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10.描く

 静かなひと時をカフェで過ごす。なんて言うのはかなりおしゃれだ。と私はそう思う。出されたサンドイッチを食べ終え、ゆっくりと紅茶を飲んでいく。


 するとアヤカは生えている植物が気になって仕方がなかったのか、立ち上がるとそのまま花や木が生えている近くに行き、そこからじっと観察を始めた。


 確かにアヤカではなくともこの場所は・・・なんというか素敵に見える。


 私も立ち上がるとアヤカの興味に付き合おうと店員さんに代金を支払い、彼の元へ足を進めて行った。


「もう少し上の階に行ってみようか?」


 アヤカにそう提案すると「はい、そうしましょう」という返事が返ってきた。カフェの有る中庭から上を見上げると吹き抜けになっていて、上の階の様子が少しだけ見える。


 私たちはカフェの店員さんにあいさつをすると再び図書館の中に戻り、階段を上った。


「美香さん、ここに案内図がありますよ」


 そう言われて私も案内図を見た。すると7階より上は「予定地」と書かれている。


「これってどういうことなんでしょうか」


「生長していくのかもね・・・もしかしたら」


 ここはツバサを持った者たちの記憶の保管庫。ということは時間が進むにつれて内容はどんどん外から運ばれてくる。そうすると当たり前のことではあるが置く場所が必要になってくるのだろう。


「きっと、昔からずっと生長してきたんだと思う」


「美香さん、7階には展望台があるみたいですよ、行ってみませんか?」


 私もその展望台と言うのに興味が沸いた。一体何の景色が見えるのだろうか。階段へ向かい、7階へ足を進める。


 すると確かに案内図にあった通り、これより上の階はまだ「出来ていない」感じがする。でも、本は置かれているしそれを運んでいる人もいた。


 展望台と書かれ立札。その向こう側には一枚のドアが有った。


 それをアヤカは押して開くと、外に出た。


「・・・すごいな、どうなっているんだ?」


 目の前に広がっていたのは「自分たちがさっきまでいた場所」の景色だった。目線は同じ高さにありながら、それでも別の空間という感じだった。


「直ぐ近くにあって、それでも行ける人と行けない人が居るって言うのはこういうことだったんですね」


 そうそして「人の方から距離を置いて離れていった」というのもこの風景を見たら納得してしまうだろう。それほどまでに身近で、気軽に来ることが出来る距離感に見えてしまう。


 風景をしばらく眺めているとアヤカが私に話しかけてきた。


「師匠は、ツグミさんは美香さんに何をやってもらいたいんでしょうか」


「多分、やってもらいたいというよりも〝やらなければいけないこと〟なんだと思うよ。それの準備をしてくれているっことは」


「どういうことですか?」


「準備や用意をして誰かに何かをやってもらうってことはそれだけ、それが重要な事」


 ここまで来て、私がしなければいけないことは何となく見えてきていた。あとはそれをやるだけ。そうすればきっと。


「過去の自分に話を付けることが出来るのだから」


 私たちは展望台を後にし、そしてそのまま元いた部屋に戻ることにした。部屋のドアを開けようとするとちょうどツグミが現れる。


「おお、いいタイミングだね。ちょうど準備が整ったんだ。・・・カフェはどうだった?」


「はい、すごくよかったです」


 とアヤカが答えた。


「そうか、なるほど。私も今度行ってみるとするか」


 そう言うとツグミは部屋のドアを開ける。するとテーブルの上には2つの有るモノが置かれていた。


「・・・これは、そうだよね、そう言うことだよね」


 1つは先ほどの「植物の種」そしてもう1つは「紫色の本」だった。


 ツグミはテーブルの方へ向かい、私達の方を見る。


「さて、美香は何となく感じ取っていると思うけど」


「・・・なんとなく」


「この図書館は記憶を置いておく、そしてもう1つの役割が有る」


 ツグミは種と本の両方をそれぞれ両手で指さした。


「これを必要な人に向けて送り出すことだ」


 私はアヤカの方をじっと見つめていた。

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