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祈るほど魔物が強くなる世界で――好きなだけ祈れ。その分だけ俺が、殺してやる  作者: TERU


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第39話 喰らう大地と、狩る者たち

走っても、意味がない。


分かっている。


だが止まれば終わる。


「まだ来るぞ!!」


ロイが叫ぶ。


その瞬間。


――ドンッ!!


前方の地面が爆ぜた。


「前もかよ!」


リィナが舌打ちする。


左右。


後ろ。


全部、波打っている。


逃げ場がない。


完全に――囲まれている。


「止まれ」


俺が言う。


全員が止まる。


「……マジかよ」


ロイが息を吐く。


「逃げ切れねぇな」


ああ。


無理だ。


ワームは“地面そのもの”だ。


どこに逃げても意味がない。


その時。


横から、声。


「やっと分かったの?」


セフィア。


余裕の笑み。


だが、その足は止まっていない。


雪面を細かく蹴っている。


「遅いわよぉ♡」


「……お前も逃げてたろ」


俺が言う。


「ふふ」


否定しない。


その瞬間。


――ドンッ!!


足元が爆ぜる。


全員が散る。


ワームが突き上がる。


今度は“横薙ぎ”。


雪ごと削り取る。


「チッ……」


セフィアが初めて大きく距離を取る。


鎌を構える。


「……邪魔ね」


低く呟く。


その一言。


それで十分だった。


「こっちも同じだ」


俺は剣を構える。


視線はワーム。


セフィアじゃない。


セフィアも同じだ。


互いを見ない。


ただ――


“同じ敵”を見る。


次の瞬間。


動いた。


ワームが潜る。


来る。


「下だ!」


ロイが叫ぶ。


――ドンッ!!


真正面。


巨大な顎。


俺は踏み込む。


セラが背で息を呑む。


「今だ」


一瞬。


痛みが消える。


身体が軽くなる。


セラの祈り。


踏み込み。


深く。


重く。


大剣を振り抜く。


――ズン。


肉が裂ける。


だが、止まらない。


「硬ぇ……!」


ワームが暴れる。


その瞬間。


横から影。


セフィア。


「そこじゃないわよ」


鎌が走る。


――ザン。


浅い。


だが違う。


“筋”を断つ斬撃。


ワームの動きが、一瞬止まる。


「……そこか」


俺は理解する。


「リィナ!」


「分かってる!」


矢が飛ぶ。


同じ場所。


ロイが走る。


足元に潜り込む。


「こっちだクソ虫!!」


短剣を突き立てる。


暴れる。


地面が崩れる。


「ガルド!」


セラの声。


「行ける!」


俺は踏み込む。


二度目の祈り。


無茶だ。


だが今しかない。


「終わらせる」


全力。


大剣。


同じ“筋”へ。


――ズンッ!!


今度は深い。


切断。


ワームの身体が歪む。


悲鳴。


いや、地鳴り。


全体が揺れる。


そして――


崩れた。


巨体が沈む。


動かない。


雪が、静かに戻る。


風の音だけが残る。


沈黙。


誰も、すぐに動けない。


荒い呼吸だけが残る。


「……はぁ……」


ロイがその場に座り込む。


「マジかよ……」


リィナが弓を下ろす。


「やった……の?」


セラが小さく言う。


俺はワームを見る。


動かない。


「……終わりだ」


その瞬間。


――カツン。


軽い音。


振り向く。


セフィアが、立っていた。


血を浴びている。


だが表情は変わらない。


「いいじゃない」


笑う。


「思ってたより、ずっといい」


鎌を肩に担ぐ。


「気に入ったわ」


俺を見ている。


まっすぐ。


「今回だけは見逃してあげる」


リィナが小さく構える。


ロイも警戒を解かない。


だが。


セフィアは動かない。


「もっと楽しませてくれるまで、とっておきたいの」


くるりと背を向ける。


「次は――ちゃんと殺すわね♡」


止まらない。


振り返らない。


そのまま、白の中へ消える。


静寂。


風が戻る。


さっきまでの殺意が、嘘みたいに消える。


「……生きてるな」


ロイが言う。


「ああ」


俺は息を吐く。


痛みが、戻ってくる。


一気に。


「っ……」


膝が揺れる。


「ガルド!」


セラが支える。


「……問題ねぇ」


嘘だ。


だが立つ。


前を見る。


白の向こう。


まだ遠い。


だが――


道はある。


「行くぞ」


俺は言った。


「次は、逃げねぇ」


誰も何も言わない。


だが。


全員、同じ方向を見ていた。

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