優しいババァの住む村
私は◯◯県◯◯村にいた。
ここにはトヨちゃんと呼ばれる84才の女性がいる。
トヨちゃんは旦那さんの遺産で100円食堂をオープンし、それから20年間『超赤字』生活を送っている。
当たり前だ。100円でお腹いっぱい食べられて子供や老人は無料。
労働者や忙しい母親の為に弁当まで作っていると云う。
トヨちゃんは「みんながお腹いっぱいになって私も幸せ。こんな最高なことはないね」といつも笑っているそうだ。
私はその話を聞いていてもたってもいられず東京から4時間かけてこの村に来た。
ジャーナリスト魂が疼く。
なぜ彼女は損ばかりする事をして「幸せ」という事が出来るのか?
現代人が無くしてしまった『幸せ』を彼女に会えば取り戻せる気がする。
店の前に着くと学生達を中心に男ばかりの行列が出来ていた。
店の中から新幹線のトイレを流したような激しい音が聞こえる。
「すいませーん。◯◯新聞の者です。取材を……」
「あんた東京の人?」
「はい」
「バカだなぁ。夜の部はまだ開店してないよ。次に開くのは1時間ぐらい後だよ」
「でもみなさん店に入っていくじゃありませんか」
「あんたも並べば?」
「そりゃあ並びますけど……まだ開店前何ですよね?店に入ってどうするんです?」
「あんたもしてもらいなよ」
「何を?」
「フェラチオ」
その日私は幸せを取り戻した。