マガタツケン
いつか師匠が言った。
「アンタがどんな道を選んでも構わないけどね。これだけは忘れちゃだめよ。アンタの進む道はアンタが決めなさい。誰かに決めてもらった道なんて、ぬるいことやったら、アタシが殴りに行ってあげるから」
辺りに立ち込める鼻が曲がりそうな鉄の臭いも、体を支える手についたドロリとした感触も、耳が痛くなるような静寂の中に響く師匠の声も、私の頭をガシガシと撫でる大きな手も、瞼を閉じれば目の前に現れるように覚えている。
それなのに、その時の師匠の顔を私は今も思い出せないでいる。
✽✽✽
今から約30年前、世界各地に「穴」が空いた。その穴から出てきた化物たちによって、世界の都市のいくつかは壊滅しかけた。
突如として現れた者たちにより、その化物たちは退治され、そうして世界は平和を取り戻した——かに思えた。
以来、穴は空いたり塞がったりを繰り返し、人々はそれに対抗する手段を身に着けていった。
この国では、その穴を「結門(ゲート)」と呼び、そしてそこから出てくる化物たちを「禍枉(まが)」と呼んだ。
禍枉を倒すことができるのは、「祝(しゅう)」と呼ばれる言葉による術のみ。その術を心得る者を祝法士と呼ぶ。
そんな、神子(みこ)機関によって管理される祝法士たちの中に、一際異彩を放つ者がいた。
立花ナオ。
それは生まれながらにして理を外れるという業を背負った、「禍枉憑き」である。
理外の術をもって禍枉を倒す彼には、1つの目的があった。
数年前に失踪した、育ての親を見つけ出し、1発ぶん殴ること。
その拳に宿るのは、憎しみか、それとも愛か。世界の命運すらもを左右する禍枉との戦いが、ここに始まる——。
※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、思想等とは一切関係ありません。
「アンタがどんな道を選んでも構わないけどね。これだけは忘れちゃだめよ。アンタの進む道はアンタが決めなさい。誰かに決めてもらった道なんて、ぬるいことやったら、アタシが殴りに行ってあげるから」
辺りに立ち込める鼻が曲がりそうな鉄の臭いも、体を支える手についたドロリとした感触も、耳が痛くなるような静寂の中に響く師匠の声も、私の頭をガシガシと撫でる大きな手も、瞼を閉じれば目の前に現れるように覚えている。
それなのに、その時の師匠の顔を私は今も思い出せないでいる。
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今から約30年前、世界各地に「穴」が空いた。その穴から出てきた化物たちによって、世界の都市のいくつかは壊滅しかけた。
突如として現れた者たちにより、その化物たちは退治され、そうして世界は平和を取り戻した——かに思えた。
以来、穴は空いたり塞がったりを繰り返し、人々はそれに対抗する手段を身に着けていった。
この国では、その穴を「結門(ゲート)」と呼び、そしてそこから出てくる化物たちを「禍枉(まが)」と呼んだ。
禍枉を倒すことができるのは、「祝(しゅう)」と呼ばれる言葉による術のみ。その術を心得る者を祝法士と呼ぶ。
そんな、神子(みこ)機関によって管理される祝法士たちの中に、一際異彩を放つ者がいた。
立花ナオ。
それは生まれながらにして理を外れるという業を背負った、「禍枉憑き」である。
理外の術をもって禍枉を倒す彼には、1つの目的があった。
数年前に失踪した、育ての親を見つけ出し、1発ぶん殴ること。
その拳に宿るのは、憎しみか、それとも愛か。世界の命運すらもを左右する禍枉との戦いが、ここに始まる——。
※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、思想等とは一切関係ありません。
序章 始まりは終わりの味を知っている。
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(改)