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「男子が2割の世界で普通にしてたら、どうやら大問題らしい」   作者: ゆう
5章

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第1話「翌朝」

第1話「翌朝」


(眠いな)

登校中、あくびを噛み殺した。

昨夜、ことみの相手をしていたせいで少し寝不足だ。

校門の近くに、白河さんがいた。

(あ、いた)

横に並びがてら、声をかける。

「あ、おはようございます。白河さん」

白河さんがびくりと肩を跳ねさせた。

そのまま数秒、固まっている。

「……っ」

ようやく僕の方を見たが、唇が微かに震えていた。

何かを言いかけて、言葉が出てこないような、そんな顔だ。

「……おはよう、ございます。崎山さん」

一拍、遅い。

あからさまな「間」があった。

「寝不足ですか?」

(反応が遅いな)

顔を覗き込んでみる。

白河さんの顔が、耳まで一気に赤くなった。

そのまま一歩、後ずさる。

「いいえ。そんなことは……ございません」

「ならいいです。お疲れ様です」

僕はそれ以上気にせず、校舎へと歩き出した。

昨日、あんなに「心配」してくれたから、少しは距離が縮まったかと思ったが。

(よくわからん)


昇降口で靴を履き替えていると、外から話し声が聞こえた。

僕が通り過ぎた後、白河さんが誰かに呼び止められたらしい。

下駄箱の影から覗くと、田辺が白河さんの前に立っていた。

死んだ魚のような目で、白河さんをじっと見ている。

「白河」

「……田辺さん。何か御用ですか」

白河さんは、一瞬で隙のない顔に戻っていた。

でも、指先がわずかに制服の裾を握っている。

「崎山に、何した」

「……何、とは?」

「あいつ、今日、普通だったぞ」

田辺の声は低く、重い。

地面を這うような冷ややかさ。

「あいつが『普通』を出すのは、相手を信用してる時だけだ」

「……え?」

「……深入りするなら、慎重にやれよ。あいつを壊すな」

田辺はそれだけ言うと、白河さんの横をすり抜けていった。

一人、校門の近くで立ち尽くす白河さん。

彼女は、熱を持った自分の頬を、両手でぎゅっと押さえていた。

(何の話だ?)

田辺が白河さんに文句を言っているように見えた。

「壊すな」って、僕のことか。

そんなにヤワな自覚はないんだが。

(まあ、田辺も疲れてるんだろう)

僕は下駄箱に靴を突っ込んだ。

ふと外を見ると、白河さんがようやく歩き出していた。

その足取りはどこか落ち着かない。

(あ、笑った)

一瞬、彼女が何かを思い出したように口元を緩めた気がした。

でも、すぐにいつもの厳しい表情に戻る。

(見間違いか)

僕は窓から見える中庭の木々を、ぼんやりと眺めた。

今日は数学の小テストがある。

そんな「普通」の予定を頭の中で整理しながら、僕は階段を上り始めた。

背後から、慌ただしい足音が追いかけてくる。

それが白河さんのものだと気づかないふりをして、僕はいつも通りの歩調で教室へ向かった。

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