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物語のお墓 ※供養中

淫魔令嬢はまおー様に婚約破棄されたけど、再び婚約を申し込もうと頑張る

作者: 粘々寝


 優雅なゴシックドレスを着込み、ふかふかな高級イスに優雅に腰掛けながら、淫魔令嬢のイライザは机上に置かれた便せんを見て、喉をうならせている。その側では、ティーポットとカップを乗せたシルバートレイを片手に持った悪魔執事が直立不動の姿勢で待機している。


「爺や」

「何でしょうイライザお嬢様」

「この書類についてなんだが、どう思う」


 イライザは魔王様の署名が記された便せんの中身を取り出して確認し、爺に渡した。同じように書類に目を通した爺は深くため息を吐いたのだ。

 

 一方で、イライザの方はプルプルと震えだしていた。


「ええ、婚約破棄の書状ですね。よほどやむを得ぬ事情があったのでしょう」


「いやいやいや、おかしいだろう? 私は由緒正しい名門魔族の家系だし、親同士でも婚約には納得してたし、言ってはアレだけど、私とまおー様ってらぶらぶだっただろう?」


「ええ、見ていて恥ずかしくなるくらいにらぶらぶでございましたな」


「じゃあ、何でだよ!」


 イライザは黒く細長い尻尾をピーンと上に逆立てながら、感情に任せて叫ぶ。


 イライザはまおー様が好きである。それもとてもとてもが付くくらいに大好きなのだ。イライザ自身、まおー様とは仲が良いと思っていたし、まおー様もイライザに好意を持っているのだと思っていた。


 だからこそ、ある結論に至る。


「もしかして、女か? 私以外に女が出来たのか?」


「……まお―様も最近は随分と魔王らしく成長なされましたからなぁ。新しい女性が出来ていてもおかしくはないと思われますが」


「そうだよな、昔は小っちゃかったのに今は身体とか凄く逞しくなってきてるし、その、かっこいいし。魔力とかもう私の事も追い抜いちゃってるし……」


 今のまおー様の姿を思い出し、イライザは顔を赤らめる。そう、まおー様の事を男として意識してしまっていたのだ。目の前にまおー様がいれば、淫魔の性に逆らわずに今すぐにでも押し倒したい勢いだったりする。


「こうやって婚約破棄の書類を送りつけられた以上、諦めるしかないのではないですか?」


「まおー様に捨てられたら私はどうなるんだよ。今年で三十にもなる淫魔なのに未だに処女なんだぞ!」


 淫魔と悪魔族は種族そのものが違う。そのため、イライザは悪魔族の常識に合わせる形でまおー様の為に操を立てていた。その間、ずっと淫魔の性も我慢し続けて来たのだ。


 淫魔族にとっての価値観では処女とは屈辱以外の何物でもない。男は無理矢理奪うものなのだから。


「なんとおいたわしい……、イライザ様」


「ぐすっ。まおー様酷いよ。こんなのあんまりだよ」


 今年こそ、当初の婚約通りに婚姻届けにサインがされるはずだった。


「どうしても気になるのでしたらまおー様に直接お会いして婚約破棄の意図を確かめれば良いではないですか」


 爺にそう言われた時、イライザは固まってしまった。真実を知る事が怖かったためだ。


「……やだ」


「イライザ様……そう言っても始まりませんぞ」


「やだやだやだやだやだ! ヤダーーーー!」


 イライザは駄々をこねるあまりに唐突にヘッドスピンブレイクダンスを開始する。なお、淫魔の服は特別制で魔法もかかっているのでスカートが捲れるという事はない。


「しっかりなさってください。これでも大魔公(デューク)・ローゼン殿の令嬢なのですから、はしたない真似はおやめください」


 爺は回転中のイライザを抱え上げ、イスに無理矢理座らせる。


「あう」


「行きましょう。イライザ様。いざとなったら爺がまおー様よりイケメンな悪魔公爵との見合いをセッティングしましょう」


「うう、わかったよ……」


 

 時は進み、場所は魔王城の客間に移る。


「よく来たな、イライザ。用向きは……その大よそ検討はついてるがな」


 禍々しい魔力と威圧感を周囲に放ち、ブーメラン黒ビキニパンツ一丁という見た目で大胸筋(だいきょうきん)大腿四頭筋(だいたいしとうきん)を大胆に露出させ、紫色の肌を持つ男が上座に座っていた。


 それがまおー様だった。


 なお、悪魔族基準ではイケメンである。大半の者達は常に全裸でそこいらを歩いているのだから、黒ビキニパンツであっても立派なお洒落なのだ。


(うっ……やっぱりカッコイイ)


 そして、恋という病におかされているイライザは盲目だった。まおー様に見惚れ、動けなくなってしまったのだ。


「お、おい、イライザ」


「はっ!? そうだ、今すぐ結婚しよ?」


 イライザは机の上に乗り出し、まおー様に顔を近づけようとする。


「お主、書状見たのか? 結婚は出来ぬと書いてるだろう」


「どうして!? まおー様は私の事が嫌いになったの? それとも別の女の子が出来たの?」


 鬼気迫る表情でイライザに迫られて困惑するまおー様であったが、肩を優しく押して止める。そして、大きく息を吸った後、真剣な眼差しでイライザを見つめた。


「イライザよ。お主は淫魔の中では桁違いの魔力を持つ大きな戦力だ。今は無き父の代わりに大魔公(デューク)としてその土地を治めなければならない。そうしないと混乱が生じるのはわかるな?」


「ええ、そうね。人間にお父様を討ち取られてしまいましたので、今は私が領地を統治しております。ですが、それとこれとは……」


「イライザよ。いい加減大人になろう。そもそも私とお前では最初っから結婚など無理なのだ」


「どうして!?」


「力のある淫魔程、若く美しい姿をとると言われておるな」


「ええ、その点では私は淫魔の中で最も力が強く、最も美しいと自負しております」


 イライザは胸に手を当てながら、謙虚に胸を張ってみせる。


「だがな、イライザよ。お主は若すぎるのだ。もはや犯罪だ」


「え!?」


「いや、驚く程でもない。常識的に考えてみよ。この体格差は流石にどうにもならないだろう」


 まおー様の体格は3mに及ぶ筋肉ムキムキのマッチョマンの巨漢だ。一方でイライザはと言えば、人間で言う所の10台前半の少女同然の体格しかなかった。


 控えめに言ってロリコンは犯罪である。悪魔の法でもそう決められている。


「まー君、私、頑張るから! それでもダメ?」


「ダメ。国家元首が自分で定めた法を破るなど言語道断だろう。まぁ、そのなんだ。別にイライザねーちゃんの事が嫌いになったわけではないんだからねっ」


 実の所、まおー様の方が10歳年下だったりする。昔は一緒におままごとをするくらいに仲が良く、まおー様の初恋の相手もイライザだった。


 しかし、いつまでも同じ姿を取り続けるイライザに対し、日々成長していく己の身体に思い悩んでいた。だからこそ、まおー様は苦渋の決断をとったのである。

うん、まぁ、あれなんだ。ギャグなんだ。すまない。

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