第10話 偽りの?一泊旅行 ③
有料道路を利用しての小一時間のドライブ。
並行する一般道もあるけど、時間は倍以上かかるからね。
凍ってて、危ないかもだし?
有料道路は完全に除雪されているけど、日陰の隅っこには凍った雪がチラホラと。
安全運転で、ゆっくりと、煽られないように気をつけながら進みます。
軽自動車だと、良くあることだからね!
四駆で、ターボ付きで、スタッドレスタイヤを装着なので、余裕でスイスイ坂道の緩いカーブを登っていきます。
快調にドライブして、辿り着いた道の駅併設の、日帰り温泉。
鉄道駅も併設されて………あっ、逆だね?
鉄道駅併設の、道の駅と日帰り温泉。
そんな訳で?温泉に入る前に、道の駅の食堂で、僕はかき揚げ蕎麦を、藤城さんは、ゆば入り鴨せいろ蕎麦を注文。
「あっ、美味しい!?」
「でしょう?ここは、美味しいんだ!」
標高が高くなっているので、かなり冷え込んできていて、温かいお蕎麦は更に美味しく感じられます。
名物のコロッケを、一つ追加注文。
「藤城さん?半分どう?」
欲しそうにしてたので、声を掛けてみた。
「っ!いただけるなら?」
嬉しそうに半分コにしたコロッケを受け取り、熱々をハフハフしながら頬張る彼女を見て、
『可愛いかも?』と思ったのは内緒にしとこうか。
もし彼女を釣ろうと思ったら、洋服や化粧品よりも、食べ物が一番効くのかな?
顔に出ていたのか、食べ終わってから僕を見つめて、
「今、変な事考えてたでしょ!」
「ん〜、美味しそうに食べてて、可愛いと思っただけだし?」
「っ!綾本君?ヤッパリ普段と全然違うね!」
「さっきも言ったけど、コッチが本当の僕だからね?」
「……………………後で、その『本当の僕』の事をじっくりと聞かせてもらいますからね?」
言葉の裏に、『一晩中かけて』と続いたような気がしたけど、勿論気のせいだよね?
「………………お手柔らかに、お願いします?」
普段と全然違うのは、君もだよね?僕もじっくりと、一晩中かけて、君のことを聞かせてもらうからね?とは言えなかった。
言ったら、後戻り出来なくなるような気がしたから。
もう、遅いかもしれないけど。