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5.私達として。

 ツグミが私の姿絵を持っているということは、私の今ある力を教えてくれたのはツグミであるということになる。


 ツバサはお互いに求めるものであるならば、当然のことながら私達もツバサを持つことが出来るし、何ならその持つやり方もアヤカが求めるやり方と同じであるかもしれない。


 つまり、今の私の力はツグミが持っている私の姿絵とそれに何か1つを足してもたらされたもの。結局のところ、何を自分がすればいいのかということは私が過去にもうすでに知っていることなのかもしれない。


「でも、何を足されたのだろうか。もう1つってのは。おぼえてない」


「何?じゃあ美香にとっても、アヤカにとっても師匠ってこと?」


「・・・まあ、外から見たらそうなるかも」


 リンリンが言うことは的を得ている。確かにそうだ。アヤカにとっては世界の見方を、そしてツバサを求めた私に、ツバサの材料とでも言えばいいのかそれを2つ持ってきてくれた。


「何にもないと思っていたけど、アヤカと私。共通する部分があったのか」


「共通って言うよりかは共有じゃない?」


「共有・・・ねぇ」


 リンリンは少し笑うと椅子に座り直し、煙草に火を付けた。


「ねえ、美香。私達、というよりも私と美香が今やっている仕事?っていうのかな。それに必要な力って言うのは元々その人に何かあって、教えて貰えたことっていうのは知ってる?」


「・・・リンリンが元々絵描きだったってことでしょ?」


「そそ、私は元々絵描き。それで何とかやっていこうって。行きたいって思ってた。来る日も来る日もそうやって生活していた」


 私はリンリンがたまに真面目になる瞬間を見つめることになる。


「毎日そうやって暮していた。・・・暮していたって言うよりかはそうやって過ごしていたら、ある日訪ねて来たんだよね。あの人たちが」


「うん。私もそうだった」


 彼らがやってくるのは決まって雨の日。風や雨粒と共にやってくる。そしてローブを着ていて、顔は見えないようにし、名乗らない。ただ一言だけ。


「世界の見方、その1つを教えます」


 とだけ言ってリンリンはクリスタル、私の場合は銀のペンを貰うことになった。


 リンリンが言いたいことは何となく知ってて、それは「自分とは全く関係のない世界の見方を教えることはなく、その自分があらかじめ持っているモノに対して教えてくる」ということ。


 リンリンは絵を描いていた、だから世界の見方も「クリスタルを通して、描きたいモノを描くための絵の具の作り方を知ることが出来る」ということ。


 となると私は何なのだろうか?


 特に文章を書いていたこともないし、物語なんか描いたことも無い。ただ何となく過ごしていた日々。確かに言われればリンリンと一緒に学生時代は美術部に入っていて、それで作品を作っていたことは有るのだけれど。


 私は煙草を吸っているリンリンを見つめた。


 彼女はやっていた。毎日絵を描き続けていた。それが何になるかという声聞かず、ただひたすらに彼女は描き続けていたのを知っている。だからこそ、リンリンが「アヤカ達」から世界の見方を教えて貰った時、一番喜んだのはリンリンではなく私だった。


「ねえ、リンリン」


「なに?」


「その・・・何回も聞かれた事だと思うんだけど、どうして絵を描こうと思ったの?」


 私の質問にリンリンは少し笑った。


「目の前に描きたいものがあるから・・・っていうそこはかとなく、なんて単純な理由ではない言葉が欲しいって感じがするね」


「うん、もちろん」


 お茶を一口、そして私の方を向く。


「その言葉っていうのは美香も多分同じというか似たようなものだと思う。あなたも文章や物語を描くっていうことをどうしてやっているかってことを考えたことある?」


「・・・ないかも」


「きっと、私が絵を描いたり、美香が物語を描いたりするのに適した理由なんか多分、存在しないと思うわけ」


「ただ、そうだね、1つ言える事があるとしたら」


「あるとしたら?」


「それはきっと子供の時みたいに〝ワクワクしていた瞬間〟って言うのを作り出したいからだと思う」


「ワクワク・・・」


「そ、大人って知識がついて〝あ、これはこうなるんだ〟って思ってやらないでしょ?子供はやるじゃん。たぶん、私たちはそのまま大人になったのかもね」


 何となくリンリンが言ってることに納得してしまった。

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