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祈るほど魔物が強くなる世界で、祈る少女の代償を背負いすぎて最強になった剣士  作者: TERU


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第24話 食う側と、食われる側

グリフォンの生態地は、街道から半日ほど北にあった。


岩が剥き出しの高地。

木は育たず、風だけが通り抜ける場所。


「……相変わらず、嫌なとこ住んでるわね」


リィナが空を見上げて言う。


「知ってんのか?」


「場所は違うけどね、いつもこんなん」


足元には、白くなった骨。

大きさはまちまちだが、どれも噛み砕かれた跡。


折れている。

……切れている?


「……ねえ」


リィナが足を止めた。


「なんか違う奴が混じってない?」


「さあな」


俺は剣の柄に手をかける。


骨の切断面が、妙に綺麗だった。


(……噛み跡じゃない)


爪か?

いや、それにしては――


「グリフォンは、こんな喰い方しない」


リィナの声が低くなる。


「基本は掴んで、落として、砕く。

 首は……残る」


「じゃあ、これは?」


「……知らない、でも……」


風が強くなる。

羽音じゃない。

もっと、重い音。


空気が、冷える。


「ガルド」


「気づいてる」


視線を上げる。


空は、やけに広い。

雲が流れ、何もいない。


だが――


“いない”のが、おかしい。


「静かすぎる」


「……ああ」


グリフォンの縄張りなら、

普通は威嚇か、影がある。


なのに、何もない。


(……上に、さらに上がいる)


胸の奥が、じわりと重くなる。


リミッターが反応しない。

危機なのに、軽くならない。


「なあ」


俺は言った。


「グリフォンじゃないかもしれん」


リィナは、一瞬だけ目を伏せた。


「……分かってる」


弓を握る手に、力が入る。


「でも、引かない」


「同感だ」


高地の奥。

切り立った岩壁の向こうで、


羽音がした。


空が、動いた。


思ったより低かった。


羽ばたきの音。

風を裂く影。


「来るぞ!」


「グリフォン」


「こいつが!?」


旋回し、急降下する。

翼の圧で、地面の砂が跳ねた。


「右!」


リィナの声と同時に、矢が放たれる。

空中でわずかに軌道を変え、翼の付け根に突き刺さった。


グリフォンが吼える。

高度が落ちる。


「今だ!」


俺は踏み込んだ。

鎧が軋む。

一瞬だけ、身体が軽くなる。


(……今だ)


剣を振り上げ――


その瞬間。


空が、暗くなった。


影じゃない。

“重さ”だ。


風の質が変わる。

羽音が、一段低い。


「……は?」


リィナの声が、遅れて届いた。


次の瞬間、

グリフォンの首が、空中で“ずれた”。


斬撃音はなかった。

血が噴く前に、頭が落ちた。


遅れて、胴体が痙攣する。


「……なに」


言葉が、意味を成さない。


上から、何かが降りてきた。


羽。

だが、グリフォンより細い。

影は長く、輪郭が鋭い。


前脚。


――爪。


剣だった。


刃物みたいに平たく、

関節ごと“切る”形をしている。


その爪が、

首を失ったグリフォンの胴体を掴む。


地面に落ちない。


そのまま、空中で。


――喰った。


肉を裂く音。

骨が折れる音。


血が、霧になる。


俺たちは、

完全に無視されていた。


「……っ」


リィナが、動かない。

呼吸を止めたまま、弓を構えることすらできなかった。


目を逸らしている。

弓を握ったまま、

指が震えている。


「……こいつ」


声が、掠れてる。

因縁があるのか……。


捕食者は、

こちらを一度も見なかった。


食事が終わると、

翼を一度だけ打ち、

夜空へ溶ける。


残ったのは、

落ちた首と、血の匂いだけ。


「……グリフォンが」


俺は、ようやく声を出した。


「狩られた……?」


リィナは答えない。


ただ、唇を噛んでいた。


リミッターが、ざわつく。

だが、さっきみたいに軽くならない。


――相手が、違う。


「……帰るぞ」


俺は言った。


「今は、勝ち筋がねぇ」


リィナは、ゆっくり頷いた。


夜空には、

もう何もいなかった。


だが確かに、

“空の頂点”を見た。


グリフォンじゃない。

飛竜でもない。


空で首を落とし、

地に落ちる前に喰う者。


あれが、生き物だ。


祈りの代償だけじゃない。

この世界には、あんな化物までいやがる。


「今はグリフォンの首だけ、回収しよう」


――本来なら、俺が斬っていた。

そう思える程度には、近づいていた。

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