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 私とアヤカは自分の家に帰宅するとそのまま次の日の夜まで過ごすことになった。相変わらず私はやりかけの作業を続け、そしてその向かい側にはアヤカが座って、そして本棚の本を読み続けていた。


 私は時折煙草を吸うために窓を開けたり、お茶を汲んだりする以外はずっと椅子に座り続けるわけだけど、それでも時間が経過していることに気が付かなくて、朝が来たことを小鳥に教えて貰うことになる。


 気ままに起きて、気ままに書いて、気ままに寝る。という風に見えるのかもしれないけれど。


 少しだけ寝て、また運び屋さんがやって来て、それで食事をして。としているといつの間にか夕方に。リンリンから電話がかかってくると私は昨日と同じようにアヤカを一緒に彼女のお店に向かって行った。


「美香、あなたが銀輝師として使っているペンを持ってきて」


 そう言われたので私はいつも使っているペンをハンカチに包んでカバンの中に仕舞った。


「何につかんですかね。そのペン」


「・・・そうだねぇ、でも何となく予想はできるんだけど・・・」


 彼女に絵を描いてもらうというのは初めての事ではない。だから何となくこの先にやることは知っているものの、それにこのペンを使うのかというのは分からなかった。


「さて、よく来た2人とも」


 作業場には昨日まではなかった小瓶がいくつも並べられて居て、椅子がいくつか置いてある。


「アヤカはそこに座って欲しい・・・のと、1つ聞きたいことがあるんだけど」


「なんでしょうか」

 アヤカは答えた。


「・・・キミの求めるツバサ。その〝1つ目〟に必要なのがキミの姿をしたものってことだよね?」


「はい」


「ってことはだ。次があるわけじゃない?」


「そうですね、次が有ります」


 リンリンは少しだけ腕を組むと目の前にあるキャンバスを見つめた。


「・・・じゃあ、これだと持ち運びができないね。ということはだ」


 と言うと彼女は奥の方から何枚か画用紙を持ってきた。


「うーん、サイズ感的にはこれでいいかな」


 手にした紙は文庫本よりもやや大きい紙。それをアヤカに見せた。


「はい、大きさはあまり気にしないので・・・。でもいいんですか?」


「なにが?」


 リンリンはアヤカに尋ねる。


「その・・・描いて貰ってと言うか・・・時間を使って貰ってというか・・・」


 まあ簡単に言えばこれはアヤカがリンリンに気を使っているということになる。確かに彼は彼女に支払う何かを持ってきているわけではない。もし対価を払うことになるのであればそれは私から払うことになるわけだけれど。


 するとリンリンはアヤカの正面に立つと、私にやっているようないつも通りの「リンリンパンチ」をアヤカの頭に打ち込んだ。


「いいの、私がやりたくてやってんだから。もしやりたくないなら絵の具なんか作んないんだから・・・。というよりもこんなチャンスは中々こないからさ」


 アヤカはお辞儀をすると椅子に座り直してこちらを見た。それをじっと見ていたリンリン。絵筆を手に取ると描き始めた。


 彼女の描く絵。それにはある1点、他の絵を描く人では描かないモノを入れる。もちろん使っている絵の具自体がそもそも他の人が使わないモノなのであるが、それ以上に有るのが、


「その人が本来持っているモノを描き足すこと」


 ずいぶんと前に私の事を描いてくれたことがある。気が向いたのか、気になったのか。彼女は気ままに筆を持ち、私のことを描き出した。


 その時の事を思い出すと今でもあれは何だったのだろうか、と思うわけで。というのも、彼女が描く絵は〝全て彼女が描く〟というわけではない。その人本来持つモノはその人本人が描かなければならない。という彼女の中に考えがあるのか、それとも彼女にこの力を見せてくれた〝アヤカ達〟との約束なのか。


 ともかく、つまり私、美香自身もリンリンの絵を描くことになる。描いたのは今使っている銀色のペン。もちろん、描いてもらった当時、私は普通に働いていたからそのペンは持っていなかった。


 けれど、リンリンに描かれたペンは数年後、私の手元に来ることになる。


「美香、あんたはこの色のペンを持っている。だから描いて」


と言われて描いたのである。とすると、今回も同じようなことが起きるだろうと私は思うわけで。それはつまりアヤカが何かしらのモノを今描かれる絵に筆を入れて描くことになる。


 私は煙草に火を付けるとリンリンが絵を描いているのを眺めていた。





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