箸休めのラブレター〜京都にときめき〜
また旅ができるようになりましたね。ほんの数年間ですが、自由にどこにも行けない日々が有りました。そんな日々にも終わりが来て良かったです。これは、大好きな京都への愛を綴ったエッセイになっています。気楽に流し見して貰えたら幸いです。
「ときめき」と言う言葉を聞いて、幸せなことに私には幾つも思い当たるモノがある。一人旅、着物、神社仏閣、小説、漫画、お酒、音楽だ。そして、その全てを充分に満たしてくれる場所「京都」。この二十年近く、私をときめかせ続けてくれる町「京都」についてその想いを語りたい。
私が初めて京都に行ったのは、大学一年生のとき。サークルの先輩達に車で連れて行ってもらった。確か気候も穏やかで新緑が眩しい五月だったと記憶している。その時は清水寺やその周辺のお土産屋さんを散策した。京都って下道でもそう遠くない場所にあるんだな、いいなぁ程の感想だった。まだこの時は「ときめき」の「と」の字くらい。
次に私が京都に行ったのは、卒業後、呉服屋に就職して初めてお客様に大口のお買い物をして頂いた時だ。その着物と袋帯を描かれた作家さんの工房が京都にあり、お客様と一緒に京都観光に招待された。勿論、お客様には購入頂いた着物と袋帯を着用してもらい、私も着物を着て行った。
作家さんは自前のカメラと様々なロケーションで私達を撮ってくれた。道行く観光客に何かの撮影ですか、とモデルさんと勘違いされた。鈴虫寺や苔寺が面白かった。苔寺では海外からの観光客に話しかけられた。作家さんは英語が堪能な方で会話が弾んでいた。私はそれを羨望の眼差しで見ていた。
私はすっかり京都という町が好きになった。ここで「ときめき」の「とき」まで気持ちが高まった。その後も仕事で度々京都を訪れた。
そのうち、休日に一人ででも京都に行くようになった。一人旅は自由だ。私は毎回旅のテーマを決めていく事にした。「お昼から飲める美味しいお店を巡る旅」「変わった雑貨屋さんを巡る旅」「お寺で開かれる骨董市で掘り出し物を見つける旅」「ハシゴカフェの旅」などなど。京都には本当に沢山の素敵なお店や催しがあって、毎回自分の立てたテーマを満喫して帰ることができた。何度も足を運ぶうちにすっかり「ときめき」の「めき」まで達していた。
ところが、そんな「ときめき」が奪われてしまう事態が起きた。コロナ禍での緊急事態宣言だ。不要不急の外出が制限された。旅なんてもっての外といった空気が日本を覆った。
それから三年以上が経ち、少しずつコロナに対する制限や世の中の空気も緩和された。そして私は再び「ときめき」に会いに行く。
今回の旅のテーマは「古本屋、ブックカフェ巡り」だ。事前に行く予定のお店を五、六軒ピックアップした。いつもは日帰りだが、今回は宿も取った。準備は万端、初の一泊二日京都旅へいざ参らん!
結論から申し上げるとピックアップしていたお店にはほぼ行けなかった。コロナ禍の影響か軒並み閉店していたのだ。私が読んでいたガイド本はコロナ前に発行されたのものだった。
それでもさすがは京都、閉店されたお店の近くに素敵なブックカフェが出来ていたり、日本酒が取り揃えられた定食屋があったり、ふらり立ち寄るでも素敵なお店が幾らもあるではないか。
一軒だけ残っていた古本屋で、私は大好きな雑誌「BRUTUS」の創刊号と絶版本を四冊購入した。
安く良い物が買えたと満足した気持ちで宿へと向かった。予約していた宿はゲストハウスだった。私以外のお客は皆、外国人。談話室で寛いでいた際に、上海からの観光客ユキさんと日本のアニメや漫画の話で盛り上がった。私の拙い英語とユキさんの流暢な日本語を交えて会話する事ができた。昔、作家さんが苔寺で外国人と楽しそうに会話していた光景を思い出し、嬉しかった。こういう機会に巡り合えるのも京都に来たおかげだと思う。
翌日は京都国際まんがミュージアムへ行った。昨晩のユキさんとの会話で行くことを決めていた。私は旅先でたっぷりと漫画を読むという贅沢な時間を過ごした。
だが、久しぶりの京都旅に私はすっかり舞い上がり、見えていなかった。いや、見ていなかった。天気予報を。京都駅に着くと、止まない大雨の影響で新幹線、在来線共に運行見合わせとなっていた。帰れない。久しぶりの京都は私を帰してくれない。
予想外のもう一泊、私は漫画喫茶で夜を明かした。奇しくも今回の旅のテーマに則した形となった。数年ぶりの京都旅、ハプニングすらも楽しい。今回の旅で「ときめき」は最高潮だ。
次回の京都旅はどうしようか。今度は音楽をテーマに旅をしたいと思う。来年こそは京都の一大夏フェス、「京都大作戦」にも参戦してみたい。
私の「ときめき」京都愛はまだまだ続きそうだ。
読んでいただきありがとうございます。小説執筆の合間に、箸休め的な短さと気楽さで書いて、読んでもらえたらとこのタイトルにしました。