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日常系にある非日常系  作者: 雅
始まりの章
2/8

魔法学院

オリジナル作品!

うまく書けるか心配です!

でも全力で頑張りますよ!

ここは日本の太平洋側にある島。この島では魔法開発が進まれており、各国の政府が共同で作ったとも言われている。

この島は突如現れ、この島を作ったのは魔法開発が進んでいる国々の魔法使いだと言う。中枢には魔力の塊があるとかないとか。

そんな島はわずか半年の間に、近未来的な都市なっていった。この島と本島を繋ぐものは一本の橋だけだ。

しかし、行き来するには飛行機や船もある。

そんな現代では科学よりも魔法の方が今は絶大な支持を得ている。

わずか半年で何もなかった島に高層ビルや様々なサービス業店を建て、魔法を必修科目とした学校を造ってしまった。それだけ世界が魔法を中心に考えていることだけど思う。

この島は魔法が世界で唯一研究されている島だ。この島の名は『世界魔法研究特別区域』通称魔法区は世界中から魔法使いを集めそれを日々研究している。

その代表的なものがこの学校だ。

国際魔法学院。オレたちが日々を過ごす全寮制の学院だ。

オレは今日も必修科目である魔法の実技を受けていた。

青い空を見上げてようやくわかった。

(今日もまた負けたんだな。)

「リョウガ弱い」

「また私たちの勝ちね」

感情のあまりこもっていない様な声で人形を抱きながら、オレのことを見下ろしているのは金髪の長髪で、それに合った黄色い瞳のシビルちゃんと、そのマスターである東堂詩音とうどうしおんだ。

