第2話 白髪の少年
「ミカっ!!」
川へ行ったはずの女の子がミカの名前を呼び、戻ってきた。
「どうしたの?そんなに慌てて?」
何も知らないミカがおっとりとした口調で話すが、女の子は額に汗を浮かべながら言う。
「川で!川で人がたおれているの!」
「え!!?」
さすがに驚きを隠せなかったのかミカは川へ向かう。
するとそこには女の子が言ったように人が倒れていた。
様子からみて生きてはいるようだ。こんなところで倒れているのは明らかにおかしい。この川はさほど深くはないが、上流のほうに大きな滝があり、その滝の高さはとてもではないが落ちたりしたらひとたまりもない。
ましてやこんなところで日光浴だの水遊びなどして寝ていたりしているのなら頭がおかしいとしか考えられない。
ミカは倒れている少年に声をかける。
「もしもし?大丈夫ですか?」
・・・。
返事はない。
「しんでるの・・・?」
女の子が心配そうな顔でミカを見つめる。
「まさかっ。息はしているようだし、気絶しているだけね。大丈夫よ。」
そういって女の子を落ち着かせる。
これは嘘ではなく事実。
しかしこの少年が何の目的でこんなところにいるのかがまったくわからない。
そんなミカの思考を破るかのように小さなうめき声が聞こえた。
「大丈夫ですか・・・!?」
気絶していた少年がうっすらと目を開けてミカたちを見つめた。
「ああ・・・そうか・・・あんたら・・・フリタニティの奴らじゃないんだな・・・」
意味の分からない言葉を発して、少年は空を見上げる。
「よか・・った・・・」
消えるように声を放ち、少年は再び目を閉じた。
「フリタニティ・・・?」
女の子が少年が言った言葉を繰り返した。
その言葉と同時に少年の首下から青い小さな動物がひょこっと顔を出した。
「な、なにこのこ・・・」
青い動物はキツネのような動物。
よく見ると背中のほうに翼にみえるものがついているのでキツネでもない見たことのない動物だとわかる。
その青い動物は少年の頬にすりすりと自分の顔をくっつけていた。
ずいぶん懐いているようなのでこの動物は少年のペットかなんかなのだろうか・・?
「か、かわいい・・・」
「え?」
女の子は青い動物を抱き上げ、抱きしめた。
「もふもふしてる・・・っ」
「と、とりあえずその子はこの男の子のペットか何かしらね・・・。気絶しているみたいだし、家まで運びましょう」
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「う・・・」
小さくうめき声を上げ、少年は目覚めた。
「ここは・・・?」
あたりを見回すとどうやらここは部屋だと伺えるような家具が回りにある。
質素なベットに今体を預けている自分はここに来るまでの記憶をたどる。
「たしか・・・あの時・・・」
記憶を辿って見ようとしたとき、ドアにノックが掛かった。
軽く少年は返事をする。
ドアを開けて入ってきたのは金髪の女性ミカだった。
「調子はどう・・・?」
穏やかに、そしておっとりとした口調で少年に話しかけた。
「貴方この村の川で倒れていたからここまで運んできたの。ここは私の家よ」
「そうか・・・助けてくれてありがとな。」
「といっても、第一発見者は私じゃないんだけど。ソフィー!おいで!」
ミカがソフィと名前を呼ぶ。
するとドアからひょこっと顔をだし、赤い髪の女の子が頭に青い動物を乗せながら部屋に入ってきた。
「私はミカ。この子はソフィ。この子が貴方を見つけてくれたのよ。」
ミカが軽く紹介する。
「俺はハルト。」
白髪の少年はハルトという名前らしい。
ハルトはソフィを見て、軽く微笑んだ。
「どうかしたの・・・?」
ミカがソフィとハルトを交互に見ながら言う。
「いや、その、ソフィの頭に乗ってる動物な。めったに人に懐かないんだ。珍しいなと思ってさ。」
「なるほど・・・。この動物は見たことないんだけど・・・なんの種類なの?」
「ああ・・・これはうま・・へぶしっ」
ソフィの頭の上にいたはずの動物がハルトの頬に見事な蹴りを食らわせた。
突然のことだったので二人は驚いた。
「いてえ・・・。」
「だ、大丈夫??」
「馬っていうと怒るからこれだもんな・・・わかったわかった、拗ねんなって」
ハルトは青い動物をなだめながら
「まあ、キツネの一種だとおもってくれ」
と言った。