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「男子が2割の世界で普通にしてたら、どうやら大問題らしい」   作者: ゆう
4章

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第3話「澪が怒る」

第3話「澪が怒る」


昼休みの購買は、戦場だった。

俺は人混みを避け、中庭のベンチに座る。

隣には、相沢ひなたがいた。

「ゆうくん、これ食べる?」

ひなたが、家庭科で作ったらしいクッキーを差し出してきた。

「いいのか」

「もちろん!」

(相変わらず、距離が近いな)

俺は一枚受け取り、口に運ぶ。

普通に旨い。

ふと視線を感じて校舎を見上げると、二階の廊下に白河澪が立っていた。

彼女は、手に持った書類を強く握りしめ、じっとこちらを見下ろしている。

目が合った瞬間、彼女は弾かれたように背を向け、影の中へと消えた。

(……なんだ?)


放課後。

昇降口へ向かう廊下に、澪がいた。

書類を胸に抱えている。

俺を見ると、彼女は足を止めた。

「崎山さん」

澪が口を開いた。

でも、続きがすぐに来なかった。

彼女の指先が、書類の端を小さく折った。

「はい」

俺は立ち止まり、言葉を待つ。

「……相沢さんと、よく話すんですか」

(なんでその話が出てくるんだ)

「昼に一緒に食べることが増えました」

俺は事実を答える。

「そうですか」

澪の声が、いつもより一段低かった。

視線が、俺の肩越しに廊下の先へと向けられる。

「……なんでもないです。失礼しました」

彼女は踵を返し、速足で去っていった。

スカートの裾が、鋭く空気を切る。

(怒ってた?)

(なんで?)

よくわからないまま、俺は廊下に一人残った。


翌朝。

教室に入ると、田辺がすでに席にいた。

彼はパンの袋をゆっくりと閉じ、俺を見た。

「昨日、白河さんに何か言ったか」

「聞かれたことに答えた」

「……それだけか」

田辺が目を細める。

「それだけだけど」

俺はカバンを机に置いた。

「はぁ……」

田辺が、深く、重いため息をついた。

(何か悪いことしたか)

「普通に答えただけなんだが」

俺が言うと、田辺は窓の外を見た。

「……そういうとこだよ」

(どういうとこだ)

田辺はそれ以上、何も言わなかった。

ただ、隣の席の松本が、俺と田辺を交互に見て、震える手で教科書を広げていた。

(やっぱり、よくわからん)

俺は一限目の準備を始めた。

教室の隅で、白河澪がいつもよりずっと丁寧に、一本結びの髪を整え直しているのが見えた。

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