「お前らが強すぎるんじゃないのか?」

「そんなことない。リョウガが弱過ぎる」

「女の子に弱いなんて言われるのはどんな気分かしら」

「そのうち勝ってみせるよ」

仰向けになった体を起こして、オレのパートナーのところに行った。

「ココア、大丈夫か?」

「凌牙さん」

焦点のあっていない目でオレを呼んでいる。

「そうだ。怪我はないか?」

「はい。少し擦りむいただけで、特に異常はありません」

「なら良かった。立てるか?」

「はい。ありがとうございます」

オレはその子に手を伸ばした。女の子がその手を掴むと引っ張り上げだ。

この子はオレのパートナーのココア。ピンクのショートカットで瞳もピンク色をしている。まだ幼い体は本当に軽い。

そしてオレは生田目凌牙なまためりょうが、普通の男子高校生だ。

オレたちが普通じゃないのは百敗まで残り二敗となっている学院切手の最弱コンビということだけだ。


ココアと別れた後、教室に帰ると、クラスの連中が笑いながら話しかけてきた。

「また負けたんだって?」

「百敗まで残り二敗になったな!」

「ランキングビリおめでとう!」

また始まった。この学院に入る前まではあまり喋る機会がなかった奴らだが、オレが連敗記録を更新していくにつれて、話しかけてくるヤツらだ。

「相変わらずお前らは元気だな」

オレが少し呆れたように言うと彼らは笑った。

「この学校で初の百連敗を成し遂げるかも知れない奴と同じクラスだと面白さが増えるよな!」

そんな煽りも、もう慣れた。

こいつらはオレに真正面から向き合って話してくれる数少ない友達だ。

でも、周りに耳を済ますと。

「凌牙くんて可哀想よね」

「パートナーがあいつじゃなければもっと良い成績が出せるのにな」

「ほんと、運がないよな」

「凌牙もパートナー変えたらいいのに」

「あんな出来損ないをパートナーに選ぶなんてありえねぇよな」

この感覚はダメだ。

この感情に流されちゃいけない。

そうは思っても気付いたらある男子生徒の前に立っていた。

「ん?なんだよ?」

そんなヤツの顔を思いっきり殴りつけてやった。クラスの連中は唖然としている。

「良いか!よく聞け!オレのパートナーはあいつだけだ!変えるつもりもバカにされる筋合いもない!今度あいつのを出来損ないって言って見やがれ!ただじゃおかねぇぞ!」

「へっ!お前がここでなんて叫ぼうとも、この学院での地位はバトルの勝敗だ!お前ら最底辺の奴らには何を言っても許されるんだよ!」

そう、これが今の世の中の実態だ。

魔法の強さが全て。弱い奴は踏みににじられていく、弱肉強食の世界。

「道具が出来損ないならマスターまでダメになっちまうのかよ」

「道具だと?」

「そうだ!あいつらはオレたちのマスターの道具に過ぎない!道具をうまく使えるかはそいつを使う者に左右されるんだよ!お前はあの道具を使いこなせてねぇんだよ!」

ダメだ。こいつは許せねぇ。我慢の限界だ。

もうでも良くなってきた。こいつは野放しにできない。

「いい加減にしてください!私たちマスターはあの子達がいないと魔法は使えないのよ。それなのにあの子どもたちを道具扱いするような言動はこれ以上許しません!」

本を読んでいたそいつはいきなりその男に怒鳴りつけた。

「ランキング上位に言われちゃ下がるしかないなぁ。でも、覚えてろよ。お前を必ず公式の場でぶっ潰してやるよ。お前のパートナーもろともな」

そういうと教室を出て行った。周りは何も無かったように話しの続きをしていた。

「委員長ありがとう」

さっきオレの変わりにあいつを黙らせたのはこのクラスの委員長。神代千春かみしろちはるだ。

「勘違いしないで下さい。別に、あなたのために言ったのでは無いのですから。さっきの人が少々思い上がっていたので、制しただけです。あなたも人をいきなり殴るのは止めて下さいね。でも、少しスカッとしました」

そう言ってオレに微笑むと、また座り彼女も何事もなかったように本を読み始めた。

(オレも外で頭でも冷やしてくるか)

そう思いオレも教室を後にした。


今は中庭のベンチに座っている。

この学院では魔法によって桜が一年中舞っている。このベンチの上に咲いている桜は学院名物の一つ、やっぱり綺麗だ。ここは落ち着く。

この世界では子どもが魔法を発動させる唯一の方法だとされている。

人類が魔法を手に入れることが出来たのは彼らのような子ども達、エルフがいるからだ。

エルフはどこからやって来たのかはわからない。ただ言われているのが、人間の使われていない脳の部分が覚醒した子ども達と言われている。

エルフの身体の成長は一定を超えることはない。ある一定の期間に達するとこどもたちの身体的成長が止まってしまうからだ。それ故に、一生をあの体で生き続けなければならない。本当に酷な話だと思う。エルフは貴重な存在であり国が管理しているらしい。

エルフと呼ばれる子どもたちは世界の魔法開発のために物凄く貢献している。

それなのに世間からは偏見の目で見られ、エルフの虐めは絶えない。エルフには学校もなく、ただ魔法を発動させるための道具という認識が世界中で広まっている。エルフは人間のしもべ。それが今の世の中だ。

マスターとエルフはお互いが引かれあい、そのエルフと目を合わせた時に呪文が思い浮かんだら、そのエルフとマスターは初めてコンビとなる。

しかしエルフと人間が同じ立場になるわけがなくコンビと言うよりは、主従関係に近い。

だから法律でエルフに何をしても裁かれることはない。

逆にエルフが罪を犯せばきつい罰がある。

そんなふざけたルールがないのがこの魔法区だ。ここではエルフと人間が平等に暮らせる区域として初の試みだった。

さっきの様にまだ本島にいた頃と同じ感覚の奴は少なくはない。

「本当にふざけた世の中だよな」

そんなことを考えていると、学院生徒が体育館裏から出てきた。

(あいつら、あんな所で何をしてたんだ?まさか‼︎)

