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Sweet×Sweet  作者: 椎名璃月
30/31

Story 29;あのときも、今も

少々更新が遅くなりました。今回も予告通り亜稀×コウなのですが…亜稀×佑稀的要素が全開です(汗)回想のため作者語りです。


――3年前


「亜稀ーっ、テスト1位じゃん!初めて佑稀くん抜いたんじゃない?」

「友香おはよう、やっとだよぉ〜、親にずーっと早く佑稀に勝てるようになれって言われ続けてたんだもん」

「よかったじゃん♪これでやっとみ…」

「ちょっと友香ぁっ、やめてよっ、知ってるの友香だけなんだからっ」

 友香は一瞬拗ねたような顔をして、亜稀の耳元で囁いた。

「三矢航に告白、するんでしょ?」

 かぁっと顔が赤くなるのを感じた亜稀は、それが友香にバレないように顔を背けて『言うわけないでしょっ』っと言った。


 すると、友香のいる方からやってきたある人物に、頭を掴まれた。

「よかったなー、亜稀。オレ本気出しかけたから危ないかと思ってた。お礼は?」

「佑稀!ちょ、ちょっとぉ!言わない約束っ」

「そっかぁ〜、そういうことなのね、亜稀。優しい弟がいてよかったね。ファイトっ!」

「置いてかないでよ、友香ぁーっ!」



 大橋学園中等部校舎、2階。

 7クラスある教室の3組と4組の間に、2学期末テストの上位20名リストが張り出され、男子の白ワイシャツ・女子の黒シャツワンピースの落ち着いたモノトーンはすっかり周囲の雰囲気に負けていた。

 小中高大とエスカレーター式なだけあり、勉強では互いのライバル意識がとても強く、前回のトップ3がランク外なんてことも稀ではない。そんなハイレベルな中でを毎回のようにトップ争いに絡み、大概勝ってしまうのが亜稀の弟・佑稀だ。もちろん亜稀が不出来なのではなく、佑稀が出来過ぎるだけなのだが。

 その佑稀の今回の順位は、2位。1位は、亜稀。流石は双子というか、点差は3点だった。

「オレ天才じゃない?あんまり点差開いてたら怪しまれるもん」

「…ホントにやってくれると思ってなかった…」

「オレのこと信用してなかったわけ?…やるに決まってんじゃん、亜稀のためでしょ」

「ありがとう…っ」

「泣くなよ、学年トップが泣いてたら嫌味に見られるから」


 テストの2週間前に、亜稀は佑稀の好きなバターキャンディーを持って彼の部屋を訪れた。

「佑稀ぃ、今いい…?」

「あ、亜稀!?ご、ごめん、ちょっと待って!2分くらい!」

 亜稀は、言われた通りに2分待った。恐ろしく長い120秒だった。

「はぁっ…いいよ、亜稀…」

 その反応からしてとても亜稀には言えないことをしていたであろうことは亜稀にも簡単に解った。

「佑稀、お願いがあるの」

「亜稀が頼み事?いつものことじゃん、宿題見せてとか…やだよ」

「嫌ならお母さんに佑稀がさっきやってたことバラすよ?」

 その言葉と同時に亜稀は佑稀を睨み付ける。身長差20cmから睨まれるのは、佑稀にとってかなりの恐怖だということを亜稀はちゃんと知っているのだ。

「わ、解ったから!聞くから、部屋入ってっ!」

 3年前は、仲は良くも悪くもなかった。家では最低限の会話だけで、ケンカも多かった。双子だから、比べられるのが当然だった。テストの成績は佑稀が上。通知表は同じくらい。運動と芸術は亜稀の方が得意…。佑稀は教師と先輩に好かれ、亜稀は同級生と後輩に好かれる。“なんでも一緒”だったなら、こんな想いはしなかったと嘆くこともあった。姉なのに弟より出来が悪いと言われ続けた亜稀と、男なのに女より気が小さいと言われ続けた佑稀。そういうコンプレックスが深まる時期だ。

 実を言えば、亜稀が佑稀の部屋に入るのもずいぶん久しぶりだった。


「で、頼みって何」

「…単刀直入に言うと、次のテストであたしに負けてほしいの」

「八百長ってか?首席狙いにそーゆーこと言う?」

「解ってるよ!でもっ…」

「でも?」

「あたし、好きな人がいるの。でも、とてもお父さんとお母さんが許してくれるような人じゃないの…」

「うちの学年で考えたら三矢みたいなヤツ?F組の三矢航」

「…」

「図星?」

「やっぱ恥ずかしいぃっ」

 両手で顔を覆うと、亜稀は向かい合って座った佑稀から目を反らした。

「いまさら何言ってんの。…いいんじゃないの、亜稀が好きなら」

「へっ…?」

「1回くらいどうってことないよ。もし三矢と付き合えても、亜稀の成績が今のままオレを抜かせないんじゃ父さんと母さんに許してもらえないから、だろ?おまけに三矢みたいな全校屈指の不良じゃ」

「解って…くれるの?」

 佑稀は頷きながら、亜稀以外の女子に見せたらみんな魅了されてしまうような甘い笑みを見せた。

「あっ、あと、このことは誰にも言わないでね!お礼のバターキャンディーっ」

 少し訂正を加えよう、亜稀でさえも魅了されてしまうような笑みだ、と。

 なぜか照れて顔がまた赤くなってしまった亜稀は、逃げるように佑稀の部屋を飛び出した。




 こうして亜稀は学年トップを手に入れた。

 偽であってもトップをとったことで、亜稀は少し幸せに浸っていた。彼女をニヤニヤと見つめる影も知らずに、ただ三矢航のことだけを想っていた。




 その影が話す会話は、誰も知らないだろう。

「なぁ三矢ー、陥れようぜ、アイツ」

「…了解」

次回も亜稀×コウになりそうな予感です。というかなります。こんなに何週間も放置して、朔斗と麻依は大丈夫なのでしょうか…(笑)それではまた来週、お会いしましょう。

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