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祈るほど魔物が強くなる世界で、祈る少女の代償を背負いすぎて最強になった剣士  作者: TERU


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第11話 森の知恵と、助ける理由

ドルガの言った通りだった。


あれから一日、山脈に沿って進むと、地形が変わった。

空気が重くなる。

湿り気を帯びた土の匂い。

視界を遮るように、木々が密集し始める。


――森だ。


「……嫌な場所だな」


思わず、独り言が漏れた。


山でも魔物とは散々やり合ってきた。

だが、この森は違う。


ただ危険なだけじゃない。

“考えている”匂いがする。


足を踏み出すたび、注意深く地面を見る。

枝の並び。

土の盛り上がり。

不自然な葉の重なり。


「……罠だな」


一つや二つじゃない。

幾重にも張られている。


しかも、雑じゃない。

人を追い詰める配置だ。


「ダミーまで仕掛けてやがる……」


舌打ちする。


ゴブリンに、ここまでの知恵があるとは思っていなかった。

まるで――


「……森の中で、師匠とやり合ってるみたいだ」


ゼットの顔が、脳裏をよぎる。

踏み込めば刈られる。

待てば詰められる。


村娘には悪いが、ペースは落とすしかない。


***


ガサガサ、と音。


反射的に身を伏せる。


――人の気配だ。


耳を澄ますと、かすかな呻き声が聞こえた。


「……ん……ぐ……」


声を出さないよう、必死に抑えている。

だが、相当痛いはずだ。


そっと近づく。


見えた。


男だ。

村の男だろう。


足に、猛獣用の罠が食い込んでいる。

血が止まっていない。


「おい」


低く声をかける。


「そのままだと死ぬぞ」


男は目を見開き、必死に息を整えながら言った。


「はぁ……はぁ……た、助けてくれ……」


「そう言われてもな」


俺は罠を見下ろす。


「これ外すか、足を切るかだ。

 どのみち、この足は使い物にならない」


男の顔が、青くなる。


「……頼む……外す方で……」


「……チッ」


面倒な方を選びやがって。


俺は罠に手をかける。


「騒ぐなよ」


「……う、うん……」


ガチャ……ガチャ……。


力を込める。


ガキィィッ!


「いでぇぇぇぇ!!」


「静かにしろ!!」


男は歯を食いしばり、必死に声を殺した。


罠が外れる。


血が溢れ出す。


「……助かった……」


「まだだ」


俺は布を投げる。


「止血しろ。

 それから、この木を杖にしろ」


近くの木を折り、手渡す。


「川が近くにある。

 足を洗って、真っ直ぐ帰れ」


男は震える手で受け取った。


「……すまない……」


「で?」


俺は聞いた。


「何があった」


男は俯いた。


「村の男達と……女を助けに来た……」


「だが、このざまだ……」


「他の連中は先に進んだが……

 その後、悲鳴が……」


「……そうか」


俺は背を向ける。


「お前を街までは連れていけない」


「分かってる……」


立ち去ろうとした、その時。


「あの……!」


「なんだ」


「女達が……もし、生きていたら……

 助けてやってくれないか……」


俺は、少しだけ立ち止まった。


「分かってる」


振り返らずに言う。


「ドルガと約束した」


「……ありがとう……」


それ以上は聞かず、俺は森の奥へ進んだ。


***


しばらく足跡の方向に進む。


森の空気が、さらに濃くなる。


足音を消し、息を殺す。

ゴブリンが、もう俺を“警戒している”のが分かる。


――あった。


岩肌に口を開けた、洞窟。


「……最悪だな」


逃げ道が限られる。

音も反響する。


見張りは五匹。

木の上に弓が二匹。


「……配置がいい」


雑じゃない。

経験を積んだ相手だ。


だが――


「気づかれてない分、こっちが有利だ」


距離を測る。


弓は厄介だが、この距離なら――


「……師匠の得意な距離だな」


思い出す。

――弓は糧だ。生きる為に覚えろ。

――風を読め。

――狙うな、通すな。


深く息を吸う。


弓を構える。


「……行くぞ」


まず、木の上。


風向き、確認。


連射。


一本、二本。


弓使いが、音もなく落ちた。


そのまま――


見張り二匹。


倒れる。


残りは、斬る。


「――」


踏み込む。


ここから先は――


未知の領域だ。


そして、この森は、

まだ何も終わっていない。


洞窟の奥から、

「女の悲鳴」が聞こえた。

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