オレはベンチから立ち上がり、あいつらが出てきた方へ向かった。

体育館裏のゴミ置場にはボロボロの少女がいた。

服は破れ、至る所に傷や痣が見られる。

水色の髪を揺らし、顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。

オレは近寄りその子に触れようとした。

「おい!大丈夫か?」

触れた瞬間少女は恐ろしい者でも見たかのように怯え、頭を抱えながら震える声で泣いた。

「ごめんなさいごめなさいごめなさいごめなさいごめなさいごめなさいごめなさいごめなさいごめなさいごめなさいごめなさい」

正直頭を鈍器で殴られた様な感覚になった。子どもがなんでこんな顔をしながら怯えてるんだよ。

ここはエルフと人間が平等に暮らせる島じゃないのかよ。

オレはその子を抱きしめることしかできなかった。

「大丈夫。オレはキミを傷つけたりしないから。大丈夫。大丈夫だぞ」

そうなんども少々に言いながら、オレの頬にも涙が流れていた。


結局少女は泣き疲れて寝てしまった。

オレは少女を家までおぶって行った。

ここは全寮制だが、生徒一人一人に部屋が設けられるという贅沢っぷりを出している。

学院のお金は全て各国々が払ってくれている。生徒には最高の施設と最高の環境を提供するらしい。

「ただいま」

オレが扉を開けるとココアが可愛らしいフリルの付いたピンク色のエプロン姿で出迎えてくれた。

「おかえりなさい凌牙さん。って!その子どうしたんですか?」

大きくて可愛い瞳をさらに大きく見開いている。

「その話は後だ。今はこの子を休ませないと。ココアは何かこの子に食べさせるものを作ってくれないか?」

「わかりました。ベッドは綺麗にしておいてあるので、大丈夫ですよ」

「ありがとうココア」

そうしてオレは自分のベッドにこの子を寝かせた。

そうしてこの子を拾った経緯をココアに話した。

「そんなことがあったんですか」

ココアもおそらくこの少女の気持ちがわかるのだろう。少女の頭をココアは優しく撫でていた。

そうして数十分後彼女は目を覚ました。

「ここは、どこ?」

まだ少し怯えた様子を見せながらベットから顔を少し出して聞いてきた。

「ここはオレの部屋だよ。君が寝ちゃったからここまで運んで来たんだけど大丈夫だったかな?」

オレが話かけると少女はベッドに隠してしまった。

(そりゃそうだよな。あんなことされれば誰だって人間を怖がるに決まってよな)

オレが落ち込んでいるとココアが少女に近寄って話かけた。

「初めまして、私はココアって言います。凌牙さんのパートナーをしてるんですよ。あなたの名前は何ですか?」

「私はマーハ・・・」

「マーハちゃんって言うんですか。良い名前ですね。ここは凌牙さんの部屋なんです。あなたをここまで運んで来てくれたのは凌牙さんなんですよ?」

ココアが優しくお姉さんのように声をかけるとマーハベッドから顔を少し出して、小さな声ででもハッキリと言ってくれた。

「ありがとう」

そんな一言がオレの胸の中にストンと落ちたのがわかった。

「では一緒にご飯にしましょう!」

するとココアが場を和ませる様に少し大きな声でいった。

マーハは頷くとベッドから出てきてくれた。しかしそのままベッド寝せていたので、少し汚れている。

「ご飯の前に風呂にでも入った方が良いかもな。ココア。一緒に入ってくれるか?」

「はい!マーハちゃん入りましょう」

そうしてココアに手を引かれマーハは風呂場に行った。

「すぐに食べられる準備でもするか」

オレは台所に向かい、料理を温めた。

(今夜はシチューか)


「さぁ。マーハちゃんも脱いで下さい」

誰かと入るお風呂はひさしぶのココアは少しテンションが高めだ。でも、ココアは上は脱いだのにマーハは服を着たまま下を向いている。

「どうかしました?」

「なんでココアのマスターはあんなに優しいの?私のマスターはいつも私を虐めるの。物を投げたり、髪を引っ張られたりする。ココアのマスターは私たちエルフにどうして優しいの!」

