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プロローグ
花びら、ひらひら。
「花見はヒトも君らも変わんないんだねぇ。」
まだ、少し冷たい風。優しい日差しに温められても、身体は冷える。
ひざ掛けとコートで暖めているはずなのに、体温は根こそぎ奪われていく。
「騒がしいけれど、楽しそうだ。」
早朝の薄暗さ、舞い踊る白い着物の小人。
神社にいる巫女みたいな格好で、小さな小さな扇子を持って舞う。
木の下、凸凹とした地面でよく踊れるものだ。
可愛らしいというより、色っぽいその舞は綺麗で見惚れる。
寒さも忘れそうなほどに。いや、寒いのは寒いのだけれど。
チリン、チリリリ。
規則正しく鳴る、鈴。
扇子にでもついているのだろうか、ここからは見えない。
巫女の彼女を囲み、酒盛りする紅白の武者の顔も。
剣道の稽古をしているみたいな動きの少年の顔も、見えない。
花びら、ひらひら。
「私も参加できればいいのに。」
小さな祠、傍らにある若い桜の木。
ほんの少しだけ丘のように盛り上がったそこを囲む、小さな池。
犬の頭を持つ小さな神主。
彼に認められれば、私も混ざれるのだろうか。
あの、手のひらほどの大きさのモノたちの宴に。
咲き誇る花と響く鈴の音。