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Sweet×Sweet  作者: 椎名璃月
15/31

Story 14;吐息


「遅いなぁ…」

 麻依は携帯を握りしめたまま、リビングのソファに座って映夕と誠斗の飲みかけた、ワインのボトルを眺めて、そう呟いた。

 やたら家の中に自分の声が響いて、余計寂しくなった。

 4人で住むのにだって広いくらいの家だから、1人でいるといつもの4倍広い気がする。

 時計の短針は、もう既に11と12の間を差しているって言うのに…

 家を出てから4時間近く経つ。いくらなんだって、遅い気がするし…連絡が一切ないのが、逆に怖い。

 

 静かなリビングに、突然携帯の着信音が響いた。

「もしもし!?」

「麻依?お母さんだけど…朔斗くんね、たいしたことはないらしいんだけど、肺炎起こしかけてるみたいで。とりあえず今日と明日は入院して、様子見るって。

 誠斗さんは病院に残ることにしたから、私はこれから帰るわ。お風呂はもう入った?」

「あ、ごめんまだだ」

「そっか、心配だったのね。家に着くまでしばらくあるし、入っちゃってくれる?先に寝ちゃってもいいわよ」

「解った、でも紅茶いれて待ってるよ。お母さんだって疲れたでしょ?」

「…ありがとう、麻依。じゃあミルクティーでお願いしようかしら」

「ミルクティーね。いいよ」

「じゃあ、後でね」

「うん、気をつけてね」

 パタンと携帯を閉じて、深い溜息を吐いた。

 お風呂に入って、また溜息を吐く。


 

 心配っていうより…苦しかった。


 せっかく解りあえた。

 やっと朔斗の側に胸張って居れる。

 今までのあたしからしたら今日ほど嬉しい日はない。


 好き。あたしは…朔斗が好き。 何度だって言ってきた言葉だけど、片想いだったあの頃とも、甘々な毎日とも、全然違う。


 気づくと指先を見つめていた。

 この手で今、触れることが出来たなら…。

 抱きしめられたなら…。

 心音が聞こえるほどの静寂。 何とも言えない虚無感。


 欲張りなのは解ってるの。


 付き合い出しのカップルだってここまで依存しないだろうに、あたしってば朔斗に甘えすぎ…。


 朔斗がそばに居ないだけで、気弱になる自分を捨てたかった。

 最初に別れたのは、そのためだったはずなのに。

 もし朔斗と兄妹だったとしても…耐えられるだけの強さがなくちゃ、一緒には居られない。

 朔斗の迷惑になるだけ…。


 スッと息を吸って、吐いた。

 お湯で湿らせたタオルを眼にあてて、赤く腫れた眼を戻す。




 …どうか、強くなれますように。

 ずっと、朔斗と居られますように…。




 タオルを外してそっと眼を開く。

 ほんの少しだけ、世界が明るく見えた。

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