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自主企画 参加作品集

最後の一枚

作者: 秋桜星華
掲載日:2025/09/09

しいなここみさまの「秋のホラー企画【いろはに】」の参加作品です。


キーワード:紅葉


ひねくれてますねぇ、私(^^)

「お買い上げありがとうございますー」


 店員の声を後ろに受けながら自動ドアをくぐる。


 ――これでこの旅も終わりか。


 息抜きがてら来た広島への旅。


 自然や歴史を感じさせられた。


 ――いいところだったな。



 そんなことを考えながら、新幹線へと乗り込む。


 終電だからだろうか、新幹線の中はがらんとしていた。乗っているのは私と数人の若者のみ。


 そして、私の後ろの席には誰もいない!


 めったにない幸運に感謝しながら、シートのリクライニングを最大にする。


 少しの背徳感が私を襲った。


 シートに背中を預けると、一気に眠くなってくる。


 そのまま深い眠りの中へと落ちていった。




 ――ネェ


 ――キヅイテル?


 ――ボクニ……


「ひあっ!?」


 耳の奥でこだまする声にはっと目を覚ます。


 跳び起きた反動でそれなりに大きな音が車内に響いた。


「す、すみません……」


 小声でそう謝る。もちろん、ほかの乗客からの反応はない。


 ――もう眠れそうにないな。


 一度起きてしまったらもう眠れない。私はそんな体質なのだ。


 ――暇だ。


 スマホを使おうにも今月のギガは使い切ってしまっている。


 本を読もうにも肝心の本は行きの新幹線で読み切ってしまった。


 仕方がない。


 私は紙袋を膝の上に乗せ、お土産を眺めることにした。


 父と母には日本酒。別居だが持っていくくらいなら何ら問題はない。


 友人たちにはレモンのお菓子。それぞれの好みに合わせて、グミ、飴……と選んだ。


 ――そして、私のためにもみじ饅頭。


 私がこの世で一番好きな和菓子といっても過言ではない。


 箱を開けると、ふっくらとしたきつね色が顔をのぞかせた。いつものもみじ饅頭だ。


 ――おいしそう!


 買ったもみじ饅頭は4個入りだ。


 罪悪感もなく一口目を大きくかじった。



 ◇ ◇ ◇



 次の日、私はうきうきしながら箱を開けた。


 ――あれ?


 何か違和感がある――


 あ、葉っぱの枚数が一枚くらい多いかも?


 そういうもみじ饅頭もあるよな、と思いながら口に放り込む。


 ――うん、いつもの味だ。



 ◇ ◇ ◇



 その次の日も、私は期待に胸を高鳴らせながらふたを開けた。


 ――おとといも昨日も今日も明日ももみじ饅頭が食べられるなんて……!


 そして、再び違和感を覚えた。


 ――あれ、葉っぱの枚数増えてない……?


 昨日見た時よりも、増えているような気がしたのだ。


「これ、食べていいやつ……?」


 思わずつぶやく。


 だが、大好物への欲には逆らえない。


 私は躊躇いながらも端っこを齧り始めた。



 ◇ ◇ ◇



 ――その日の私は不安と期待を入り混じらせながら箱の前に座っていた。


 なにせ、昨日も今日も何かがおかしかったのだ。



 今開けると、取り返しのつかないことになってしまうのではないか。



 そんな思いもあった。


 だが、私はもみじ饅頭の前で屈するわけにはいかない……!


 震える手を伸ばし、ふたを上に持ち上げる……


「きぃああぁぁぁ!」


 ――そこには、精巧な手の形をしたもみじ饅頭があった。


 これは、これはまずい……!


 本能が叫ぶ。


 心臓がバクバクと音を立てる。血液が血管をめぐるのが感じられる。


 急に体温が下がった気がした。


 それほどに危機を感じさせる、そんな手だ。


 ――とりあえず、逃げなきゃ……!


 立ち上がろうとした私の肩に――


 冷たく、異様に柔らかい何かがポン、と触れた。


 視界の端には、確かにそこにあるはずのない影が揺れていた。



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― 新着の感想 ―
美味しいもみじ饅頭がどんどん増えて手のように…… 最初は穏やかなスタートでもしっかりホラーでした。
日を追う毎に変化を続けていくもみじ饅頭。 「このまま放置していたら最終的には何処に行きついてしまうのだろう」という想像させる恐怖がありますね。 そう言えば、子供の手は紅葉に例えられる事が多いですね。 …
タイトルからO・ヘンリー『最後の一葉』のパロディっぽいやつかと思ったら、違った! 増えるのは嬉しいんだけどねー……、別物になりさえしなければ。
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