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母親でいることの覚悟

作者: 阿賀沢 隼尾

 ずっと、不安だった。


 血の繋がりがない息子を女手一つで育てることが出来るのかと。


 私には『母親』でいる事の責任があるのか。

 覚悟があるのか。

『母親』とは何なのか。


 日々模索するしかなくて。

 どうすることの出来ない不安と憤りが日々私の心を蝕んでいった。


 正解なんて何一つ無くて、正解を探せば探すほど、両手から何かが零れ落ちる音がした。


 それでも、彼の笑顔だけが私の唯一の救いだった。


 彼がいれば他には何も要らない。

 天使のような優しさが私の心を浄化させてくれた。


「本当の母親じゃないくせに————」


 反抗期が来て、息子が反抗する日が多くなった。

 生みの親を探しているのだろう。

 私もそうだった。


『本当の母親』を探して行くあてもない旅に出る。

 でも、そこには何も無くて。


 一番辛いのは彼なのだということを私は一番知っている。

 なぜ自分を育ててくれたのか。

 血が繋がっていないのに、なぜ自分を育ててくれたのか。


 なぜ、ここまで自分を育ててくれたのか。


 本物がニセモノだと気づいた時のショックは地に落ちるような気分だった。


 どう接すれば良いのか分からない。

 今まで『母親』と思っていたものが、全く別のものに見えてしまうのだから。


 それでも、根気よく彼と接していくしかない。

 母親だと思われていないのかもしれない。

 彼の中にある不安は到底拭い切れないものなのだろう。


 それでも、私はあなたを愛している。


 希望に満ちたあの瞳が、純粋無垢な瞳。

 あの柔らかい温もりを纏った小さな手。

 全てを包み込んでくれる、小さくも力強く、生命力に溢れた小さな手が。


 笑顔が。


 あの時の貴方がいてくれたから、今の私がいる。


 私を一生懸命育ててくれた人がいるから。

『愛』を教えてくれた人がいるから、私は今を生き続けることが出来る。


 血の繋がりなんて、私にとってどうでもよかった。

 私を救ってくれた貴方がいてくれたから。


 希望と未来に満ちた貴方がいてくれたから、私は貴方の成長する姿を見てみたかった。


『本物の母親』と認めてくれなくて良い。

 ただ、いつか共に人生を歩み続ける存在でいられるように。


『ニセモノ』が『本物』の愛に。

『本物』以上の愛になれる日が来ることを願って。


 私は信じ続けて日々を過ごしていきたい。

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