3-3 おばあさんはナゼ、キジの森に向かったのか
北の猿と栗栖の同盟締結から一週間が経ち、この噂は桃太郎農園全土に伝わり、それは東の地にも伝わっていました。
東の地を実質的に支配していた桃太郎のおばあさんは、この同盟の話を聞き、とても悔しがり、
「なんだい、あの北の小娘が!たまたま低能猿が寄り付いたことをいいことに力をつけおって!こんなムカつくのは久々だよ!お前も近くのキジの森でも支配してこないものかね。この役立たずが!」
などと仮の支配者として即位している桃次郎に罵声を浴びせていました。この罵声に困り果てた桃次郎は
「それなら、私たちも同じように食料を提供して同盟を結べばいいではありませんか。きっと同じように森のキジたちも食料不足に陥っていることでしょう。」
これを聞いたおばあさんは、その手があったかと気づき、そして、少し考え、もっとキジの森を効率的に支配する方法を思いつきました。
「生ぬるいわ、桃次郎も北の小娘も。わたしはもっとキジたちをがっつり支配してやるわい。」
おばあさんと桃次郎たちは、桃太郎農園の東に隣接するキジの森へと向かいました。
キジたちはおばあさんたちを受け入れ、赤の間へと向かい入れました。赤の間は、大量のオスキジの顔の赤の皮膚を縫い合わせた布地によって囲われた巨大なテントのようになっており、そこに数十のキジが二列に並び、その一番奥にはこの森を支配するキジの女王が鎮座していました。
おばあさんはこのキジの女王の威厳に押されながらも、女王の前に立ち、一礼し、言いました。
「私たちは、キジの方たちが、飢饉による食糧不足に陥っていることを聞き、援助できないかと思い、ここに訪問させていただきました。」
これを聞き、女王は、
「よく遠路はるばる来てくださいました。その提案、非常にうれしく思います。しかしながら、私たちは強き女のキジの森。植物は確かに不作ですが、動物の肉を十分に得ることができています。故に、北の猿と同じように力を貸す同盟を結ぶのは我々としては意に反することになります。」
これを聞き、桃次郎は顔を真っ青にし、キジたちを恐れました。しかし、おばあさんはここで引き下がってなるものかと思い、言いました。
「私たちは、キジの方たちと協力するためにここに来ました。まだ交友関係のない私たちが、はじめから同盟を結ぶことは難しいかもしれませんが、私たちは野菜や果物を、キジの方々は肉をお互いに交換する、貿易関係を結ぶことができないかと思います。」
これを聞き、キジたちは少しざわつきました。なぜなら、桃太郎農園とはいままで、どの国とも貿易を行わない鎖国主義の土地だったからです。しばしのざわめきの後、キジの女王が羽を広げ、ざわめきを沈め、そして、言いました。
「桃太郎農園も、大きく方針を転換したようですね。この貿易の提案は私たちにとっても大いに価値のある提案だと思います。ぜひこの提案を受けさせていただきましょう。」
これを聞き、おばあさんは喜びました。
「提案を受け入れてくださいまして、ありがたき幸せです。ぜひとも友好の印として、私たち自慢のきびだんごをお食べください。」
そして、キジの森へおばあさんから、大量のきびだんごが貢ぎ物として送られました。キジたちはこれに大いに感謝し、その場は和やかに終わりました。
「キジたちと無事に貿易の仲を結ぶことができてよかったですね。これで一安心です。」
帰路の道の途中、桃次郎はおばあさんに一言いいました。これを聞き、
「だからお前は甘いのだ。キジたちは近いうち、必ず我々のもとに物乞いをすることになる。」
おばあさんは怪しい笑いを浮かべ、言いました。