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3話

「それにしても勇者だからかすごいですね、ツッコミ力が」

「ツッコミ力って何だよ!? しかもこんな勇者だったら一般市民でいいから!」


 次の日、少しはボケも収まってくれるかと期待したが(昨日はよくボケてきたのでつっこむのが大変だったのだ)俺がドアを開けた瞬間にボケてきやがった……!

 ただ、


「ツッコミ力はその名の通りつっこむ力ですが……?」


 本人はボケているという自覚がない。

 いわゆる天然ボケってやつだ。


「はぁ……」


 この状況についため息をついてしまう。

 ちなみに今透明な球体にはほんの少しだけ光が溜まっている。

 これが全体を光らせないと俺は元の世界に帰らないんだよな……。

 1日でこれだけしかたまらないなんて、これじゃいつ帰れるかわからないな……。


 するとこの表情を読み取ったように彼女は言った。


「大丈夫ですよ。こちらの時間とあちらの時間は流れが違いますから」


 そう微笑む彼女に俺は安心する。

 なら多少長い時間いても大丈夫だな……。


「ちなみにこの世界での1日はあちらの世界での1年に該当します」

「普通は逆だろ!? それじゃあ俺が帰るときには何百年も後になるじゃねーか!」


 浦島太郎みたいになりそうだ……。


「大丈夫です。玉手箱を用意しますから」

「いや、そういう問題じゃねーし!」


 明らかに浦島太郎じゃねーか!


「流石です、たった二回のツッコミでこんなに球体に光が溜まっています!」


 興奮気味の口調に押されて見てみると確かに光が溜まっていた。


「って話をそらすな!」


 とりあえずこの世界と元の世界の時間の流れが違うことがわかった。

 でも俺は元の時代に戻りたいんだ!

 誰も知らないところで一人ぼっちとか寂しすぎる。


「大丈夫ですよ。この薬があれば」


 そう言って取り出したのは手のひらで握ることが出来るくらいのビン。中には液体が入っている。


「これはなんですか?」

「体が若返る薬です」


 ニコッと笑顔で断言された。

 しかし――


「俺が欲しいのは元の時代に戻れるものだよ!」


 この王女様は天然過ぎる。

 一体どう育ったらこんなに天然になるのだろうか?


「もしかして」


 女王様が俺の目を見て言う。

 まさか俺の考えを読み取ったのか?


「おなかがすいたのですか?」

「全然違うから!」


 女王様にまともな答えを期待した俺がバカだった……。


「やっぱりフライパンは美味しくないからですか……?」


 悲しそうな瞳で見てくる王女様。

 しかし、言っている事は絶対おかしい。


「フライパンは食べ物じゃないから! 調理器具だから!」

「え? でもパンってついてますよ?」

「でも違うから! フライパンのパンは英語で浅い鍋のことだから!」

「そ、そうだったんですか……。初めて知りました……」


 驚いたように目を見開く。

 いや、これくらい一般常識だから……。

 もう呆れて声も出ない。


「じゃあ、澱粉ノリでも食べます?」

「食べれねーよ!」

「でもご飯も同じ澱粉があるじゃないですか」

「そう言う問題じゃない!」

「そこまで言うなら普通にゆで卵を食べればいいじゃないですか!」


 なぜか逆ギレされた。

 なんか理不尽だ……。

 とにかくゆで卵を用意されている食卓へと女王様と一緒に行った。


     *     *     *


「じゃあいただきます!」


 俺はそう言ってゆで卵の殻をむき始める。

 するとなぜか王女様がこちらを驚いたように見ていた。


「ど、どうしました?」


 不審に思って訊ねると


「なんで卵の殻むいているんですか? そのまま食べるんじゃないんですか?」

「いや、一体どんなおなかしてるんだ! 普通一緒に殻まで食べたらおなか壊すだろ!」


 やっぱり、王女様は王女様だった。

 よく今まで生きてこれたな……。

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