それは少女の悲痛な叫びだったかも知れない。自分と同じエルフが全く違う環境で生活しているのだ。誰もが羨ましがる生活。

「それは私が凌牙さんの家族だからです」

「家族?」

「はい。家族です。私も元々はボロボロだったんですよ?でもそれを助けられて、今では凌牙さんと幸せに暮らせています」

「私たちはバトルで勝つ事が全てなんだよ?どうしてあなたたちは負けてもバカにされても笑顔でいるの?」

一番の疑問はこれだった。

エルフは勝つことによってその存在意義を達成できるもの。

「負けても凌牙さんが隣にますから。私は落ち込むことなく笑顔なんです」

彼女には衝撃的な言葉だっただろう。

でもそんな生活を夢見ていたのもまた真実。

マーハは自分とは違う境遇の子に初めて出会い、初めて涙した。

「大丈夫ですか?どこか痛いとこあるんですか?」

ココアはオロオロしている。

マーハは少し気分が楽になっていることがわかった。

「なんでもないよ。お風呂一緒に入ろ」

「はいっ!」

その言葉にココアは飛びっきりの笑顔で頷いてくれた。

その声が聞こえていた台所の凌牙もその言葉で今日一日の疲れが吹き飛んだ気がした。


風呂から上がってすぐに夕飯を食べ、マーハちゃんのマスターのことを聞いてみた。

「話したくなければ良いけど、マーハのマスターの名前を教えてくれないか?」

少しためらった後にマーハは意を決した様に教えてくれた。

「高野恭平」

「あ〜あいつか」

今日ココアたちのことを道具扱いした野郎だな。

「今晩はどうする?あいつの所に帰りたくなきゃ今日はうちに泊まっていけよ。その方がココアも喜ぶだろうし」

「もちろんですよ!泊まってくれたら嬉しいです」

でも幸せを知らない少女にニ人は眩しすぎたのかも知れない。

「今から帰る。マスターが心配していると思うし」

「そうか。引き止めて悪かった」

「また遊びに来てくださいね」

「うん。ごちそうさまでした」

そう言うとマーハは玄関の方へ行き、ココアは食器を片ずけていた。

オレは玄関まで見送ろうと思い玄関まで来ると、マーハがオレに向き直り頭を下げた。

「助けてくれてありがとう。ご飯美味しかった」

「いやいや、またいつでも遊びに来て良いんだならな」

そう言うと少女の顔がパァっと明るくなっていった。

「うん!じゃあまた」

玄関の扉を閉める音に混じって、『あなたがマスターなら良かったのに』そんな言葉が聞こえたので、もう一度扉を開けるとそこにはもうマーハの姿は見当たらなくなっていた。


マーハのマスター、高野恭平はお金持ちだ。

家はこのビルのずっと上の方にある。

家に入ると中は真っ暗だった。

「マーハ、今日はやけに遅かったじゃないか」

「すみませんマスター。少し気絶している時間がいつもより長かったです」

「そうか。でも凌牙の家は楽しかったか?」

マーハは衝撃だった。大きな瞳を揺らして動揺が隠せないでいた。

「マスターのオレをだませると思うなよ?少しお仕置きが必要だな」

暗闇から出てきたマスターはどんな者よりも恐ろしく見えた。

「す、すみませんマスター。ごめんなさい‼︎ごめんなさい‼︎」


今日は昼休みに学院長室に呼び出された。

「失礼します」

「待ってたわよ」

ここの学院長は世界で五本の指に入る位の魔法使いだ。

見た目も綺麗で黒髪の長髪は日本の美を思わせ、黒い瞳は吸い込ませそうなほど澄んでいる。そしてバツグンのプロポーションを兼ね備え、若干十八歳にしてこの学校を仕切っている天才的な人でもある。

まさに完璧な人だった。

「そんなにかしこまらないでいいわよ?私だって堅苦しいのはあまり好きじゃないから」

「わかりました。で、用事と言うのは?」

「あなたを呼んだのは他でもないは、一週間後に控えているマジバトカーニバルで結果を残せなきゃ退学にするから、よろしく」

(いきなり過ぎるだろ!)

