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さんぽ道

作者: 百合花

この作品は、ちょうど秋くらいから読んでもらうともの悲しい感じや気持ちがほっこりするかなぁと思い書きました。

独身時代思いつきで書いたものなので拙い表現が多いですが、どこにも応募したことがなくでもちょっと誰かに見てもらいたくて投稿してみました。宜しくお願い致します。

雪のちらつく窓の景色を眺めながら、私はあの日を思い出す。

ソファーで寝てしまったすずの小さな寝息を聞きながら、私もうつらうつらして横になる。

すずは今年で2歳になった。いつかこの子とも一緒にあの場所に行く日が来るのかな。


私には仲の良い友達が3人しかいない。すごく少ないけれど、本当の自分を分かってくれる人はそんなに沢山いらない。

友達と買い物に出掛けるのも好きだけど、私は1人で散歩するのが1番好きだった。誰も知らない道を通って小さな雑貨屋さんを見つけたり、お気に入りのカフェで1日本を読んで過ごしているとほっこりした気持ちになる。

繰り返しの毎日に疲れるといつも私はふらふらとお気に入りの中崎町に行く。

行く度に増えるお気に入りのお店やカフェ、私の幸せ時間が一杯詰まった大好きな町。

そんな中崎町の存在を知ることができたのはナオのおかげだった。


ナオとは出会い系サイトで知り合った。始めはただの暇つぶしだったのに話をしていくうちに、1人の時間が好きな事や静かな所が好きな所が私と似ていて次第に惹かれていった。

デートで本屋さんに行きお気に入りの小説を探していたら、

「こっちに来て。」と、ナオが雑貨屋さんの本を見せてくれた。小さな棚に宝物みたいに大切に並べられたアクセサリーや食器の写真が沢山載っていて私は一目で中崎町の虜になった。

お昼も食べていないので早速歩いて行ってみることにしようということになった。

初めての場所はいつも探検に行くみたいでワクワクした。途中で小さな公園を見つけて、ナオが途中のパン屋さんで買ってくれたチョコくるみパンを半分こして食べた。

なんて事ないありふれた、このゆるい温かい時間が永遠に続けばいいのにと思っていた。

休憩をしてから、探していたカフェが見つかり私はゆっくりと店内を見渡した。

友達の家に遊びに来たような、ほんわかと温かい室内には、アンティークの小物が並んでいて80年代のレトロな椅子があり私はこの素敵な雰囲気に溜息をついた。

湧き上がる気持ちを抑えながら椅子に座り、パラパラとメニューをめくる。

【オレンジ・ペコ】という可愛い名前の紅茶を初めて飲んだ。その愛らしい響きとオレンジの優しい香りが口の中いっぱいに広がり、私はオレンジ・ペコにも一目惚れしてしまった。

それから私達は何度もそのカフェに通い、好きな本を1日読んだりチョコレートケーキを半分こで食べたりした。そんな些細な幸せがただ嬉しかった。


ナオが亡くなったのはそれから半年後だった。普段は調子が悪い時もあまり弱音を吐かないのに、その日は頭が痛いとずっと横になっていた。脳溢血だった。

あまりに突然すぎて、私は何が何だか分からないまま気付けばナオの遺影を抱えて立ち尽くしていた。

日が経つにつれ、ナオが居なくなったことが体に染み渡っていった。あんなに側に居たのに。

ナオが亡くなってから私は散歩をやめた。ただ家の中でうずくまって何もしなかった。ナオともう一度歩きたかった。どうして。


それか3年が経ち、引きこもってばかりの私を心配した母にお見合いの話を持ちかけられた。

順一さんは、身長が高くて少し顔が濃い人だった。ナオと全然違うタイプで良く喋る、犬みたいな無邪気な顔で笑う人。

「好きなお店とかありますか?」と尋ねられ、私はふと中崎町を思い出した。この人となら行けるかもしれない。


中崎町の街並みはあの頃と変わらず優しく私を迎えてくれた。ナオと見つけた公園を通り過ぎた時、ナオが背中を押してくれた気がした。

思い出の詰まったカフェに着いてメニューを見たら、オレンジ・ペコはちゃんとそこに並んでいた。

「私はオレンジ・ペコで。」

と答えると順一さんが、

「僕もオレンジ・ペコ、大好きなんです。」と言ってくれた時私は前を向こうと決めた。


夕日が沈み始めた頃、

「おかあちゃん…」とすずが目を覚ました。

また慌ただしい日常が始まる。

「今日は寒いから、これ飲んでごらん。」

小さい両手で包むように持ったうさぎの絵柄のマグカップには、オレンジの輪切りを一つ入れた夕焼け色の飲み物がたっぷり入っていた。


私の拙い作品を読んで頂きありがとうございました。2人の子どもを授かり小説を書いていたことなどすっかり忘れていましたが、整理していて見つけたのでつい懐かしくなり自分で添削しながら投稿してみました。この主人公の 私 は私がモデルです。中崎町が大好きで本が大好きなのは一緒で、今もいろんな話を読んだりしています。ナオのような亡くなった人はいませんが笑雑貨屋さん巡りも大好きなのでもう少し子どもが大きくなったらまた再開しようと思っています。

また作品が見つかったら投稿してみようと思います。

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