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12.名の有る物語 後編

〝そして月の女王が世界を照らすと、輝きはきっと自分の世界を語るだろう〟


 ルミカは当初の目的である城の中に入る方法を見つけるため、また仕事を探し、働きながら考えることにした。


 そしてある日の事、見習いの女性が宿屋にやってきた。


「ルミカさん、もしお時間がありましたら今夜、街の入り口で待っていてくれませんか?」


 彼女の口ぶりからどうやらカバンが直ったという話ではないことらしい。


 月の綺麗な夜、ルミカは町の入り口へ向かうとそこには自分のカバンを持った女性が立っていた。


「ルミカさん、あなた東の国の王族ですよね?」


 急にその言葉を投げかけられたルミカは少しびっくりした。


「これ、このカバンを修理している時、ツグハさんに見て貰ったんです。そしたら」


「作り方が東の国のやり方、そして何よりも使っている布地の品質は王族が使うものだ。だからお客は王族かもしれないと、そう言われました」


「なるほど・・・。そうか」


 ルミカは別にかくしたかったわけではなかった。伝える必要が無いから言わなかったのである。けれど、彼女はこちらを向いてあることを言った。


「私を迎えに来てくれたのはあなたですか?」


 その言葉にルミカは時間が止まってしまったのかと思った。そして彼女は胸に掲げていたペンダントを外すと手のひらの上に置き、ルミカに見えるように差し出した。


「これ、求め合う指針です。西の国に伝わる大事なモノ。月の輝きを受け、そして持つ者の道を指し示します」


 彼女は勤めているカバン屋を指さした。


「しばらくまえ、東の国の王子を待つのが決まって、母上にこれをもらったとき、このペンダントはあのカバン屋を指し示しました」


「だから私はあなたと同じように、身分を明かさずに見習いとして働くことにしたのです」


 ルミカは少し考えるとあることを思い出す。


「・・・あなたのお名前は?」


「私はカリン。西の国で東の王子を待つ者です」


 確かに。カリンはルミカが迎えに行く予定の王女の名前だった。


「ではあなたが・・・私の迎えに行く相手」


「そうです」


 2人は事情を話すため、ツグハの元を訪れた。2つの国の王子と王女。それを目の前にしてツグハは戸棚から有るモノを取り出し、持ってきた。


「これは?」


 ルミカがそう聞くとツグハは腕を組んで2人を見つめる。


「昨日のこと、紫色のローブを着た人物がやってきて、私に言伝を頼んできた。ここに2人の旅人が居る。けれど、彼らは訳あって身分を明かしていない。けれど、もし、明かすことがあればこれを渡して欲しいと」


 そういって差し出された布に包まれたものを手渡されたらしい。


「・・・これは開けてもいいですか、ツグハさん」


「もちろんだ」


 ゆっくりとカリンは布を開く。すると出てきたのは銀色でできた見事なペン。そして同じ素材で作られたであろう絵筆だった。


「ペンは男の方に、そして筆は女の方に渡して欲しいとそう言われた。これはキミたちのものだ」


 2人はツグハからモノを受け取ると帰路につくことに。


 東の国に着くとルミカはカリンにあることを伝える。


「今回、カリンを迎えに行ったことであることが分かった。私は世界の事をなにもしらない。だからこそ知る必要がある」


 彼ら2人は城ではなく、街に住むことにした。


 やがてルミカは世界で起きた出来事を銀のペンで描く仕事に、そしてカリンは西の街で学んだカバン作りを続け、カバン職人になった。


 それからしばらくした雨の降る朝方。2人のいる店にある人物がやってきた。


白いローブを着た人物。その人はルミカにこう告げる。


「銀色の絵筆、それがここにありますよね?」


「ええ・・・ありますけど」


 ルミカは大切にしまっておいた銀の絵筆をその人物の目の前に出す。すると彼はローブをとり、ルミカの方を見た。


 その目はオッドアイ。見事な色をした青と紫をたたえていた。


「もしよかったら、ここで絵を描かせてくれませんか。その銀の絵筆を使って」


「・・・もちろんいいですとも」


「ありがとうございます」


 そしてその日を境に、ルミカと白いローブの人物が描くものは、カリンの作ったカバンに入れられて世界に配られることになった。


 それは人々から「輝き」と呼ばれるようになっていく。


「・・・キミの名前を教えてくれないか。そう言えばきいていなかった」


とルミカがそう聞くとローブの人物は笑いながら答えた。


「あなたが付けてください。・・・あの日と同じように」


 ルミカはそれを聞くと銀のペンを手に持った。


おしまい。

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