第三話 二人の王子
「姫様、そろそろ王都に着きますぞ」
「はい、引き続きよろしくお願いします」
わたしは、この国の人間ではない。
隣の国であるナルミヤからやってきた第一王女だ。
ちなみに、姫騎士とか言われている。
この国、ラクシア国の第二王子と婚約しているんだけど、フラれてしまう役回りでもあった。
そして追放され、暗黒竜側に寝返った後、復讐にやってくるのだ。
もちろん、その復讐も上手くいかずに死ぬんだけど……なんとかしないと。
「…………」
首都までたどり着くと、兵のみなさんは外壁の外でキャンプをするようだった。
こんなにたくさんの人を、宿屋に泊めることは出来ないんだろう。
「では、姫様、行きましょうぞ」
「は、はい」
街の中に入るのは、わたしとジルベルトとミーノの三人みたいだ。
馬を下りると、門から中に入って行った。
栄えている中央通りをそのまま真っ直ぐ進んで、城までたどり着く。
すると、わたしの婚約者である第二王子と第一王子が出迎えてくれた。
「アレッシオ様、えと……お久しぶりです」
「わざわざ来なくても良かったものを」
いきなりな対応だった。
全く歓迎されていない感じだ。
アレッシオ様は、どこかふてくされた様子で、わたしの方に視線をよこさないようにしている。
まぁ、ラファエラは色々な人に嫌われていたから、こんなものかも知れない。
「アレッシオ、そんな言い方はないだろう、ラファエラ様、あなたに来て頂けて、こんなに心強いことはありません」
そう言いながら出て来たのは、第一王子のフォルトナート様だった。
アレッシオ様も十分に格好いいけれども、フォルトナート様は別格に格好いい。
いわゆる王子様顔で、しかも優しげな雰囲気、それでいて戦にも強いという有能ぶりだ。
心強いと言ったのは、わたしにではなくて、百戦錬磨のジルベルトに言っているようなものなんだろうけれど。
「フォルトナート様、アレッシオ様、お招きいただきありがとうございます、父王に代わりお礼申し上げます」
ミーノがその美少女っぽさを遺憾なく発揮して、二人に一礼をする。
「おおっ、ミーノ様、我が家だと思って、ゆっくりしていってください」
第二王子のアレッシオ様が、急にデレデレし始める。
わたしとは目も合わせなかったのに、ミーノには頬を赤らめて挨拶していた。
アレッシオ様は、困ったことにミーノが好きなのだ。
女だと思っているのか、男だと知っていて好きなのか……。
後者だったら、色々とヤバイ。
「フォルトナート様、姫様はアミュレットを持ってきております、暗黒竜の情報は集まっているのでしょうか」
「取りあえず、聖域を用意した、そこならば暗黒竜の手が及ばない」
ジルベルトとフォルトナート様が実務的な話をしている。
アミュレットというのは、暗黒竜を倒すと言われているフォルトナート様の命を守るアイテムだ。
それをわたしが、ラクシア国まで持ってくるという感じで、ラファエラは合流する。
一度きりの蘇生アイテムなんだけど、リアルで一回生き返ることが出来るというのは大きいだろう。
ジルベルトに率いられた軍勢も強いし、悪いことは何もないはずだ。
アレッシオ様は、歓迎してくれてないけど……。
この人と仲良くなっておかないと、追放されてしまうから、ラファエラとしては死活問題なんだよね。
「それでは、聖域に案内しましょう」
暗黒竜の力が及ばない聖域が、お城の中にある。
ゲーム的には、そこが本拠地みたいな感じだ。
特別な許可がないと入れない場所で、特別な用事がなければ主要メンバーしか入れない。
お城の中を通って、その地下にある聖域に入っていく。
「うわぁ……」
ミーノが、珍しそうな声を上げる。
壁や床がほのかに光っていて、神聖な感じをかもし出していた。
「ミーノ様、ここならば暗黒竜の影響を受けません、病気や呪いを受けることもなくなるのです」
「そうなんですね、アレッシオ様、ありがとうございます」
「いや、はっはっは、これくらいのこと、何でもありません」
ミーノは、アレッシオ様をたぶらかそうとしているんだろうか?
イタズラ好きだから、ちょっと不安だ。
「この扉の先が、真なる聖域になります」
フォルトナート様が扉を開けると……中は、神殿のような作りになっている、明るい建物の中だった。
わたしにも感じる、清浄な空気だ。
「お部屋はこちらに、三部屋ございます」
わたしたちは、部屋をひとつずつあてがわれた。
真ん中の部屋にわたしが入って、その左右をジルベルトとミーノが挟む感じだ。
「旅の疲れもあるでしょう、まずはゆっくりとお休みください」
「ありがとうございます、フォルトナート様」
「ラファエラ様は、少し……いえ、忘れてください」
王子スマイルで誤魔化されてしまったけれど、変わったと言いたかったんだろう。
嫌な性格なんて、真似する気はない。
追放なんて、避けた方がいいに決まっている。
「それでは、また後で」
フォルトナート様とアレッシオ様は、どこかに行ってしまわれた。
わたしは部屋に入ると、荷物を置いたりベッドの感触を確かめたりする。
「…………」
壁には、ラクシアの伝承を描いた大きなタペストリーが掛かっている。
何となく、裏側を覗いてみると、そこは当たり前だけど壁だった。
「はぁ……鎧一人で脱げるかな……」
いつ戦いになってもいいように、みんな完全武装なんだろうか?
それじゃ疲れてしまうけど……ジルベルトに言われるまでは、この格好のままでいよう。
シャワーを浴びたいと思いながらも、わたしはゴロゴロし始めた。




