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Sweet×Sweet  作者: 椎名璃月
11/31

Story 10;1番星

 こぼれそうになる涙をまた少し拭いた。

 1番星が見える。もう夜になりかけているんだ…

「…ごめん、付き合ってもらっちゃったな…。佑稀先輩に謝っといて」

「いいのに、そんな事。大丈夫だよ。それに、佑稀先輩は私の事だけじゃなくて朔斗の事もよくわかってるしね」

「なんか、明日部活で会ったら気まずいかも」

「だぁから大丈夫だって!じゃあまたね!」

「おぅ!じゃーな、麻綾!今日はサンキュ!」

「どういたしましてっ!」

 そんな会話が聞こえた。あたしは足を止めて、麻綾が向かってくるのを待った。

「…誰かいるの?…ま、麻依?」

「…うん、あたし。…麻綾、今いい?」

 まだ朔斗もそんなに遠くまでは行ってないだろうから、少し声を潜めた。

「全然いいよ。私も帰ったら麻依にメールしようと思ってたの」

「そっか。…ありがと」

「も〜っ、朔斗も麻依もぉ〜…見てたんでしょ?」

 う゛。痛いとこ衝かれた…

「うん…ごめん、ホント」

「何によぉ〜…どこまでどう言ったらいいのか、ホントにわかんないっ」

 怒ってるフリなのはわかってるんだけど、なんか…ツラい。

「麻綾が板挟みになってるのはホントに謝りたい…っ」

 あぁ…また涙出てきた。あたしってかなりワガママ、だよなぁ…

「…いいよ。麻依だっていっぱい悩んで決めたこと、でしょ?私に、麻依の決断が合ってたかなんて決める権利はないし、麻依が決めたことならきっと正しいんだって、私信じてるから。ね?…朔斗、傷つけたくなかったんでしょ?」

「うん…でも、でも…もし、朔斗があたしと別れた事で苦しんでるなら…間違ってたのかもしれない。今、こんなにお互いツラいじゃん…!」

「…麻依!しっかりしなよ!決めたんでしょ?こんな運命になるんだったら、あたしと朔斗は結ばれないんだって言ったでしょ?だから今ツラいのもいつかはなくなるはずなんだって…麻依が言ったんだよ。麻依がそれを信じなくなったら、私は何を信じればいいの?私だって…朔斗と麻依にはお互いの側にいてほしかったんだよ!」

「麻綾…」

 3歳のコドモみたいに、嗚咽を隠さないで泣きたかった。でもこうして夜を迎えるたびに、あたし達は少しずつオトナになっていくんだ。…叫びたい。

 

 …朔斗が、好きだって――――。


 さっき見つけた1番星は、もう他のきらめく星の中に紛れてわからなくなっていた。

 朔斗もそうやって、他の人の中に紛れてくれればいいのに――――。

「もう…ムリだよ…!」

 夜空の1番星は紛れるけれど、あたしの中の1番星は永遠に1番星なんだ…。

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