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第二十話 新たなる被害者


「賢者様にも言いたいことがあります」


「おや、今度はわたくしですか」


 ファウスト様は楽しそうな顔をしている。


 怒ったり苦しんだりしている姿は想像もできないけど。


「賢者様は、この聖域を出た方が良いかと存じます」


「なぜ、とお聞きしてもよろしいですか?」


「暗黒竜を利するからです」


「それでは答えになっておりません、どう利するのですか?」


「まさか……賢者様まで裏切っているのか!?」


 ブルーノ様が怒りの声を上げる。


 ああ、もう、この三人は本当に……。


「簡潔に言いましょう、わたくしは、ここを出ていく気はありません」


「ワタクシは信用できませんか?」


「はい、あなた方の親分に、そう伝えて下さい」


「なっ!」


「!?」


 第二王子派が驚いている。


 この三人に、指示を出している人間がいるのか。


 まさかとは思うけど、暗黒竜じゃないでしょうね。


「親分とは誰のことだ?」


「確信がないので、今はお答えできません、それでは失礼致します」


 ファウスト様は、フォルトナート様の問いには答えずに、部屋を出て行ってしまった。


「もう、滅茶苦茶ですね、姉上」


「うーん、部屋に戻る?」


 小声で相談する。


 ここにいても、あまりいいことは無さそうだけど……。


「親分とは誰のことだ?」


 フォルトナート様が、アレッシオ様を問い詰めていく。


 この三人は、確かに図星を突かれたような声を出していた。


「ワタクシも気になります、親分とは誰ですか?」


 聖女様は、三人の味方ではないらしい。


 問い詰める側に回って、そう言っていた。


「そ、それは……」


「聖女様は、我らの味方ではないのですか!?」


 どうにも、様子がおかしい。


「ブルーノ様が、ラファエラ様を襲ったというのは本当ですか?」


 そんなことまで知っているんだ。


 これは、聖域の外で起きたことだから、騎士達の間でも話題になっていただろうけど。


「い、いや、その……」


「誰かの指示があったということか、誰だ言え!」


 いつも穏やかなフォルトナート様が怒っている。


 こういうときに、ファウスト様がいてくれれば、冷静に味方になってくれるのに。


「兄上といえども、それは言えませぬ」


 アレッシオ様が、苦しそうにそう言うのがやっとだった。


 でも、それでフォルトナート様は諦めない。


「ここは話してしまった方が良いのではないでしょうか?」


 レアルコ様が、そう言い出す。


 激情型のふたりとは違って、さすがに冷静だ。


 ここを誤魔化す方が怪しまれると、そう思ったんだろう。


「馬鹿な! お前は本当に!」


 アレッシオ様が怒っている。


「レアルコ、話を聞こう、こちらに……」


「…………!」


 隣にいたブルーノ様が短剣を抜くと、レアルコ様の喉元にそれを突き立てる。


「がっ……がはっ……!」


「ひっ!」


 思わず、悲鳴が漏れてしまう。


 目を見開いて、レアルコ様がブルーノ様を見るけれど……そのまま倒れ込んだ。


 床には、血が広がっていく。


「レアルコは狂ったので処分致しました」


 うやうやしく、アレッシオ様に礼をするブルーノ様。


 フォルトナート様は、冷静な目で剣の柄に手をかけていた。


「ぶ、ブルーノ、お、お前、なにも殺さなくても……!」


「初めからこうすれば良かったのですよ、ラファエラを皆で殺しましょう。ミーノは、私がもらいますがね」


「狂ったか」


 全員が剣を抜く。


 これは、エスカレートし過ぎだ。


 聖女様も、驚いた目で見ている。


「こんな猿芝居はうんざりだぁ、全員殺しちまえば良いんだよぉ!」


 そう言いつつ、ブルーノがわたしに剣を振るってきた。


 ミーノがすかさず前に立つ。


 でも、その攻撃は、フォルトナート様が受け止めていた。


「暗黒竜の力は感じない……本当に狂っただけか」


「王子、邪魔をするならあなただって……うっ」


 その眉間(みけん)に、ミーノの投げナイフが突き立っていた。


 間を開けずに、喉元にも突き刺さる。


 ブルーノは……そのまま、仰向けに倒れていった。


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