。誰かに意見を言う時には自分はその意見を言える立場にあらなければいけない。この意味がわかるな?」
「つまりはオレが成し遂げたいことはそれなり結果を出してからじゃないと言えないってことですよね」
「その通りだ少年。キミの今していることは子どものワガママと同じだ。何かを示したいなら、それに見合った結果を出すのが、社会の礼儀だ」
マルクさんの言っていることは正論だ。
「わかりました」
だからオレは頷くことしかできなかった。
「マルクに全部言いたいことは言われちゃったけど、そういう事よ。まずは、力で示しなさい。それが今のあなたがやることなんだから」
「本当に本気で良いんですね」
「もちろんよ。キミの凄まじい魔力と、ココアちゃんの潜在能力をしっかりと使いこなす事が出来れば、余裕のはずよ。それに、当日の安全性は完璧だから、キミが本気を出しても相手が死んじゃうことはないわよ。だから安心して全力を出しなさい」
「オレはそこまで強くないですよ」
「それは試合になればハッキリするわ」
その時の学院長の目は、楽しみが増えた子どものように、キラキラしているような気がした。
「そう言えば、キミは強くなりたい?」
「はい?」
唐突なことに聞き返してしまった。
「正直今のキミは宝の持ち腐れだわ。キミの力をそれなりに出してもらうためにこんな企画を準備したの」
そう言って出された紙には『ドキドキ!マジバト祭直前合宿!ポロリもあるかも!』
「え〜と。色々突っ込みたいことはありますけど、これはなんですか?」
「何って、見てわからないの?強化合宿よ。強化合宿。明日から祭の期間まで、私の別荘を貸してあげるわ。ちなみに修行内容は自分で決めなさい。そこで何をしても良いわ」
「わかりました。けど、学校の方は大丈夫なんですか?」
「そこも心配いらないわ。ちゃんと公欠扱いになるから大丈夫よ」
オレは自分の力がわからないからな。この機会を逃す手はないだろ。
「喜んでやります!やらせて下さい!」
「わかったわ。やるからには全力で頑張りなさい」
「はい!」
学院長の言葉に今日一番の返事をしたオレだった。
凌牙は部屋を出て行き私とマルクの二人になった。
「マスターよ。いったい何を考えているのかね?」
「別に何も考えてないわよ。ただ学院長として、彼をこのまま放って置くわけにはいかないじゃない」
これは本当の気持ち。嘘は言ってない。
「ほう。マスターにもそんな気持ちがあったとわな。しかしマスターよ。本当の目的は自分が楽しみたいだけではないのか?」
マルクが本心に聞くように問いかけてきた。
やっぱりマルクに隠し事は無駄だった。
「そうよ。だって彼が強くなればこの先おもしろくなりそうじゃない。それに、年頃の高校生が一つ屋根の下って、萌えない?」
「マスターは自由気ままだな」
雪乃が自信満々に言うと、マルクは肩をすくめ、やれやれといった仕草で言った。
これから楽しいことが起こる。
雪乃の目はそんな近い未来を予見していた。
今日一日が終わり、寮に帰ってきた。
「ただいま」
「お帰りなさい凌牙さん」
今日もココアがいつもの可愛らしいエプロンで、出迎えてくれた。
「ご飯にします?お風呂にします?そ、それとも・・私ですか?」
こんな昔の誘惑の仕方どこで覚えたんだか。
まぁ可愛いけど。
多分この靴を見る限り中にいる奴らだな。
「ココア。もうそれ禁止な」
「どうしてですか?」
ココアは可愛らしく、不思議そうに首を傾げた。
ココアは自分の可愛さを自覚してないからタチが悪いよなぁ。
「まぁ色々だ。ココアはいつも通りでいてくれ」
「凌牙さんがそう言うなら」
ココアも納得してくれたとこで、中にいる奴に問いたださないとな。
靴を脱ぎ、部屋の扉を開けても誰もいなかったので、脱衣所の扉を開けると。
東堂詩音とシビルが裸でいた。。
詩音はシビルの頭を拭いている最中だったようで、がっつりと目が合ってしまった。
風呂から出たばかりか、詩音の体は少し赤みがかっていて、体が火照っているように見えた。
その豊満な体は綺麗な形をしていて、形の整った胸には少し水滴があり、詩音の魅力を引き立て、下を見ると、綺麗な脚がそのまま伸びていて、魅了されてしまった。
そんなことを考えていたのが、ほんの一秒にも満たない間だ。
