第八話 出陣の時
「はぁ……」
部屋の中でひとりになる。
扉の前にミーノがいて、見張っていてくれるから、アリアナ王女が訪ねてきて、いきなりふたりきりになることはないだろう。
「ウソ吐いちゃったなぁ……」
一応自分の記憶だから、夢で見たというのも、あながち間違いではないんだけど、嘘を吐いたという自覚がある。
「どうして、アリアナ王女は、わたしを殺そうとしているんだろう……」
誰が王を殺したのかも気になるけど、そちらも気になるところだった。
取りあえず、味方と言えるのは三人だ。
祖国のナルミヤから着いてきてくれたジルベルト。
優れた洞察力に戦略眼、英雄と言われる剣の腕に実直な性格。
フォルトナート様も、どこか頼りにしているようなところがあった。
幼い頃から、ラファエラの教育係をしてきた恩人だ。
最も頼りになると思っていいだろう。
そして、同じく祖国から着いてきてくれたミーノ。
父親が、気まぐれで平民との間に作った子だから継承権とかはない。
ラファエラが、剣や魔法の勉強をしているときに、ミーノは暗殺者としての教育を受けていた。
だから見張りとか偵察とか、そういう能力に長けている。
もちろん、戦いでも強い。
それと、身内ではないんだけど、法皇の孫娘、アーシアも小さな頃からラファエラに懐いていた子だ。
基本的にラファエラは性格が悪いんだけど、この三人からは愛されていた。
多分、性格が悪いと言うよりも、本当のことをズケズケという性格だったから、好き嫌いが激しかったんだろう。
アーシアは、その立場から蝶よ花よと育てられ、本音でぶつかってくるラファエラに好感を覚えたのかも知れない。
「でも……」
この三人が、王を殺すということはあり得るんだろうか?
ゲームだと、ラファエラが到着してすぐに戦闘が始まる。
ラファエラが主人公に絡んだりして困らせるんだけど、その主人公がいないまま、戦闘になってしまうんだろうか?
わたしの知っているゲームのようで、細部が違っている……。
そんな気持ち悪さを覚えた。
そもそも、王が死ぬなんてストーリーはなかった。
「鎧を脱がなくちゃ……」
でも、脱ぎ方がわからない。
皮鎧だから、そんなにゴツゴツはしていないんだけど、十分に堅くて寝苦しい。
そんなことを思いながらも、わたしは旅の疲れもあって、いつの間にか寝てしまった。
「姉上、起きてください、大変です!」
「え、うん……ミーノ?」
揺り起こされて、目が覚める。
寝てしまったんだ。
「暗黒竜の軍勢が攻めてきました! 我々にも出陣の要請が来ています!」
あ、戦いになるんだ。
どれくらい時間が経ったんだろう。
時計を見ると、二時間くらいは経っているようだった。
「わかった、行きましょう」
荷物は持ってきたものを、そのまま持っていけばいいだろう。
「姫様、お疲れですか?」
ジルベルトが顔を出す。
鎧を脱がなくて良かった。
「いえ、大丈夫です、わたしも行きます」
援軍に来たのだから、お飾りでも出陣しないといけない。
実際の指揮は、ジルベルトが執ってくれる。
「全世界、全ての国と民が力を合わせて戦う敵です、おつらいでしょうが、ここは頑張ってください」
「わかりました、頑張ります」
寝起きだから、やつれて見えたのか、そんな声を掛けられてしまった。
精神的に、やられているんだろうか。
まぁ、殺人の容疑が掛けられているんだから、穏やかではないけれど。
そして、わたしたちは聖域を出て、外で待機していた軍と合流し、出撃した。




