3-2 桃太郎農園が猿に渡したブツとはナニか
桃太郎がいなくなったあと、桃太郎農園は農園の全支配を目的とし、東西南北の4つの勢力に分かれていました。
北は女王、栗鳥栖。彼女は冷静であり、かつ策略家でした。
南は魔王、青梨亜成。戦争主義者で残酷。戦闘狂でかなり強い男でした。
東は仮王、桃次郎。名の通りおばあさんとおじいさんの息子。しかしながら、実質支配していたのはおばあさんでした。
そして、西は誠王、柿万次郎。人望に厚いが、少し優柔不断なところもある男でした。
桃太郎の意思により、万次郎が総大将となっていましたが、それぞれがその座を狙い、戦略を巡らせていました。
北の猿山の猿たちが山を下り、桃太郎農園へと向かったとき、桃太郎農園の代表として対面したのは当然ながら北を支配する鳥栖となりました。鳥栖は特に戦闘態勢での接触ではない猿たちを城に通し、話をすることにしました。
通された猿たちが席に着き、一言二言の談笑の後、猿の使者の一人はこう切り出しました。
「本日、私たちは桃太郎農園の桃太郎殿と交渉を致したく、訪問させていただきました。故に敵対の意思はありません。」
猿たちも含め、桃太郎農園の周辺国には一つ大きな誤解がありました。それは桃太郎が農園を守ったあとも元気に農園内に存在していると勘違いしていることでした。実際、桃太郎が緑壁を作ったとき、農園の人間以外の全ての犬は殺され、桃太郎のエネルギーとされていました。そのため、農園の外の誰もが緑壁の中に桃太郎がいるとは思っていなかったのでした。そして、そのことを鳥栖はこの猿の使者の最初の一言から瞬時に読み取りました。
「私たちも、戦争を行わず、交渉によって国々がつながることをよいと思っていますし、それは桃太郎様もそう思っています。ここでの話は私が責任をもって、桃太郎様にお伝えしましょう。」
この一言に、猿たち一同は一つ安心した雰囲気になりました。そして、猿の使者は猿山が不作であること、そして、食料の支援を桃太郎農園から猿山に対してしてくれないかと鳥栖に話しました。
「確かに私たちの農園は今年も豊作で、あなた方に食料を提供することは可能です。しかし、あなた方もこちらに何か提供するのが筋でしょう。私たちは四方を他の国に囲まれている国であり、犬帝国のように襲われることもあります。有事の際には私たちに力を貸し、戦争をともに戦ってくれると誓っていただけませんか。」
この鳥栖の提案に猿の使者はうなずき同意し、ここに同盟が締結されたのでした。
その後、鳥栖たちは来訪した猿の使者たちを歓迎し、宴を開きました。
宴では、桃太郎農園で作られた新鮮な野菜や、猿たちが貢ぎ物としてもってきた肉類を上手に料理したものが並びました。そして、その中に、きびだんごもありました。猿たちはこのきびだんごを大層気に入りました。そして、そのきびだんごは猿の使者たちの帰りのお土産となり、猿山の王のもとへと届けられました。
猿山の王もこのきびだんごがとても気に入り、このエピソードが今現代の桃太郎において、きびだんごが桃太郎と家来たちの関係を築いた象徴となるのでした。
一方で、他方で、このきびだんごを悪い方向に使った者が農園に現れるのでした。