第十五話 これからのこと
「うーん……」
なんか変な感じがするのは、主人公がいないからだ。
主人公……聖女が、イケメン王子達を導いていくストーリーなのに、それがいないからおかしなことになっている気もする。
「しかし、これでは我々の大義名分が無くなりますな」
ジルベルトが、小さな声でそう言う。
わたしたちは、第二王子の婚約者だったから援軍に来たという理由があった。
アミュレットを届けるという役割は、もう済ませている。
婚約破棄されてしまった今となっては、この国に軍として駐留する名分がないのかも知れない。
「暗黒竜と戦うことは無意味ではありません、兵達も納得してくれるかと」
「お姉様! それならば法王庁で身分を保障致しますわ!」
アーシアは、わたしと一緒にいたいんだろう。
ありがとうと言って、微笑む。
「いや、それには及ばない」
そこで、フォルトナート様が立ち上がる。
「ナルミヤとの縁を切るわけにはいかない」
「でも、アレッシオとお姉様の関係は、もう修復不可能ですわよ」
「そうだな……ラファエラ様、今すぐのことで申し訳ありませんが、私と婚約していただけませんか?」
「えっ!?」
フォルトナート様は、いたって真面目な様子だ。
冗談とかではない。
「えええええええええっ!?」
ミーノとアーシアの方が、わたしより驚いている。
なんか、驚き損ねてしまった感じだ。
「えと、それは、親とか相談しないと……」
「そんな勝手な! 次期王妃と言うことですよ! いきなり、はいそうですかと決められないです!」
ミーノが反発している。
「そうですそうです! 弟が駄目だったから兄がなんて、お姉様をなんだと思っているんですか!」
「皆の言い分もわかる、正式には後日、覚えておいてください」
フォルトナート様は、私のところまで歩いてくると、アミュレットを渡してきた。
「これは、私の命です。元々の持ち主であるラファエラ様に持っていてもらいたい」
「は、はい……」
わたしは、それを受け取っていた。
「ボク達はどうするべきなんですかねぇ」
ナルミヤ国の三人が、わたしの部屋に集まっていた。
まさか、こんなことになるとは思っていなかったから……。
フォルトナート様と結婚をしたら、即、この国の王妃ということになるんだろう。
「撤退する頃合いなのかも知れませんな」
「さんせー、さんせーです!」
ん? さっきと意見が違っている?
この状況で帰るわけには行かないと言っていたのに……。
ジルベルトは、あまりこの状況を良く思っていないようだ。
わたしとしては、複雑だなぁ……。
嫁ぎ先としては、個人的にこれ以上ないと思うけど、世の中、そんなに簡単じゃない。
「こうも、あからさまに命を狙われていては戦えません、罪を着せられて裁かれる恐れもあります」
「それもそうですね……」
わたしは、絶賛疑われ中だし、何かというと殺されそうになるし。
でも、追放寝返りルートはなくなったっぽい。
アレッシオ様との婚約もなくなったし。
「暗黒竜との戦いは、国に帰ってからでもできます」
ゲームの範囲外に出てしまうけど、大丈夫なのかな?
それにしても、フォルトナート様と婚約かぁ。
嫌じゃない、嫌じゃないよ。
「では、明日、撤退も含めて皆様と相談しましょう」
「わかりました」
「では、姉上、おやすみなさい」
「今日は、ワタクシが見張りに立ちましょう」
「では、ボクは先に休みます、途中で変わるから」
「はい、そうしてください」
ふたりで警護の相談をしながら、部屋を出て行った。
ベッドの上でゴロゴロしてしまう。
ううっ、婚約、婚約かぁ……。
思わず顔がほころんでしまう。
アレッシオ様には嫌われていたので、この幸せを感じることができなかった。
そうか、この感情は幸せなんだ。
そう思いながら、わたしは眠りに落ちてしまった。
「ん……?」
真っ暗な世界。
微かに漂う腐臭……。
「えええっ、わたし死んだの!?」
いつ、どうやって……。
寝たところまでは覚えているんだけど、何もわからない。
「これで三度目だな」
「…………」
暗黒竜は、心なしか嬉しそうだ。
わたしは、嬉しくない。
「次はどんな能力を望む?」
「もういっそ、不老不死とかは駄目なんですか?」
それなら、死ぬことはなくなる。
ここに来ることもなくなるわけだ。
「それは我の力を超えている、我が不老不死ではないのだからな」
それもそうか。
ボスなんだから、倒せなかったらゲームにならない。
「…………」
それにしても……。
四度目で暗黒竜のものになるらしい。
もう死ねない。
でも、寝てるときに殺されたらどうしようもない……。
なら、完璧ではないけれど……。
「リフレクションを無意識に使えるようにしてくれませんか?」
「ほう、いいだろう」
暗黒竜は面白そうだ。
でも、これで、完璧なバリアになるはずだ。
無意識にでも、リフレクションしてくれるなら攻撃されることはない。
「それにしても、誰がわたしを殺したんだろう? 暗黒竜様は知りませんか?」
「人間のことは興味がない」
「そうですよね」
わたしが殺されたということは、ジルベルトかミーノも殺されたはずだ。
寝たふりをして確かめるしかないか。
「では、次で最後だぞ」
わたしは、暗闇の世界に意識を飲まれていった。




