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祈るほど魔物が強くなる世界で、祈る少女の代償を背負いすぎて最強になった剣士  作者: TERU


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第22話 鎧と約束と、少しだけ遠い未来

数日が経ち、ようやく身体が言うことを聞くようになった。


完全ではないが、歩ける。

剣を振るのはまだ無理だが、立って外に出るくらいなら問題ない。


セラは祈堂学舎に戻り、

リィナは報酬の受け取りと諸々の交渉を引き受けてくれていた。


「……で、聞いて驚け」


診療所の外、日陰で腕を組んだリィナが言う。


「あんだけ苦労したのに、報酬二百万ルクだって」


「まあ、十分だろ」


「は?」


即座に睨まれる。


「何言ってんの?

 あんた、死にかけ……じゃないわね。死んでたし」


「特殊個体ではあるけど、被害がそれほど大きくないってのが

 調査団の見立て」


リィナは鼻を鳴らした。


「あれで三百万以下は信じられない。

 どうも裏でカルディアスが動いたみたい」


「……なるほど」


「で、あんたの診療費」


嫌な予感がした。


「百・万・ル・ク」


「たけぇな」


「大したことしてないくせにね」


「はい。これ」


リィナが革袋を放って寄越す。


「六十万ルク」


「診療費は?」


「払っといた」


「はあ?

 診療費差し引く前の六対四だろ」


「違う。そこ、きっちりしないとダメ」


即答だった。


「経費は引いてからだし。

 セラちゃんの学費。

 あんたの鎧。

 金はいくらあっても足りないでしょ?」


「……それは、そうだが」


「鎧代には足りないけどね」


「悪いな」


「いいわよ。

 あんたじゃなきゃ、こっちも死んでたし」


少し間を置いて、リィナは続けた。


「動けるようになったら、バシバシ働いてもらうから」


「そうだな」


「で、これからセラちゃん迎えに行くんでしょ?」


「ああ」


「鎧買いに行くの、付き合うわ」


「いや、大丈夫だ」


リィナが睨む。


「あんたとチンチクリン二人で行って、

 カモられないとでも思ってんの?」


「……頼む」


「ふん」


***


祈堂学舎。


先に月謝を払い、その足でセラのクラスへ向かった。


「邪魔するぞ」


扉を開けた瞬間、空気が止まった。


「……?」


視線が一斉に集まる。


「ちょ、ちょっと! いきなりなんですか!」

「あなたは……ガルドさん?」


以前、木を切った教師だった。


「何しに……」


「セラを借りてく」


「え?」


「セラ、行くぞ」


「え? でも、え? 本当にいいの?」


「いいに決まってんだろ。

 今月の月謝、払った」


「そういうものなの?」


背後でざわめきが起きる。


「おい、今の……」

「首狩りの剣士じゃね?」

「本物?」

「セラさん、知り合い?」


「じゃあな」


教師の制止を無視して扉を閉める。


バン。


「ねえガルド……本当に大丈夫?」


「心配しすぎだ。

 客なんだから問題ねぇ」


「……そっか」


「やっほ、セラ」


「リィナさん」


「リィナでいいよ。

 うちも付き合うから」


「うん」


***


鎧屋。


店主は最初から胡散臭かった。


「こちらは王国騎士団御用達でして!」


「へえ」


「素材は軽く、装飾は一級品!」


値札は二百万ルク。


セラが目を輝かせる。


「すごい……」


「やめときな」


即座にリィナが言った。


「縫い目が甘い。

 内側の革も古い。

 見た目だけ」


「な、何を仰る!」


「実戦じゃ一撃で裂けるわよ、これ」


店主が言葉に詰まる。


結局、奥から出てきた本物の鎧は、

無骨で、飾り気もなく、重かった。


「……これで二百万?」


「命預けるなら、こっち」


ガルドは少し考えて、頷いた。


「これにする」


リィナが得意げにいう。


「うちがいなかったら、大変な事になってたね」


「ああ、助かった」


「よろしい、それじゃあうちも行きたいとこあるから」


「リィナありがと」


「セラも勉強頑張りなね。じゃね」


***


リィナが行った。正直かなり助かった。


買い物の後は、街をぶらついた。


屋台の串焼き。

甘い焼き菓子。

セラはどれも初めて見るものばかりで、

そのたびに目を輝かせた。


「美味しい……」


「良かったな」


人混みの中、ガルドは小さな店に立ち寄った。


祈堂用の白い手袋。

刺繍は控えめで、丈夫そうなもの。


「……これ」


「え?」


「使えるだろ」


「……ありがとう」


セラはぎゅっと手袋を握りしめた。


***


祈堂学舎に戻る途中。


ドン、と肩がぶつかる。


「おい」


「……あ?」


「その態度、何様だ」


見れば、胸に見慣れない紋章。

六の文字。


「我々は王国第六騎士団。

 こちらは第六団騎士団長、リューズベルク様だ」


「長ぇな」


「貴様……!」


「もういい」


団長が一歩前に出る。


「女、腕を見せろ」


団長が腕を伸ばす。

が、俺が静止する。


「勝手に触んじゃねーよ」


睨み合いが続く。


「その顔、覚えたぞ」


「勝手にしろ」


騎士団は去っていった。


「なんか嫌な感じだったね」


「放っとけ」


よくわからない連中に絡まれながらも、無事に祈堂学舎前に戻る。


「今日はありがと」


「楽しかった」

「また行こうね」


「ああ」


「約束だよ」


「約束だ」


セラは振り返りながら、学舎に入っていった。


世界は広い。

面倒で、理不尽で、優しくもある。


だが今はまだ、

約束を守るだけでいい。


次に会う時も、

ちゃんと歩いて迎えに行けるように。


***


「セラさん」


「なんですか?」



「あなた謹慎です」



「えっ……ガルド……」


この世界は優しくない。


***


王国首都ブリュンガルデ


「おい、祈り人はどうなってる」


「陛下、申し訳ありません。ただいま第六騎士団に捜索させております」


「何故、第一騎士団に行かせないのだ!」


「ただいま国境付近で連合国との睨み合いが続いています。そのために第六騎士団に」


「連合国め。まあ良い。それも祈り人を手に入れるまでよ」


「必ず連れてこい。間違っても壊すなよ?」



祈るほど、魔物が強くなる世界で


第一部完


──好きなだけ祈れ。

その分だけ俺が、殺してやる。




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