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12.香実

「ここまで来れば何となくわかるかもしれないけれど」


 とツグミは私の方を見た。


「アヤカの力を含めて、私たちの力は〝何かを通す〟ことによって実体化というか実行力を持つ」


「美香やリンリンが使っているようなペンやクリスタル。そんな感じのモノだ」


「それは何を示しているか、というと簡単な話で私たちは私たちに力を使っても何も起きないということ。つまりこのままではアヤカは別の世界に行くことが出来ない」


 なるほど。それはアヤカ自身を別のモノを通すことで出来るようになるのだろうか。それは私の持っている力、アヤカの事をこの白い紙に描けば、彼はそこからさっきと同じように成分を見て、その植物の種の中へ行くことが出来るのかもしれない。


 という風に私は考えたのだけれど、どうやら別なようで。


「もっと物事はシンプル」


 ツグミは窓の方を指さした。


「本来であれば、アヤカは別の世界の美香に何か渡すモノがあってやってくる。それは私もそのつもりで送り出したし、アヤカ自身もそのつもりで行くことにした」


「・・・そうですね」


 アヤカがツグミの言葉に返事をする。


「けれど1つ、美香。キミの優しさが出たんだ」


「・・・優しさ?」


 それはなんだろうか?ベランダに生えたドラゴンを部屋に入れたことだろうか。

「そうじゃない、本来与えるべき存在が1番最初、美香に〝与えられた〟モノが有る」


「・・・もしかして名前?」


 アヤカは私の方を見て言葉を紡ぎ出した。


「そうです。もう何となくお分かりでしょうけど、私達には名前は付けられていません。それは人の世のモノだからと」


「だから私は美香さんに初めて出会った時、名前を聞かれても何もできなかった。でも、あなたは私の為に名前を考えてくれたのです」


「だから、すごく、すごく、うれしかったんです」


 彼は私の方を向き、頭を下げた。


 そうか、名前。確かにそうだ。カレンダーを見てそれで月の名前と私の名前を組み合わせて「彩香」ってつけた。それはもちろん覚えている。


 じゃあもう白い紙に描くのは彼の名前。私が付けた名前になる。


 白い紙に向ってペンを走らせ、私は「彩香」と名前を描く。


「いいね、良かったよ」


 そう言うとツグミはまた同じようにアヤカの手の下に紙を置き、そしてアヤカは手をかざし始めた。


 青白い輝きが出始め、そしてそれを種の中に。


「これで準備は整いました」


 アヤカはツグミと私に向ってそう言った。


「・・・さてと」


 ツグミは輝きの納められた種を手に取ると窓に向かって行く。そしてそのままイーグルのカバンの中に入れた。


「・・・イーグルに持って行ってもらうんですか?」


 私はツグミにそう聞いた。


「そうだ。ベランダに置かれたプランター。キミは〝あの野菜を育てた後〟何も植えてはいないだろう?」


「何も・・・そう、植えてない」


「だったら運んでもらうしかない。キミも最初に言ってたことだし。〝それか鳥が運んできたか〟ってね」


 そう言って少し笑うとツグミはイーグルを送り出した。


 ツバサを広げ、天高く舞い上がり、そしてやがて見えなくなる。


 それを見送った後、今度は私に2人の視線が集まった。


「さて、美香さん。今度はあなたの番。ここでやることはやり終えました」


 と、次の瞬間。


 アヤカとツグミは手を合わせ、私の肩に置いた。


 すると私は目を閉じることになった。

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