第十話 次の被害者
「ラファエラ様、ご無事ですか?」
「フォルトナート様、わたしは無事です」
同じく戦場に出ていたフォルトナート様が、聖域に帰ってきて事情を聞いたんだろう。
申し訳なさそうにしている。
「ブルーノ様はどうしていますか?」
「ブルーノは部屋に軟禁しています。父上……王を殺した容疑もあるので、取調中です」
そうか、そう疑われても仕方ないのかもしれない。
でも、一番怪しいのはアリアナ王女なんだけど……また、夢で見たなんて言えないし、気をつけないといけない。
「本当に申し訳ありません、なんと言ってお詫びをすればいいのか……」
「気になさらないでください、わたしは無事でしたし、魔物の軍勢にも勝ったんですから」
「…………」
ふっと、フォルトナート様が微笑む。
その笑顔は、やわらかいものだった。
「貴女は変わられましたね、ラファエラ様」
「そ、そうでしょうか、わたしは、わたしのままですが……」
姫様の中身が、一般市民に変わっているんだから、気が付く者なら気が付くだろう。
さすがに、転生したとかはわからないだろうけど。
「私は、ラファエラ様を信じます、アレッシオが何か言うかも知れませんが、必ず守りますので」
「だ、大丈夫ですよ、アレッシオ様には、嫌われているみたいですけど……」
どうも、第二王子派閥は、ミーノのことが好きみたいだ。
アレッシオ様もブルーノ様も、ミーノに執着を見せていたし。
「では、また食事の時に、それまでお休みください」
「はい、ありがとうございます」
フォルトナート様が、自分の部屋の方に行ってしまう。
わたしも、少し休もうかな。
「あら、ラファエラ様」
「…………!?」
声を掛けてきたのは、アリアナ王女だった。
周りに人はいない。
しまった! まさか、中央広場でふたりきりになるなんて!
「戦場では、ご活躍だったそうですね」
その笑顔は、一ミリも裏を感じさせない自然な笑顔だ。
でも……わたしは知っている。
助けを呼ぼう。
「ミーノ! ちょっと用事があるから……!?」
声が響かない。
まるでコンサートホールにいるように、声が吸収されていた。
わたしはアリアナ様を見る。
彼女のスキル、空間遮断だ。
ゲーム内だと、防御が完璧だった。
「な、なぜ? こんなところで……」
「それはねぇ……お兄様に集ってくる卑しい虫は、一刻も早く排除したいからですよ」
兄ってどっちだろう?
両方かな?
でも、アリアナ様の動機はわかった。
これだと、王殺しの犯人では無さそうだけど……そんなこと言ってる場合じゃない。
デウスエクスマキーナが空間遮断に有効なのか、わからないんだから。
「お、お兄様方は、こんなこと喜びませんよ?」
「お兄様はお優しいですから、私が排除しなくてはいけないんですのよ?」
こんなにヤバイ妹だったのか。
こういう封建時代の王族って、そういうのありそうだよね。
「…………」
わたしは無言で剣を抜く。
時間を稼ぐというのも有効なはずだった。
剣の握り方、使い方は身体が覚えている。
「さようなら、ラファエラ様」
「んっ……!」
アリアナの攻撃に、デウススエクスマキーナが発動した。
わたしの攻撃がアリアナ様を捉える。
「ラファエラ様の戦い方は、想定済みですわ!」
しかし、命中したその攻撃は見えない障壁に阻まれていた。
そして、そのまま本来来るはずだった攻撃を受ける。
「くううううううっ!」
全身に苦痛の痺れが走った。
雷、電撃、スタンガン……。
なにか、そんな効果を持つ剣だったのか、アリアナの新しいスキルか……。
わたしは薄れ行く景色の中で、これで二度目かと考えていた。
「…………?」
目が覚めると、そこは暗黒の世界ではなかった。
気を失う前と同じ、中央広場だ。
「わたし……殺されなかったの……?」
すると、起き上がったわたしのすぐ近く、床の上に……アリアナ王女が倒れていた。
「な、なに……?」
王女の全身が凍り付いている。
生きては……いないだろう。
わたしが攻撃した傷じゃない。
「だ、誰か! 誰か来て下さい!」
その声が届いたのか、ジルベルトとフォルトナート様が駆けつけてきてくれた。
「アリアナ!? これはいったい……!?」
「わ、わたしではありません!」
「姫様、落ち着いて下さい、何があったのですか?」
ジルベルトの言葉に、わたしは何があったのかを話していく。
その頃には、ミーノやアーシア、アレッシオ様とファウスト様もやってきていた。
「氷魔法ですね、それも見事な」
アーシアがアリアナ王女を見てそう言う。
「これはこれは、今度はわたくしが疑われる番でしょうかね」
ファウスト様は、やれやれといった風に肩をすくめて見せていた。
これほど見事な氷魔法となれば、ファウスト様がまず疑われるのかもしれないけど……。
「今回も、ラファエラが関わっている、不自然だ!」
アレッシオ様が、わたしを糾弾してきた。
やっぱり今度も、第一容疑者はわたしだ。
「アレッシオ、ラファエラ様に、こんな氷魔法は使えない」
「なにか、マジックアイテムかも知れません、使えば崩れて消えてしまうような消耗品の」
そういうのもあったかな。
ゲーム開始時に持っているキャラはいなかったと思うけど。
「姉上が気絶していた間のことなら、全員が容疑者になるはずです!」
「気絶していたなんて、嘘かも知れないでしょう?」
アレッシオ様が、ミーノに反論する。
でも、その声には慈しみが込められていた。
本当に、この人はミーノが好きなんだなぁ。
「今のところ、証拠はありません、無意味にお姉様を疑うのは、やめた方がいいと思われますよ?」
「ファウスト様が、ラファエラと手を組んでいる可能性だってある! そうだ、そう考えれば色々と辻褄が合うぞ……」
なんだか、怪しい考えにたどり着いてしまったみたいだ。
「やめよ、アレッシオ、お前の拙い考えで誰かを陥れるのはゆるさん」
「くっ、兄上……後悔しても知りませんよ」
そこで、取りあえずアリアナ様のご遺体を部屋に運んだ。
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