表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祈るほど魔物が強くなる世界で、祈る少女の代償を背負いすぎて最強になった剣士  作者: TERU


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/24

第14話 首と帰還と、救われた側の話

俺が街に戻ったのは、朝だった。


正確には、朝になっていた。

時間の感覚は、森と洞窟に置いてきた。


ズル……ズル……。


縄が石畳を擦る音が、やけに響く。


後ろを振り返らなくても分かる。

繋いだ頭が、まだ続いている。


数は数えなかった。

途中で意味がなくなった。

途中でいくつか逃げてった。


「……案外、早く戻れたな」


独り言が、空に落ちる。


一番時間を食ったのは、

首を刈って、証拠として揃える作業だった。


殲滅より、そっちの方が骨が折れた。


街の門が見える。


門番が、俺を見て固まった。

視線が、俺じゃなく、その後ろを追っている。


通さない理由は、なかったらしい。


いや、慌てて街の中に消えていった。


街は、俺を通した。


***


――私が、助けられた時。


正直に言えば、

最初は、分からなかった。


音がして。

風が鳴って。

何かが、壊れた。


それだけだった。


吊るされていた縄が切れて、

地面に落ちた時、

痛みより先に、匂いがきた。


血の匂い。

獣の匂い。

人のものじゃない匂い。


「……あ」


声が出なかった。


目の前にいたのは、

人だった。


でも、人じゃないみたいだった。


大きな剣。

血まみれ。

息が荒いのに、目だけが冷えている。


「……生きてるな」


そう言った。


確認するみたいに。

物を見るみたいに。


その時、私は思った。


――この人、私たちを助けに来たんじゃない。


ただ、そこにいた“敵”を殺しに来ただけなんだって。


でも。


それで、よかった。


その後は大変だった。


幸い年上のサチも、気丈なカナエも生きていた。


三人で喜んだのもつかの間。

地獄が始まった。


「悪いがコイツらの首刈るの手伝ってくれ」


「剣は貸してやる。残りの二人でロープを通せ」


どっちを選んでも地獄だから、代わる代わるやることにした。


拒否権は……なかった。


***


俺は街に入場する。

やたら街人の視線を感じたが、どうでもいい。


ギルドに首を放り投げた。


「……ゴブリン調査と殲滅だ」


俺は言う。


「証拠」


ミルダが、しばらく動かなかった。


「……正気ですか」


「何がだ」


「……いえ」


「数は?」


「百から先は数えてない」


嘘じゃない。


途中から、頭は頭じゃなくなった。

ただの“作業”だった。


周りが、ざわつく。


俺は気にしない。


報酬と書類。

それだけでいい。


***


私たちは、

強くなったと思う。


正直あの作業は良かったと思ってる。

助けられて終わりだったら、

立ち直れなかったかもしれない。


村までの道を、

その人の後ろを歩いた。


「あの、頭が……」


「行きたいやつは、行かせろ」


途中で、頭が転がっていったけど、

その人は気にもしてなかった。



それ以上話しかける勇気は、なかった。


夜、

焚き火の前で、

私は思い切って聞いた。


「……あなたは、冒険者ですか」


その人は、少しだけ考えてから言った。


「今は、そうなってる」


「私たち強くなります。あなたみたいに」


「そうか」


否定も肯定もしなかった。それがうれしかった。


***


ギルドを出て、

縄を解く。


頭が一つ、転がる。


「……終わったか?」


自分に聞く。


答えは、出ない。


終わった気がしない。

何かが、確実に増えた。


それは、

頭の数でも、

金でもない。


もっと、面倒なものだ。


***


別れ際、

あの人は、私たちを見なかった。


ただ、言った。


「ドルガによろしく」


それだけだった。


ありがとうも、

気をつけろも、

いらないみたいだった。


でも――


私は知っている。


あの人が、

振り返らなかったのは、


見たら、

また何かを背負うからだ。


私たちは強くなる。


***


俺は、剣を背負い直す。


街は静かだ。

だが、視線は消えない。


「……また、通さねぇつもりだな」


世界に向かって、吐き捨てる。


いい。


拒むなら、

斬る。


それだけだ。


俺は歩く。


救ったかどうかなんて、

どうでもいい。


俺は、戻ってきただけだ。


ただ――

それだけじゃ終わらないみたいだ。


調査団団長が、こちらへ来た。

目が笑ってない。


一歩、

また一歩近づいてくる。


門番が消えた理由が、今わかった。


この街で一番怖いのは、魔物じゃない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