マジバトカーニバルとは毎年開催されるマジバトの催し物の一つである。

そこには一般のお客さんが魔法を一目見ようと大勢集まり、オレたち一年生にとっては晴れ舞台となっている。

「え?冗談ですよね?」

「私は嘘と冗談が嫌いなの。大体あなたをここに連れてきて、学費や生活費を出しているのは誰?」

「学院長です」

「あなたの入学を特別枠として入学させたのは誰?」

「学院長です」

「だったらその期待に応えるのはあなたの義務よ。ここに入った以上、結果が赤点なら退学よ。この世界はそんなに甘くないんだからね」

「はい」

「次の試合であなたの本気を見せてもらうわ。それができないなら荷物をまとめておきなさい」

「わかりました」

「じゃあ学院長の仕事終わり!ココアちゃんは元気にしてる?」

今度は雰囲気がキラキラして、机に前のめりになりながら聞いてきた。

「元気にしてますよ。毎日楽しいです」

「良かった。あの子が笑っているのはきっとキミのおかげよ。ありがとう」

「いえ、オレは何も」

「それはそうと、ココアちゃんとは何かなかったの?」

「何かってなんですか?」

「まぁとぼけちゃって!あんな可愛い子がいたら男の子はみんな襲っちゃうでしょ⁉︎」

「するかぁ‼︎」

「しないの?」

「しません。大体そんなに騒いでたらまたマルクさんに怒られますよ?」

「マルクが怖くて学院長なんてやっていけるかっての!」

「ほう。ならばマスターよ。これからはもっと厳しくして大丈夫なんだな」

学院長の後ろに執事服を着た青年が現れた。

「げ⁉︎マルク!なんでここに?買い物に行ったんじゃ」

「いやいや、客人が来るのにお茶の一杯も出さないようでは南雲家の名が泣くと思ってな」

そう、この二人は世界ランキング二位の南雲雪乃なぐもゆきのさんとパートナーのマルクだ。

世界ランキングとは世界トップ八位までに与えられるランキングだ。

大体の魔法使いはこの八人を目指して日々鍛錬している。

だから世界では彼らに敬意を込めてこう呼んでいる。

『世界を束ねるゼウス』このゼウスという称号はこの八人しか持っておらず。

その八人の中に日本人は二人いる。

称号の他には国際会議でも使える特権という物も、この八人は持っている。

基本的に魔法使いは国家公務員として仕事をもらっている。

この学校を卒業後オレたち一般人がもらえる称号は『ウィザード』だ。

このウィザードの質や量が外交の時はとても重要で、世界はここの生徒の向上を心から待ち望んでいるのだ。

「久しぶりだな。少年」

「マルクさんも元気そうですね」

「あぁ。面白い主人を持つと退屈せずにすむよ」

マルクは少し透かした印象があったが心は優しい男だ。

「と、とにかくさっき言ったこと本気だからね?キミは強いんだから。行くわよマルク」

そうして学院長とマルクは学院長室を出て行った。

あんな人がトップなのにこの学校は変わらないままなんだよな。

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

(お腹すいたなぁ)

オレは急いで教室へと戻っていった。


放課後になると今日は珍しいヤツが訪ねてきた。

「凌牙はいる⁉︎」

そんな声が聞こえたからオレは振り向かないで帰ろうとしたが、首根っこを捕まれ逃げることができなくなってしまった。

「どうして逃げるのよ?」

こいつからは逃げられそうにないな。

月島紅音つきしまあかねオレの数少ない女友達の一人だ。いつもの髪型の茶色のポニーテールを揺らし、オレを捕獲した。

少し半目で睨まれオレはカエルのごとく大人しくすることにした。

「逃げるわけないだろ。それでなんのようだ?」

「凌牙に頼みごとがあって来たの!聞いてくれるよね?」

「断る!」

「聞こえなかったなぁ。」

「堕ちる!堕ちる!」

まさかベッドロックされるとは思わなかった。

「聞いてくれる?」

「とりあえず内容を確認してからだ」

「今日私とモカで魔法区中央にあるちょっと高い喫茶店でお茶することになってるのよ」

「それで?」

「お金がないから貸して?むしろ付いてきて!」

「なんでそうなるんだよ!」

「え〜良いじゃない。モカも凌牙に会いたがってるしさ。ね?」

モカが会いたがってるならしょうがないな。

「わかったよ。いつ頃だ?」

「今すぐに決まってるでしょ!」

そう言うとオレの首根っこを引っ張りながらオレは引きずられて、連行されていった。

(せっかくだし、ココアも呼ぶか。あと、財布は大丈夫かな?)


「「「一週間後のマジバトカーニバルに負けたら退学⁉︎」」」

見事に息の合った三人は紅音とモカとココアだ。

三人は美少女なのだが、その美少女が驚いているのを周りは何事だと見てくる。

「修羅場かな?」

「きっと、修羅場よ」

周りは勝手に話が進んでしまっている。

オレたちは今、魔法区中央通りにある喫茶店に来ている。

そこでなぜか紅音の分のミックスパフェも奢らされ、オレはコーヒーを飲んでいた。

そうして食べながら話していると今日あったこを話して今にいたるわけだ。

「声が大きい。今日の昼休みに言われたんだよ。そこで結果を残せって」

「あんたたち勝てる自信はあるの?」

「そればかりはわからないな」

「勝たなきゃ凌牙お兄ちゃんとココアお姉ちゃんいなくなっちゃうの?」

モカが不安そうに聞いてきた。

モカはココアよりも濃いピンク色の髪をサイドポニーテールにしている髪型だ。

瞳は幼さを主張している大きな垂れ目で、なんとも言えない愛くるしさを持っている。

「大丈夫。オレたちはモカの前からいなくなったりはしないよ」

「そうですよ!私たちはずっと仲良しです」

「そうよモカ。凌牙がきっとなんとかするから、今は目の前のパフェを一緒に食べまることに全力を出すの!」

「うん!」

紅音が心配ないとウインクをしてモカを元気付けてくれた。

(やっぱりあいつもなんだかんだ言って、ちゃんとマスターしてんだな)

