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Sweet×Sweet  作者: 椎名璃月
27/31

Story 26;消えていく


「な…なにか…あったの?」

「…いいから早く下に来て!!」

 こんな強引な麻綾は珍しい。よっぽどのことが起こったのだろうかと、あたしの心は焦る一方だった。


「…麻依ちゃん」

 佑稀先輩が階段の下まで来ていた。あたしは身長180cmを越える先輩と話しやすくするため、階段の1段目で止まった。

「宮入結架、って女の子…知ってるよな?」

「結架…ですか?知ってますけど…」

「その子の彼氏の永原柊のことも、だよね?」

「あの二人付き合ってたんですか!?しかもよりによって柊くん…」

「そこはどうでもいいの、麻依!その先なんだよ、問題なのは!!」

「…麻依ちゃん、落ち着いて聞いて。今まで学年トップはいつも、朔斗と結架ちゃんの争いだったことは解るね?でも最近、結架ちゃんの成績が落ち始めたんだ。現にこの前のテスト、1位は朔斗で2位は麻綾、3位は麻依ちゃんだっただろ」

「…はい」

「…結架ちゃんの両親、ものすごく厳しい人らしいんだ。2位でも怒られるくらいなのに4位なんかになって…今家に軟禁されてるらしい」

「そ…んな…っ」

「何で軟禁にまでするかって言ったら、簡潔に言えば永原柊がいるからだろ?会わなくすれば結架は勉強せざるを得ない、と考えたんだろうな。永原柊の成績は下から数えた方が早いくらいだから、そんな彼氏は認めないだろうし」

 淡々と、でも心苦しそうに語る佑稀先輩の想いは痛いほど解る。

「それは…でも結架、小学校のときからずっと柊くんのこと…!それに柊くんだって、1人の女の子とそんなに長続きしたことなかったのに…」

「解ってる。結架ちゃんに告白されたときの彼女への想いこそが…恋なんだって気付いたんだ、きっと。だから柊は…結架ちゃんを救おうとしてる。そのために、朔斗が必要らしいんだ」

「ど…ういう…?」

「柊は、朔斗がいるから結架が1位になれないって思おうと必死なんだ」


 その言葉をかみ砕くには、少し時間が必要だった。

「ってことは…」


 その先は怖くて、言葉にならなかった。

 それを感じたのか、佑稀先輩はその先を教えてくれた。




「刺されて…右腕の神経、やられたんだ。右の上腕骨も折れて…。あと、肋骨が3、4本…。あいつ…剣道続けられんのかな…。鉛筆…握れるようになるのか…?」


 佑稀先輩は涙ぐんでいた。

 でもあたしは涙も出なかった。 パパと麻友姉が死んだ日、お母さんは言った。


『人ってね、悲しすぎると涙も出ないんだよ…』




 初等部、中等部を首席で卒業した朔斗。

 高等部に入って3ヶ月、地道に自立への道を歩んできた朔斗。


 あと少し、だった。

 あと少しで、成績優秀者学費全額免除の対象になれた。

 あと少しで、朔斗の夢は――叶うはずだった。


 夢が叶ったら、ずっとあたしのそばにいてくれるはずだった。

 それが…朔斗が夢を叶えることが、あたしにとっても夢だった。


 なのにどうして。

 ナイフ1本に全てを奪われなきゃいけないの?




 目眩を感じたと思うと、あたしは意識を失った。

 誰かに受け止めてもらったのかもよく解らない。


 気が付くと、家のベッドに横たわる自分がいた。


「…よかった、目醒まして…」

 そこには麻綾がいた。

 ずっとそばにいてくれてたんだ…。

 そう思うと、安心感のような温かさが身体中を駆け巡って行くようで、なんだか優しい気持ちになれた。

 ありがとうって言わなきゃ。


 そう、思ったのに。




 あたしはそれを言えなかった。


 言葉なら見つかってた。


 でもそれを表現するための――




 『声』が、あたしの身体からは見つからなかった。

どんどん予定にないほど暗い方向に走って止まりません((汗 いつになったらプロローグに追いつくのだろうと恐らく椎名が1番心配してるんです!長いお付き合いになりそうですが、今後ともよろしくお願いします!!

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