第六話 強くてニューゲーム?
「あれ……ここは……?」
そうだ、アリアナ王女に刺されて、わたしは……。
「…………」
辺りは真っ暗だった。
ここが……死後の世界? 地獄とか……?
天国では無さそうな感じだけど……。
「…………!?」
何か、上の方から視線を感じた。
この、何もない真っ暗な世界で上から……。
「ひっ!?」
わたしは、暗闇の中に巨大な物体が居ることに気が付いた。
これは……暗黒竜?
ゲームの中の暗黒竜のシルエットに似ている……。
「その通りだ、転生者よ」
「あ、暗黒竜なんですね……」
自分の着ている服がジャージになっていた。
ラファエラじゃなくて、元のわたしに戻ったってことだ。
微かに腐臭がするけれども、これが暗黒竜の匂いなの?
「我は、お前を三度助けよう、もし四度ここにやってきたならば……そのときは、我のものになってもらう」
「暗黒竜の、もの……?」
なんだか、恐ろしい響きだった。
きっと、ろくでもないものだ。
「今回は、お前のスキル、待ち伏せをデウスエクスマキーナに変えてやる」
「な、なんですかそれ」
ゲームでも、そんなスキルは出てこなかった。
名前は強そうだけど……使う度に、魂を取られるとか、そんなんじゃないよね。
「何もリスクはない、心配するな」
「どんなスキルなんですか?」
「お前が誰かに攻撃されたとき、お前が先に攻撃していたことにするというスキルだ」
「ん、んん……?」
待ち伏せは、相手が攻撃する前に、先に攻撃できるスキルだったんだけど、デウスエクスマキーナは、攻撃していたことにするスキル?
「運命を変える程のスキルだ、これで困難を打ち破れるだろう」
強い……のかな?
これが、強くてニューゲーム?
王女様に刺されそうになると、先に刺していたことになる?
でも、それはそれで駄目なんじゃあ……。
「次に会うことを楽しみにしているぞ、転生者よ……」
「あ、まっ……」
わたしの言葉は届かずに、暗闇が押し寄せるように意識を奪っていった。
「……はっ」
気が付くと、部屋の中にひとりだった。
ここは、聖域の中のわたしの部屋だ。
初めて聖域に来て、ジルベルトとミーノのふたりと別れた後だろう。
どれくらいの間、ひとりだったのか。
「すぐに、みんなに合流しないと」
扉を出て、ジルベルトとミーノを呼ぶ。
「どうしたんですか、姉上」
「わたし達が別れてから、どれくらい時間が経ったかわかる?」
「十分ほどですかな? それがどうかしましたか」
十分……人を三人殺すのに、十分は短いんじゃないだろうか?
「中央広場に行きましょう」
「どうしたんですか、何があったんです?」
「ごめん、説明できないの」
「…………?」
わたしは、中央広場に行くと、そこで大声を上げた。
「聖域にいる皆さん! 集まってください!」
「ど、どうされたのですか、姫様」
ジルベルトがおろおろとしている。
わたしが狂ったと思ったのか、慌てている。
でも、これが多分、一番良い方法だ。
「ラファエラ様、どうしたのですか?」
一番初めにやってきたのはフォルトナート第一王子だった。
「全員が集まったら、説明いたしますので、お待ちください」
「ジルベルト殿」
「ワタクシにも、わからないのです」
そして、法皇の孫娘アーシアと賢者のファウスト、アレッシオ様とその友人、レアルコ様とブルーノ様がやってきた。
「アーシア、この聖域にいるのは、これで全員ですか?」
「いえ、王と宰相、騎士団長と王女がいます」
王女、わたしを殺したアリアナ王女だ。
現状、彼女が一番怪しい。
「どうされたのですか、騒がしいようですが」
「アリアナ様……」
渦中の人がやってきた。
虫も殺せない優しい顔で。
わたしは複雑な思いで、その人を見る。
悪いことなんてするはずがないという姿と雰囲気だ。
こんな人が、どうしてわたしを殺したのか……。
「父上は、こんなところで呼んでも出て来ないぞ、用があるならこちらから行かねばならん」
アレッシオ様は不機嫌だ。
わたしが意味不明な行動を取っているから……。
「わかりました、それでは、全員で王様のところへ行きましょう」
「お待ちください、ラファエラ様、説明が先です」
フォルトナート様にそう諭される。
どうしよう、どう説明しようか……。
暗黒竜に助けてもらったなんて、説明できないし……。
「ゆ、夢を見ました、王と宰相、騎士団長が殺される夢です。そして、その現場には、わたしが持っているアミュレットが落ちているのです」
「貴様、よりによってふざけたことを!」
ブルーノ様が怒りの声を上げる。
他のみんなも、ざわざわとし始めた。
「まぁまぁ、みなさま、論より証拠です、王の部屋を見に行けば良いだけなのですから」
智者のファウスト様が、率先して王が居る部屋に歩いて行く。
わたしたちも、それに着いていくように歩いて行った。
「では、フォルトナート様、取り次ぎを願えますでしょうか」
王の部屋の前で、ファウスト様が一礼をする。
フォルトナート様は、扉をノックすると声を掛けた。
「父上、フォルトナートです、少しお話をよろしいでしょうか」
「…………」
しかし、返事はない。
殺された時間がわからないから、どうしようもない。
わたし達が到着したときには、もう殺されていたのかも知れないんだから。
「父上、アレッシオです、入りますよ?」
扉には鍵が掛かっていなかったようで、アレッシオ様が少し驚いた顔をする。
王ともなれば、いつ暗殺されてもおかしくない。
部屋に鍵くらい掛けるんだろう。
「失礼します……」
アレッシオ様は、部屋に入ったところで立ち止まった。
そして、こちらを振り返る。
「ち、父上と宰相、それに騎士団長が……殺されている」
やっぱりと思いながらも、わたしは頭を垂れた。




