↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女と竜は今日も旅をする。  作者: 白浜ましろ
Episode 7.星落つる跡地にて縁は繋ぎゆく
PR
29/117

星落つる跡地


 飛んできた声に風竜――アーリィは、後ろへと一歩身を引く。

 それでも、天色の瞳の眼光は鋭いままだ。

 すとっぷ、とはティシェの耳に聞き馴染みのない言葉ではあったが、彼女の行動から察するに、制止の意味合いがあるようだ。


「カロン、もういい」


 ティシェの呼びかけに、カロンもアーリィへと向けていた尾先を引く。

 警戒は滲ませたままであるも、彼もティシェの元へとゆっくり引き下がっていく。

 ティシェも倒れた身を起こす。が、引き倒された際に付いた肘が、衝撃となって少しばかり肩に響いていたようで、顔を僅かにしかめた。

 グローシャがその背を額で支え、ティシェの身体を押し起こす。

 ティシェは肩に触れて具合を確かめ、別段傷口が開いたわけでないことを確認して、グローシャへ「助かった」と礼を言った。

 その頃にはカロンもティシェの側へと戻って来ていた。

 カロンにも礼の意味合いも込めて頭を一撫でしてから、視線を上げて口を開いた。


「また会ったな、トール」


 ティシェの蒼の瞳に見上げられ、彼――トールは一瞬茶の瞳を小さく見開き、それから、ゆるゆると緩く瞳を細めて淡く笑った。少しだけ困ったように。


「……そうだね。また会ったね、ティシェさん」




   *




 そこは開けた場所――否、空間だった。

 木々が枝葉を伸ばし、半球状に覆って空間を創り出している。

 森の奥地に足を踏み入れたというのに、枝葉からは木漏れ日が溢れ落ちていた。

 先程までの絡みつくような湿気は霧散し、代わりに清涼な空気が辺りを包む。

 その正体も既に気付いている。歩を進め、淵の側まで来ると膝を折ってしゃがんだ。

 手を伸ばして指先を泉へ浸けてみる。冷たい。なのに、身体に沁みるその温度が心地いい。

 泉は底まで見通せるほどに透き通り、不思議なことに星の瞬きに似たそれが、きらめきと成りて水底から溢れ出て昇り、弾けるようにして空気中へと溶けていく。

 カロンが蔓草を斬り捨てた際、溢れた光が星の瞬きに見えた。それはきっと、水底から溢れ出るきらめきが空気中へと溶けていたから。

 このきらめきは、ティシェの幼い頃の記憶と重なる。あの、強烈で鮮やかな――。


「――星、の瞬きみたいだよね」


 視界の端。トールの靴が見えた。

 ティシェが顔を上げると、トールも泉へと視線を落としていた。

 彼の肩には腹の白い、浅緑色(あさみどりいろ)の鳥が留まっている。

 羽先は黄へと色合いを変えるその鳥は、ここへ向う際に仰ぎ見た影の主だった。尾羽根の下から伸びる飾り羽は、何度目にしても綺麗だと思う。

 トールがラッフィルと呼んでいた鳥だ。

 ラッフィルがトールの肩から羽ばたき、泉に静かに着水する。

 飾り羽が水面に伸ばされて広がり、水底から溢れ出るきらめきに染まって、その美しさをより際立たせた。


「あのきらめきの起源って、知ってる?」


 トールがティシェの隣に腰を下ろす。

 それにならって、ティシェもその場に座り直した。

 だが、トールの問いの答えは知らず、ティシェはいつもの乏しい表情下で首を左右に振る。それを見、トールは答えを口にした。


「かつて星が落ちた時の、その欠片なんだって」


「星の、欠片……?」


「うん。だから、ここは星落つる跡地の一つなんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。