4-2 犬の皇帝は桃太郎農園にナゼ進軍したのか
栗鳥栖の話す問題とは、すなわち犬の軍の進撃でした。
時を少し戻し、緑壁が崩れ去った時、桃太郎農園と同じく犬帝国にも崩れ去る轟音が鳴り響きました。緑壁を監視していた犬の隊員は崩壊の現状を報告するために犬の皇帝のもとに走りました。
犬の皇帝はこの緑壁崩壊の報告を受け、しかし、柿万次郎のように速攻緑壁のもとに向かうことはできませんでした。これは、犬帝国にとってこの緑壁の崩壊が桃太郎の意図する行為かどうか判断することが難しかったためでした。もし、この緑壁の崩壊が桃太郎の意図する行為であり、他の場所に巨大樹を作るような攻撃を行った場合、緑壁がなくなったことをいいことに攻め入っては再び桃太郎の植物攻撃を受ける可能性があったのです。一方で、この緑壁の崩壊が桃太郎の力が尽きた故の結果だった場合には、攻め入らなければならない絶好のチャンスでした。
犬の帝国は小隊が多数存在し、それを皇帝がまとめ指揮する形態をとっており、この二つの可能性で二分され、意見を言い合い、どうするべきかまとまらずにいる状態でした。その言い合いを幾分か聞いた後、皇帝はおもむろに立ち上がり、皆にこう告げました。
「緑壁の崩壊が、桃太郎の意図するところならば、我々は桃太郎と同盟を結ぶべき。逆に意図せぬところならば、ここが絶好の攻め時。故に我々は今から、桃太郎農園に向かうとする。」
この思考を予想していた栗鳥栖は、桃太郎農園西の城の前で犬の軍勢を歓迎しつつも、まだ戦争を行っている敵国であり、城の中に入れることは難しいため、城の外にて話し合いを行う形で対応を行いました。栗鳥栖は、犬の進軍が予想できたため、待ち受けて迎え撃つことも可能でしたが、いまだ桃太郎農園の兵力は完全ではないこと、そして、もし、犬たちが全面交戦の構えとなった場合でも、この交渉という時間稼ぎの間に桃太郎を逃がすことができると考えたのでした。
栗鳥栖と犬の皇帝は城の前の平地において向かい合いました。お互いの意思を無言の中で読み取る幾分かの時間の後、栗鳥栖が初めに啖呵を切りました。
「我々は植物の力を操る民である!今回の緑壁の崩壊は、この桃太郎農園東において逆らい攻め入ったキジ、猿を葬るために力を行使したためである!」
これを聞き、犬の軍勢にざわめきが起こりました。この様子を見て、栗鳥栖はあと少しで押し切れると確信しました。
「この力を再び君たちに行使することもできる。しかし、植物たちも、そして桃太郎も攻撃をして、多くの犠牲を出すことを好んでいない。実際、君たちと我々の戦いにおいても、桃太郎は緑壁を築くことで、犠牲者を最小限に抑えようとしていた。我々は戦いを好まない。いまここで、不戦の契りを交わし、この戦争を終わらせたい。」
これを聞き、犬の軍勢のなかでは同盟を結ぶべきと騒ぐものが出てきました。そして、それに呼応して、どんどんと騒がしくなっていきました。しかし、この騒々しさは犬の皇帝の一言によって静寂となりました
「この話には大きな矛盾が一つある。故に説明願いたい。」
これを聞き、栗鳥栖はこう問いました。
「どのような矛盾がありましょうか。」
それに対し、犬の皇帝は
「桃太郎は戦いを好まず、攻撃を嫌うということならば、我々に対する緑壁は理解できる。しかし、今回の巨大樹は我々が考えるに、なにか一定の領域に存在するものを植物で絞殺したかのように感じる。これすなわち守りの意志ではなく、攻めの意志故ではないか。この矛盾をどう説明する。」
これを聞き、栗鳥栖はこの交渉は一波乱あると腹をくくりました。




