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第十九話 聖女の提案


「聖女様、我々をお導き下さい」


 アレッシオ様が、聖女……フレデリカ様に手をさしのべる。


 でも、フレデリカ様は微笑んで、それをやんわりと断ると、フォルトナート様に向き直った。


「フォルトナート様、少しお話をよろしいですか?」


「もちろんです、これからのことをお話ししなければなりません」


 主人公である聖女様は、味方をパワーアップさせるスキルを持っている。


 そのスキルがないと倒せない中ボスとかもいたので、絶対に必要だ。


 でも……わたしの知っている主人公とは、顔も名前も違うのが気になる。


「フォルトナート様とワタクシが婚約を結ぶことで、この世界に強固な守りが築けます」


「えっ」


「なっ」


 アレッシオ様とわたしが、同時に変な声を出す。


 でも、当事者の二人はいたって真面目な顔で見つめ合っていた。


「そして、アレッシオ様とラファエラ様が婚約を結べば、更に盤石になります」


「チッ」


 舌打ち聞こえてるんですけど。


 でも、それはこっちの気持ちでもある。


「聖女様、今はお待ちください」


「何故でしょうか?」


 冗談ではなく、本気でそう言っているようだ。


 もちろん、ゲームにこんな展開はなかった。


 なんか、やきもきする。


「私は昨日、ラファエラ様に婚約を申し込んだばかりだからです」


「なんですとっ! 兄上! 正気ですか!?」


「正気だ、お前よりもずっとな」


「何を考えておいでなのですか! この女には殺人の容疑があります!」


 でも、フォルトナート様は静かに首を振る。


「私は本気だ、もっとも……返事を聞いてはいないが……」


 寂しそうに、ふと横目でわたしを見てくる。

 

 なんか、この場で返事をしないといけないみたいな空気だ。


「あ、あー、えーと……えへへ」


 でも、わたしは何も言えなかった。


「お姉様、意外とへたれですわね」


 アーシアはそう言うけど、結婚なんて一大事をそう簡単には決められない。


「いや、後日と言ったのは私だ、返事を急ぐつもりはない」


「フォルトナート様、ワタクシの言うことは信用できませんか?」


 聖女様は不服そうだ。


 結婚を申し込んだのに、断られたんだから当然か。


 傷ついたかも知れない。


 でも、フォルトナート様は冷静だった。


「聖女様の言うことであっても、決められないことはあります」


「そうですか……この世界のためです、良くお考えください」


 でも、出会ったばかりで、突然結婚とかいわれても困るだろう。


 まぁ、わたしも似たようなものだけど。


 そこで、レアルコ様が咳払いをした。


「お待ちください、そもそも、ジルベルトに指示を出していたのはラファエラ様ではないのですか?」


「場合によっては、結婚どころの話じゃない」


「まーた、三馬鹿が始まりましたわね」


 アーシアが、そっと毒づくけれども聞かれていなかったみたいだ。


 三馬鹿なんて言ったら、益々当たりが強くなる。


「ジルベルトのことは、なんと謝ればいいのかわかりません、しかし、わたし自身のことは、違うとしか言えません」


 指示を出していたのがわたしなら、殺されそうになっているのはおかしいじゃないか。


「ふん、ワタシは思うのです、アーシア様は、ラファエラ様に話し掛けない方が良いのではないかと」


 突然、レアルコ様がそんなことを言い始めた。


 周りから剥がしていく作戦なの?


 お貴族様も日本の学校も、あんまり変わらない。


「何故でしょうか?」


 アーシアは面白そうに笑っている。


 こういう逆境の方が楽しいんだろうなぁ。


「それは、ワタクシも思っていました。お二人が仲良くするのは、暗黒竜の思うつぼなのです」


 そこに、聖女様が追随するように話し掛けてくる。


 聖女様も、わたしが気に入らないのか。


「まーったく、意味がわかりませんが?」


「仲間割れをしてどうするのですか、ボク達は結束しなければいけません」


「ミーノ様、もちろんそうなのですが、あなたの姉上が場を乱しているのです」


「姉上は何もしていませんよ?」


「とにかく、お二人はこれ以降は接触をしないように願います」


「もちろん、お断りしますわ」


 自分の神託で現れた聖女様だけど、アーシアは気に入らないと決めたようだ。


 仲を裂こうと思ったのかも知れないけど、逆効果だね。


「ワタクシが聖女であると、お疑いですか?」


「いえ、確かに神託を受けました。あたし自身がです」


 そこには確かな自信と誇りがあるようだ。


 堂々としている。


「しかし、この聖域は、暗黒竜の力を受けません。お姉様と話すことが暗黒竜を利するなど、到底信じられませんわ」


「しかし、実際に父上……王は殺されています、聖域の力も疑わしいのではありませんか?」


 アレッシオ様の追求にも、アーシアの意志は揺るがない。


「百年以上前の暗黒竜侵攻で、この聖域が勇者達を守ったのです。それは揺るぎない事実ですわ」


 ふたりが軽くにらみ合う。


「ま、まぁ、お待ちください、このような言い合いが発生するのは良くないのではありませんか?」


 わたしが間に入る。


 そうすると、第二王子派が絡んでくるので控えていたけれど、あまり静観もできない。


「とにかく、ワタクシは忠告いたしました。後は、お二人のご自由になさってください」


「もちろん、自由にしますわよ」


「アーシア様、少し間をおきましょう、お部屋にお下がり下さい」


 フォルトナート様が静かにそう言う。


「それでは、フレデリカ様の思うつぼではありませんか!」


「お願いします、アーシア様」


「もういいですわっ!」


 アーシアは、怒って部屋に行ってしまった。


 そんなに引きずる性格でもないから、大丈夫だと思うけど……。


 波乱は収まらなかった。


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