2.伝達
「アヤカはツバサを求め、そしてその後に向かう場所があります」
「羽ばたいて飛んでいくみたいな?」
「そうです、実のところ私自身そこからやってきました」
とのこと。ツグミは既に私達からツバサを貰い、そして向かうべき場所へ行っている人物であるらしい。であるならなぜここに来たのだろうか?
「アヤカに必要なもう1つのモノ。それは私達から渡すモノで作らなければなりません」
「・・・ってことはそもそも・・・その何て言うか、ツグミさんは迎えに来たみたいな感じなんですか?」
「はい、まあ、でも間接的にですけどね。その手助けです」
ツグミは机の上に置いていた白い紙を手に持ち、私に見せてきた。
「これを渡しに来ました。そしてこれに美香さんがあるモノを書き込むことで、アヤカにとっての、そして」
私の方を見つめた。
「別の世界の美香さんにとってのツバサとなりえるでしょう」
そう言って白い紙を手渡してくる。
「大昔の話です、まだずっと昔の話」
「・・・昔の話?」
「そうです、この世界。私達と美香さん達の世界の境界線がまだ決まり切っていない時、お互いにツバサは必要ありませんでした」
「ですが、有る時を境にして、境界線が出来上がり、それぞれツバサを持たなければ行くことが出来ない領域が出来上がりました。・・・出来上がったというよりもそうなってしまったというほうがいいのかもしれませんけどね」
私はアヤカの言っていたことを思い出していた。
「〝東の王子はやがて西の王女を迎えに行くだろう、そして月の女王が世界を照らすと、輝きはきっと自分の世界を語るだろう〟ってやつですか?」
「はい、それが2つに分かれて伝わっているというのもまた1つです。ですが重要なのは1つを2つに分けた。ということです」
「・・・どういうこと?」
「分けてもそれは結局1つということですね」
ツグミは立ち上がると手を組んで本棚の方へ近寄っていく。
「私・・・そうですね、分かりやすく言えばアヤカ達と美香達の住んでいる世界は分かれていますが、結局同じ世界に住んでいます。現にこうやって会えているのが事実ですから」
本棚に入っていたいくつかの本の中から気になったのか、一冊を取り出すと開いて読み始めた。
「1つだった時代、その時代はお互いが求め合い、寄り添い、そして舞い上がるがごとく自然体で自分の住む世界をお互いに美しくしていく。そんな感じです」
「でも、それが分かれたと」
「はい。いうなれば〝東の王子が西の王女を迎えに行く世界〟と〝月の女王が照らし自分を語る世界〟に」
となると、分かれていたものを1つにし、そしてその後で本来行くべき場所にお互いに向かうことになる。とツグミは言う。
「アヤカにとってもう1つがこの紙ってことですか」
「そうですね、紙というよりもっと大事なのは白い紙ということになります」
ツグミが言うには紙ではなくとも良いらしく、重要なのは白色であるということ。紙を選んだ理由としてあるのは私が銀輝師であるということと、リンリンが絵でアヤカの姿を描いたこと、そしてなにより、
別の世界の私に関係がある。とのことだった。
渡された白い紙。それを見ても特に何も思いつかない。これをどうすれば良いのだろうか。
「実の話をすると、それを渡すのが私の役目。それ以上の事はアヤカとやらなければならないのです」
「つまり・・・ツグミさんも何をすればいいかっていうのを知らないってことですか?」
「その通りです。私はただ渡しに来ただけ。ですが、それはあなたたちが行くべき場所からやってきたということですね」
読んでいた本を取ると本棚へ戻し、カバンを閉じると自分の体に戻してローブを整えた。
「おおよその事、これから何をしなければいけないのか、ということはアヤカが知っていることです。でも、それは彼には出来ない事。美香さんがやらなければいけないことになります」
とそれだけを言うとツグミは窓の方に向かって行く。
「・・・雨はやんだようですね」
庭先に出て、しばらく立ち止まるとローブが青白く光り出し、そしてツバサになった。羽ばたくと風が私の頬を撫でる。
「それでは美香さん。待ってますよ、向こう側で」
というとツグミは夜空へ飛んで行った。