オレは我に帰ると、何かを言わなければいけないと思ってしまった。
「詩音って、意外と胸大きいんだなぁ〜なんて」
地雷を踏む音が聞こえたような気がした。
「イヤァァァァ!」
「ぐへっ‼︎」
詩音は胸を隠し、奇声をあげながらオレの顔面を思いっきり殴りつけると、オレは脱衣所から吹っ飛んだ。
「この変態!」
詩音はそう言って脱衣所の扉を思いっきり閉めた。
するとそれを聞いたココアが駆けつけ、オレに聞いてきた。
「何かあったんですか?」
「何もないけど、女子って力強いんだな」
「私も力持ちですよっ」
そんな意味のわからないやりとりをして、2人が脱衣所から出てくるのを部屋で待った。
「それでなんでお前らがオレの部屋にいるんだよ」
二人が脱衣所から出てきた後、ガラス張りのちゃぶ台みたいなやつに、向かい合って座った。
オレとしては向かい合うのは詩音じゃなくてシビルが良かった。
なぜなら今でも詩音はオレを睨みつけ、向かい側から威嚇しているからだ。
それでも話題を出したオレは勇者だと思う。
「なんでって、私たちがここにいるのは明日からの合宿に参加して欲しいと、学院長に頼まれたからよ」
「学院長に?」
「ええ。学院長が魔法のことを、凌牙くんにコーチしてくれって直々に頼まれたのよ」
そうだったのか。確かにオレとココアだけじゃ魔法の特訓はできないかもな。魔法に関して優秀な人ならコーチにはもってこいってことかな。
「あの〜。合宿って、いったいなんの事なんですか?」
話を聞いていたココアがおずおずといった風に、聞いてきた。
「今日雪乃さんに言われたんだ。祭で勝つために、明日から合宿しなさいって」
「そうだったんですね」
ココアはなるほどといった感じて手をポンと叩いた。
「でも、本当に付き合ってもらって良いのか?オレたちに得はあるけど、詩音には何の得もないぞ?」
「そ、それはその・・・」
オレの質問に対して、詩音は少し言うのをためらっているようだった。
「詩音・・凌牙が心配って、言ってた」
予想外に言ってくれたのはシビルだった。
シビルは今でも人形を持っている。
脱衣所にいるときは、そういえばあの人形、バスタオル巻いてたな。
「ちょ、ちょっとシビル!」
「え?詩音、言ったよ?」
詩音が赤面しながら驚いているが、シビルは何かおかしいこと言った?みたいに首を傾げている。
「そうだったのか。ありがとな詩音」
今回は素直にお礼を言うしかないよな。
「私もあなたが退学するのを、黙って見るのは好きじゃないから」
さっきみたいな睨んでいるのとは違う、真っ直ぐな瞳をオレに向けていた。
学院長と同じことを言われたのに、心の響き方が全く違うような気がした。
「でも、裸を見たのは許さないから」
オレの勘違いだったようだ。
真っ直ぐな瞳はそのままきつく睨むものとなっていった。
「詩音だって、ココアに変なこと吹き込んだよな!」
ココアが出迎えてくれた時の台詞はとても可愛らしかったが、毎日は辛い。
「可愛かったでしょ?仕草もみんな凌牙くんの趣味に合わせたんだから」
「お前なぁ」
「あの〜凌牙さん。さっきの私は可愛くありませんでしたか?」
ココアの方を向くと目に涙を溜めながら、両手の拳を顔下にしていた。
「そんなことある訳ないだろ⁉︎」
「本当ですか?」
オレの必死の答えにココアがオレの顔を覗き込むようにしていた。
「もちろんだ!オレを信じられないのか?」
「いいえ。私は凌牙さんを信じてますから」
ココアが今日一番の笑顔を見せてくれた。
恥ずかしさの中にも嬉しさを、ココアの可愛い顔で、全て表している。
またココアとの絆が深まったような気がした。二人がいることを忘れていなければ良い雰囲気で終わっていたと思う。
「私たちがいないとこでイチャイチャしてくれないかしら?」
「凌牙・・・私も・・可愛い?」
そんな声さえ無ければ、最高だった。
てな訳で、オレとココアと詩音とシビルは明日から、強化合宿をすることになった。
まずはここまで愛読してくださった皆様にお礼を申し上げたいと思います。
今回の作品はどうだったでしょうか?
次の話で物語の中盤です。
その次はラストになります!
2巻目も出したいと思っていますので長い間楽しんでくれとる嬉しいです。
不出来な作品だと思いますが、これからも温かい目で見守って下さい。
ありがとうございました。