Story 6;FAKE&TRUE
ピーンポーン、と麻依はエリの家のチャイムを押した。
「麻ー依っっ♪いらっしゃぁい!」
「エリ。遅くなっちゃったね、ごめんね」
「そんなことないよぉ。入って入ってっ」
いつ見たって、エリの私服は超可愛いんだ。元から両想いじゃなかったら、きっと負けてたなぁ…。
「…でさぁ、高崎くんって、どーゆぅコが好きなの?」
「う〜ん。でも多分、エリがもうちょっと清楚になったって感じが好きだと思うなぁ」
「…清楚…かぁ。じゃっじゃあ、エリ髪茶色にする!!」
「えぇ!?」
エリの髪は、オレンジっぽい黄色のようなとても茶色とはいえない色。
「エリ、本気だよっ!高崎くんに好きになってもらえるんだったら今の髪の色…気に入ってるけど何だっていいもん!」
「っ…エリ…」
「あっあと、髪巻くのもやめるっ!」
「なんでよ。髪巻いた日のエリ…メチャメチャ可愛いのに」
「いいの。多分高崎くんって、麻依みたいな人が好きなんだもんね…」
「んなわけないじゃん。あたしのドコが清楚なの」
危ない危ない。このまんまじゃ大変なことになっちゃう…。
「エリ、うらやましかったんだよぉ。いっつも仲よさそうで、高崎くんが麻依見る瞳って、いつも愛しそうなんだもん…。エリ…麻依になりたかったよぉ…」
「エリ…」
まさかあたしを見て、エリがそんなコト思ってるなんて考えもしなかった…ううん、ダメ、朔斗はあたしの元彼なんだから…あたしがもらうんだから!!
「ねぇ麻依、エリ今から髪染め直す!美容院の方がいいかなぁ?」
「お金余裕あるんなら、美容院の方がキレイに染まるんじゃない?エリの今の髪って、エリ自分で重ねたの?」
「うん。薄めのオレンジとブリーチで色抜いて茶パと金パの中間らへんで止めたの」
「それでそんなキレイな黄色になるんだぁ…エリ器用だね。髪も聞くほど傷んでないしさ」
ブリーチは傷むし、抜きすぎても抜かなすぎても危ない。ヘタすると金パとか銀パになりかねない。あたしは美容院で、軽ーく茶色にしただけなのに…。さすがにエリぐらいにもなると、こだわりも深いみたい。
「今は余裕あるし、美容院行ってくる。麻依は行かないの?麻依、もうちょっと抜いても似合いそう」
「そう?あたしメチャメチャ日本顔だから似合わないと思ってたのに」
「似合うよぉ。それかメッシュ入れてさっ」
「じゃあ行こっかなぁ…」
「いこいこ♪」
やっぱりエリ、本気なんだ…確かにエリの髪色は、とても清楚とは言えない髪色だった。でも…叶わない恋なのに変えちゃっていいのかなぁ…。
―数時間後―
「あっれ〜!?麻依!? めーっちゃ可愛い!!」
「そっ…そう?エリも、すごい清楚っぽくなって可愛くなったよ」
「ありがとっ!」
エリは今までのハデな黄色っぽい髪色が一気にダークブラウンまで暗くなって、エリの髪って、こんなに顔立ち左右してたんだって思うぐらい大人っぽくなってる。
さてあたしの髪はって言うと、もともと少し長めのショートぐらいの髪だったから長さはいじらないで、少し巻くぐらいの軽めのパーマをかけて、今までより少し明るい茶色。今じゃエリより明るいぐらいになっちゃった。さすがに亜稀先輩よりは暗くしたけど。
「…じゃ、帰ろっか」
「うん!明日には朔斗くんって呼ぼうかな。髪色暗くして、自分に自信ついたような気がする!」
「…そっか。頑張りなよ、エリ」
「うん!!今日は1日付き合わせちゃってごめんね」
「そんなコト気にするの、エリじゃないぞ〜」
「はーい!!じゃあね!麻依!!!!」
「バイバイ、エリ!」
…あーあ…何頑張ってなんて言ってるんだろ。余裕なんてホントはないのに、今まで以上に可愛くならなきゃいけない気がして美容院に行って…そういう自分にこそ、余裕なくなってる。
麻綾と朔斗が異母兄妹だったってことも分かって、あたしだけ疎外された気分になって…何焦ってるんだろう。
…まさか…
自分の頭の中によぎった考えに、血の気が引いていくのが分かる。
でもそう思えば思うほど、本当のような気がして…
怖い。でも、いずれ知ることになるんだろう…
家に着いて、高校・大学時代の誠斗さんのアルバムを開いてみる。
そしてその隙間から、何枚か写真がはらりと落ちてくる。
その写真を見た瞬間、その疑いが事実であることを思うほかはなかった…。