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祈るほど魔物が強くなる世界で、祈る少女の代償を背負いすぎて最強になった剣士  作者: TERU


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第29話 理の番人と、ずらされた結末

主の死体の前。


夜風の中、

“俺”が立っていた。


同じ背丈。

同じ構え。

右手に大剣、左に剣。


鏡写しみたいな存在が、静かにこちらを見ている。


「……笑えねぇ冗談だな」


ロイが乾いた声で言う。


「世界は、最適解を選ぶ」


人型が口を開いた。

声まで、俺に似ている。


「死ぬべき者が死に、生きるべき者が生きる。

 それだけだ」


「ふざけんな」


俺は踏み込んだ。


――リミッターを、緩める。


世界が軽い。

だが今度は、制御する。


一段。

二段。


“切れる分だけ”。


右手の大剣が唸る。

縦一閃。


確かに――当たった。


だが、人型の身体が

“半歩”ずれる。


斬撃は肩口を裂いたはずなのに、

次の瞬間には浅い掠り傷に変わっていた。


「……チッ」


腕が軋む。

痛みはある。

だが、骨はまだ折れていない。


(帳尻か)


ロイが横から飛び出す。


「こっちだ!」


瓦礫を蹴り上げ、投げる。

狙いは命中じゃない。


視線。


人型の目が、ロイに向いた瞬間――


「今!」


リィナの声。


変化弓。

三射。


矢は途中で折れ、曲がり、

あり得ない角度から人型を襲う。


胴。

喉。

額。


――全弾、命中。


だが。


人型は、倒れない。


矢は刺さっている。

確かに深い。


それなのに、

血が“最小限”しか流れない。


「……っ、やっぱり」


リィナが歯を食いしばる。


「当たってるのに、殺せない」


人型が、ゆっくりと首を傾げた。


「理解が早いな。

 君は、危険だ」


次の瞬間。


人型の姿が、消えた。


「リィナ!」


俺が叫ぶより早く、

空気が爆ぜた。


――ズン。


衝撃。


見えない一撃が、

リィナの“胸”を貫くはずだった。


だが――


「……っ!」


リィナの身体が、

不自然に“横へ”滑る。


致命の一撃は、

鎖骨を抉るだけで終わった。


血が噴く。

だが、心臓は無事だ。


「……なに、これ」


リィナが息を荒くする。


同時に。


「――っ、あ……!」


セラが、膝をついた。


胸元。

新しい痣が、浮かび上がっている。


今までより、濃く。

熱を持ち。

痛みに、声が出ない。


「セラ!」


「……だい、じょうぶ」


震える声。


「ずらした、だけ……」


人型が、初めて目を細めた。


「ほう。

 “祈り”ではなく、“選択”か」


ロイが叫ぶ。


「おい! 今の、どうなってんだ!」


「……分からない」


リィナが血を拭いながら立ち上がる。


「でも、あいつ」

「私を、殺すつもりだった」


「そうだ」


人型が言う。


「君の矢は、理の外にある。

 放置できない」


俺は、剣を構え直した。


「なら、俺が前に出る」


「無理!」


リィナが叫ぶ。


「今の一撃、直撃してたら終わってた!」


「だから、調整する」


俺は一歩踏み出す。


リミッターを、

“さらに細かく”緩める。


切れる。

だが壊れない。


その境界。


人型が、再び消える。


「左!」


セラの声。


反射で、左の剣を振る。


――当たった。


今度は、ずれない。


人型の腕が、切断された。


だが次の瞬間、

腕は“元に戻る”。


「……再構築かよ」


ロイが舌打ちする。


「キリがねぇぞ!」


「あるわよ」


リィナが言った。


血を流しながら、

弓を引く。


「セラが、見てる」

「私たちは、合わせるだけ」


人型が、リィナを睨む。


「君は――」


「来る!」


セラの声。


だが今度は、

“方向”が違う。


「下!」


ロイが滑り込み、

人型の足元に瓦礫を叩き込む。


一瞬の停止。


「今!」


リィナの矢。


変化弓。

理の外。


人型の“影”を射抜く。


影が、縫い止められる。


「……っ!」


人型が、初めて呻いた。


「今だ!」


俺は踏み込む。


リミッター、解放。


――痛みが、爆ぜる。


右腕。

左脚。


骨が悲鳴を上げる。


それでも。


右の大剣。

左の剣。


交差。


――ズン。


確かな手応え。


人型の胸が、裂けた。


だが、まだ終わらない。


人型が、笑った。


「なるほど。

 “見える者”が、結果を固定するのか」


セラが、立ち上がる。


足が震えている。

痣が、焼けるように痛む。


それでも。


セラは、前を見た。


「……ここで」


小さな声。


だが、はっきりと。


「ここで、終わる」


祈りじゃない。

願いでもない。


断定。


世界が、

一瞬、止まった。


人型の動きが、固まる。


「……馬鹿な」


俺は、最後の力を振り絞った。


リミッター、全解放。


――骨が折れる。


それでも、

剣は、振るえた。


一閃。


今度は、ずれない。


人型の身体が、

真っ二つに裂けた。


光が、散る。


人型は、

後退る。


「……帳尻は、また別の形で」


そう言い残し、

霧のように消えた。


静寂。


俺は、膝をついた。


剣が、地面に落ちる。


「……終わった?」


ロイが、息を切らす。


「撤退しただけ」


リィナが答える。


「でも……勝ちだよ、これ」


セラが、崩れ落ちる。


俺は、支えた。


「無茶しやがって」


「……だって」


セラは、笑った。


「みんな、まだ生きてる」


俺は、空を見上げた。


屋根の上で、

輪郭のない揺らぎが吠えた。


「っち、またあいつか」


「おい、リィナ、ロイ!」


「?」


「お前らも印付けてもらえたみたいだな」


「うわ、さいあく」


「おいおい、何の話だ?

冗談はやめてくれよな」


「お前もこっち側、ってことだ」


「おいそれ笑えねーって。あれが今度は三体かよ」


「さあな。お前も人間やめろよ」


「……。」


鐘は、もう鳴っていない。


だが――


世界は、

確実に、こちらを見ている。


帳尻は、

まだ終わっていない。


それでも。


俺は、呟いた。


「次も全員で殺る」


セラは、小さく頷いた。


戦いは、

次の段階へ進んだ。

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