Story 22;君の幸せ、僕の幸せ
悩んだのですが今回は短く済ませてしまいました。番外編としてちょっとしか登場しなかったあの子を書いています。…が、本編との矛盾が多々生じてしまうため(もとからのミスも含め)、本編の大幅な加筆・修正を行う予定です。かなり異なる点が出て来そうなので読み返していただけると幸いです。では本編へどうぞ!!
『佑稀先輩…お願いがあるんです』
『…部活のことか?』
『いや…』
言葉を選ぼうにも上手く浮かばない。だから…率直に言うしかなかった。
『…麻綾のことです』
『麻綾…の…?』
佑稀先輩の声が、弱々しくなったように感じるのは…気のせい?
そういえば、最近の佑稀先輩は病んでたかもしれない。
麻綾のことを想って、なのか…?
そんなことを思っている時間が煩わしくなって、言葉を続けることにした。
『…麻綾、帰ってくるんです。お母さんが…オレの伯母さんが、病気で倒れて。で…麻綾も、その病気になって死んじゃうかもしれないんです』
佑稀先輩が息をのむ音が、携帯のスピーカーから確かに聞こえた。
このままショックで電話を切られたら困る…!!
『――でもっ…佑稀先輩がそばに居たら、発症しなくて済むんです!!だから――麻綾が帰ってきたら、麻綾のそばに居てやってくれませんか…?』
『…なんで、朔斗が頼むんだよ?』
『それは…』
妹だから、なんて…本人も知らないことは言えない…。
『お前に頼まれなくたって…麻綾のことはオレが一生守るって決めてんだから』
いつも無口でクールな佑稀先輩の姿を一瞬忘れそうになるほど、力強く響く言葉だった。
『知ってます――オレの仕事は麻依を守ることですから。麻綾は佑稀先輩に任せるって決めてるんです。だから、オレから頼んでるんです』
麻依を愛してるから…
麻綾を守ることはオレには出来ない。
だから、麻綾を愛する佑稀先輩に――。
『お願いします…っ!!』
不意に涙が出そうになって、電話を切った。
…麻依に会いたい。
あんなに強く人を想う人がそばに居たら――負けたくないって思う。
「麻依…!!」
オレには他人事、なんてことは…ない。
親戚の危篤、母親の死の真相、自分に腹違いの妹がいたこと、そしてその妹も、命の危険にさらされているということ――。
いくら強くても、あの頃にはキツすぎる話だったろう。
いや、事実キツかった。
オレは鳥のさえずりを聞きながら、芝生の上に身体を横たえて目を閉じた――。
「…と、…くと?」
何故だろう。
あまりに想いすぎたのか…?
麻依の、声が聞こえる――。
夢…か…?
「朔斗っ!!風邪ひくよ!!」
身体を揺さぶられて目を開けると――愛しい愛しい麻依がいる。
「麻依…」
「朔斗、なんか怖い夢でも見たの…?」
「え…」
戸惑った声を出すと、麻依は顔を近づけて頬を舐めた。
「しょっぱいっ」
舌を出したままオレの好きな顔をした。
「麻綾ね、郁未さん見たときは泣いてたけど…でもね、佑稀先輩に慰められて、少し笑ってたよ。あの二人、郁未さんと雅さんのそばでキスしちゃってたし」
「よくやるなぁ…。オレらはムリだもんな」
「そうだね…」
そう言いながらも麻依を抱き寄せ、人差し指でそっと麻依の唇に触れ、少し焦らす。
「キス…して…」
辺りは暗いから、病室からも見えないだろう。
「麻依は…オレのモノ」
そう呟いてキスをする。
「あたしは…朔斗のモノ」
リピートして、オレと同じように麻依もオレにキスした。
「戻りましょうか、姫君?」
ひざまづいて右手の甲にキスをして、麻依が笑うのを見てから、歩き出した。
甘々な朔斗と麻依は書いてる自分が照れてきます…(笑)長くかかりましたが、いい加減朔斗と麻依を成長させないといけませんね。…というわけで、次回は少し成長した二人をご覧ください!!