18話
少し後半シリアスです。
「とはいっても意識するとなかなかツッコミ出来ないなあ……」
困ったようにため息をつくとステファニーが、
「そうですか? 私は余裕ですが」
と当たり前のように言った。
いや、ステファニーはどちらかというとボケだろう。
というかツッコミをするところ見たことないぞ?
訝しげに見ていると、
「なんですか、その目は! りんごとりんごジュースを間違えることが多い私でもツッコミは出来ます!」
「固体と液体でどうやって間違えるんですか!?」
まだ、皮をむいたりんごと皮をむいたジャガイモなら有り得るが。
「え? 普通間違えますよね?」
驚きで目を見開くステファニーに、
「有り得ません」
と切り捨てる。
「大丈夫じゃないですか」
ステファニーが笑顔を浮かべて言う。
何が? と聞こうとした矢先、
「しっかりツッコミ出来てますよ」
その言葉に俺は驚く。
確かに出来ている。
これがステファニーの天然さがなせる技だろうか?
「まあ普段どおりにしていればツッコミできますよ。私は少々ボケに向いているようなので」
「めちゃくちゃ向いているけどな、ステファニーは」
これで少々だったら俺の周りにボケに向いている人はいない。
「お褒め頂きありがとうございます」
ニッコリ笑って軽くお辞儀をするステファニーを見て、ステファニーは絶対皮肉きかないな……と思う。
まあ嫌な思いしてないならいいか。
「ところで、なぜ雄吾は元の世界に帰りたいのですか?」
「純粋に家族や友達がいるからです」
ここもいいところだと思うが、家族や友達がいない。
俺は急にこんな質問をしてきたステファニーに戸惑いながらもしっかり答える。
「もし、こちらに友達が出来たら帰りませんか?」
真剣な瞳で問うステファニー。
「いえ、帰ります。やっぱりこっちは俺の住む世界ではないので」
まあ、あと10日もしないうちに球体の光を満たさなければこの世界の住人になるんだけど。
「そう、ですか……。少し残念です。折角仲良く慣れたのに」
ステファニーが悲しそうに目を伏せる。
やはり別れは辛いもんな……。
「こちらの世界とあちらの世界行き来できればいいんですけどね……」
本当に出来たらどんなにいいんだろう。
「そうですよね。……って、いきなりシリアスな話してすみません」
「別にいいんじゃないの? でも意外だったな、ステファニーがシリアスな話するの。失礼かもしれないけど」
「意外ですか?」
きょとんとしたように首をかしげる。
「うん。いつも絶対弱音とかマイナスなこと口にしないし」
「なんかすみません……」
「別にいいと思うよ。というかたまには誰かに相談しなよ。友達とかさ」
「…………」
俺の言葉を聞いたとき、ステファニーは顔を伏せる。
その肩が少し震えているように見えて俺は慌てて声をかけた。
「ステファニー……? 大丈夫か?」
「私に、友達はいません」
声は震えていて、泣いているようだった。
友達がいない?
その疑問に俺は今までのステファニーを思い出してみる。
周りにいるのは俺を除けば全て大人で同い年など一人もいなかった。
女王として国のトップに立つために学ぶことは許されど、遊ぶことは認めてもらえなかったのだろうか?
「……俺は、友達ですよ。遠くなっても友達です」
必死に考えた言葉はあまりステファニーの期待に応えられなかったかもしれないけど、
「ありがとう、ございます」
まだ少し赤い目で微笑んでくれた。
「今日は少し涙腺が緩いですね。困ったものです」
冗談っぽく言って、
「すみません、今日はもう自室に戻ります。やらなければいけないことを思い出したので」
本当なのか嘘なのか分からないが、無理に引き止めてほしいとは思ってないだろう。
「そうですか。がんばって下さい」
俺はそう言って見送った。
そしてステファニーが角を曲がると、
「ステファニーのためにこの世界残ろうかな……」
と今までだったら考えたことのない言葉を呟いていた。




