7.決意は歩く
「なんか、しんみりしちゃったね」
と私がリンリンに言うと彼女は少しだけ笑う。そして私は知っている、リンリンがこういう雰囲気があんまり得意でないことも。
「外いこ、外。コンビニ」
「この時間に?」
「そう」
そういって立ち上がると彼女は玄関に向かって行ってしまった。私は肩に乗っているアヤカを見る。すると彼は「僕はこのまま肩にいるよ」とそう言って動かない。
仕方がないので私は立ち上がるとリンリンの後を追っていくことに。
「・・・雨が上がっていい空気」
階段を下りて1階へ。駐輪場にはリンリンの見慣れた自転車が止まっているのが見える。
「今もあそこに住んでるの?」
「もちろん、美香が大学卒業するときに見つけたとこに今でも住んでいるよ」
「・・・あそこから自転車できたの?結構距離あるでしょ」
「そう?大したことないと思うけど」
そんな他愛もない会話をしながら近所にあるコンビニへいくと、流石は田舎。誰も客のいないコンビニに店員さんが1人だけいるこの景色。私は似たようなのを見たことがあるなと大学生の時を思い出していた。
「ジュース、いつものでいいでしょ」
「うん」
というのも時折、リンリンはこうやって私を夜連れ出してはコンビニにやってきてはジュースを買ってくれていた。多分きっと家賃もそこそこ払えず、食費も私と一緒に食べていて、それで彼女なりに何かは返さないといけないだろうと思っていたのかもしれない。
勝手に住み着いているのを何か申し訳ないと感じていたのかもしれない。
普通なら住み着いて欲しくない、とか家賃を払ってもらいたいとか思うのかもしれないけれど、私はそう思わなかった。
何というか、何なんだろう、きっと多分「自分のやりたいことを追い求めている人」っていうのが近くに居て欲しかったのかもしれない。
私たちはそのまま公園へ向かって行くことに。
「実はこの時間は誰にも会わないから、いつも散歩してるんだ」
「そうなの?」
「うん」
靴の音が道路に響くだけ。それだけしか音がない。確かにいいかもしれない。誰にも会うことのない散歩道。
近所にある公園は、公園とは言いつつも結構色んな設備が備わっていて、凄く大きな遊具とか野球場、それからテニスコートなんかもあるそんな場所。
きっと休日には家族連れなんかが遊びに来たりしているんだろう、とかそんなことを思うわけで。
公園に着くと私とリンリンはベンチに向おうとしたのだけれど、その時、アヤカが私の肩から飛び立った。
さっきまで大人しくしていたのに急にどうしたのかと思えば向かった先は水を飲める水道がある場所。
なるほど、水を浴びたいのかもと私は思ったのだけれど、自動的に水が出ればさすがにリンリンに説明しなければいけなくなるため私は手を洗うふりをしてアヤカに水をかけることにした。
それに満足したのか彼はそのまま私の肩に戻ることはなく、そのまま遊具の上に飛んでいき、色々みて回っていた。
買ってきたジュースを手に持ち、プルタブを引っ張って開けたら急にリンリンが「こういう時は乾杯するべきでしょ」
と言ってきたので私は仕方なくリンリンと乾杯をしてジュースを飲み始める。
「私は私の世界を描く、だから美香は美香の世界を描けばいい」
「どしたの、急に」
「ふふん、これが私の名言になる。数十年後にね」
リンリンは夜空を指さした。
「私、今すごく楽しいし、うれしい。だって、ようやく同じ仲間に出会えたんだから」
なんだろうか、私は彼女のその言葉にものすごい・・・なんて言えばいいのか分からないが薄いものでなく、今までの決意の積み重ねを感じる。
彼女もきっと、ここまで1人だったのかもしれない。
「私はたった1人で、誰にも認められず、誰からも見向きもされないことをしてきた。けれど、それは私の生き様で、それがどうなるかわからないけど、私は私だって言うことでしっかりと生きて生きたかったからさ」
「・・・あの時のままだね、リンリンは」
「そういう美香もあんまりかわってないきがするけどね」
そんな他愛も無い会話は続いていった。