オレもココアにはずっと笑っていて欲しい。

もうこいつが傷つくのは見たくないんだ。

そう改めて小さな誓いをたてたのだった。


三人と別れてからオレは一人で中央通りを歩いていた。

今日一日でオレの未来が変わるかも知れない出来事を整理したいと思ったのだ。

この中央通りには様々な店が経営されている。

学院から近いということもあり、あちこちに、うちの生徒が何人かいる。

そこを真っ直ぐに抜けると海が見える区域に出る。

ここはこの島の海の玄関口とも言われており、高層ビルや海浜公園などがある。

ここはカップルのデートスポットの定番として若者に絶大な人気がある場所だ。

そんな場所で一際目を引くのが、この『魔法闘技場』だ。

収容人数は約三万人のドーム型の建物で、世界規模の催し物に、毎年使われている。

もちろん来週開催させるマジバトカーニバルもここで行われる。

三万人の観衆なんて想像も付かないので、止めておこう。もし想像できたら心臓がバクバクだ。

なんてことを考えながら魔法闘技場の周りを歩いていたら、入り口の巨体スクリーンに目を奪われていた。

そこには栗色の綺麗な長髪を揺らし、その髪に合った青い瞳で、端整な顔立ちをした女の子と、金髪のツインテールで緑色の瞳をして、人形みたいに可愛い女の子が写っていた。

この映像はおそらく去年のマジバトの世界大会の映像だろう。

綺麗な顔や髪を汚し、試合着はボロボロになっていた。

それでも二人の瞳は汚れを知らず、真っ直ぐに前を見つめ続けていた。

そうしてピンチからの大逆転劇をやってのけたのだ。

世界の名勝負の一つとも言われている。

それをやってのけたのが、姫神明日菜ひめがみあすなとその相棒であるアリス➖この二人が世界ランキング四位、十六歳でゼウスの称号を持っている、日本が代表する魔法使いだ。

今は映像が変わり二人のインタビューになっている。

『アリスがいたから私はどんな時でも諦めませんでした。心強いパートナーはどんなものよりも頼りになるってことを、改めて感じることができました。諦めない心が奇跡を呼ぶんです』

自分とは違う世界の様な気がした。

画面の中の二人はとても幸せそうだ。

でも世の中ではまだまだエルフたちが苦しい思いをしている。

「世界がこの二人みたいだったらいいのにな」

そんな独り言は女の子の声にかき消された。

「ちょっと!そこどいてぇ!」

「ん?ふげっ‼︎」

声に振り向いたと同時に女の子がオレに突っ込んで来たのだ。

自分に何が起きたかもわからないまま目を開けると、目の前には良い匂いがする白い布があった。

これをどけようと顔を動かすも布は取れない。

「ちょっ‼︎ちょっと何してんのよ⁉︎きゃっ!今すぐどくからそんなに、んん〜。モゴモゴしないで! 」

そこでやっと自分の置かれてる立場を理解した。

この良い匂いの布はパンツか。

それにしても何でこんな女の子は良い匂いがするのか不思議だ。

「だから動くなって言ってるでしょ‼︎」

叫びながら女の子はオレの顔からどいた。

「人のパンツに顔を埋めてモゴモゴするってどんな変態よ!」

「キミがオレに突っ込んで来たんでしょ!普通は前を向いている人が気をつけるべきだよ⁉︎」

「こんなところに人がいるなんて思わ・・」

そこでオレたちはようやく顔を合わせた。

時間が止まった様な感覚だった。

海の音も、風の音も聞こえない。スクリーンの音だって耳には入らないでいた。

そうして彼女は一瞬泣きそうな顔をした後、すぐにオレを睨みポツリと言った。

「この嘘つき」

これがオレと幼馴染の数年ぶりの出会いだった。


オレと明日菜の関係はどこにでもいるただの幼馴染だ。

オレと明日菜は山奥にある村に住んでいた。そこでは毎日山を走り回ったり神社に行って秘密基地だって作ったりした。

オレは何でも普通に対して、明日菜昔から天才肌だった。

オレが三重跳びを一週間以上かけて完成させたものを、次の日から明日菜もできるようになっていたり、オレがリコーダーを吹いて練習していると、彼女は音符も見ずに音を聴いただけでその曲を吹けるようになっていた。

そんな天才肌の明日菜をオレは尊敬できる友達とも思っていた。

信じ合える家族とも思っていたのだ。

オレが明日菜の前から姿を消すまでは・・・













まず、みなさんに言いたいことはここまで愛読していただきありがとうございます。

みなさんはこの作品をどう感じてくれましたか?

私はこの作品に魂を込めて作っていきたいです。

ぜひこれからも私と私の作品を温かい目で見守って下さい。

応援よろしくお願いします。

そして次のお話も楽しみにして下さい!

ありがとうございました。

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