20.ユニークスキルの真髄
「ふはははは」
突如として笑い出す親方と呼ばれるもの。
「なんだよ」
「君たちは馬鹿だなと思ってね。エジル君を倒すほどの逸材かと思えば彼我の力量差も測れないなんて。残念だ」
親方は視線をエリアスとアイリスの後ろへと向ける。
「君たちもそちら側につくとは愚か極まりない」
親方は大して失望していないような顔をして言う。
それどころか罰を与えるという名目でその玩具をどう扱うかという未来のことを考えたりしていそうだ。
エリアスは念じる
すると、トリカゴに出来ていた扉とブラックバックの中の魔石が消失する。
「ほほう、これは面白いですね。あなたも特殊なスキルを持っているのですか。では少し待っていてくださいね」
親方は正規の扉へと回り込んでから来るようだ。
「アリス、最初は様子見しよう。相手のユニークスキルを見極めてから相手への攻撃を開始しよう。それと、相手は第一陣だろうから身体能力は、僕では太刀打ちできないかもしれない」
「じゃあ、私がやれば、いい?」
震えていた過去のアイリスはどこか彼方へと飛んでいき、そこにいるのは真紅と闇とが入り混じったオーラを纏うアイリスのみ。
憎悪の感情がコントロール下を離れるほどに活性化しているようだ。
「できればでいい。もしダメだと思ったらすぐ離脱してほしい。殺されなければこっちには『等価交換』があるから立て直せる」
静かに首を立てに降るアイリス。
と、そこに
「俺たちに出来ることはないか?」
閉じ込められていたパーティーの第一陣、第二陣の者達が声をかけてくる。彼らもどうにもならないこの現状に対して覚悟を決めたようである。
「前に親方と戦った時は手も足も出なかったんですよね?」
「申し訳ないがそうだ」
「どうやってやられたかを教えてくれませんか?」
その瞬間、全員が苦虫を噛み潰したような表情となる。
「どうされたんですか?」
「申し訳ない。俺たちは戦闘らしい戦闘はしていないんだ。というか出来なかった」
「というと?」
「気がつけば何かが当たったと思った時には吹き飛ばされていて壁や木に激突したんだ。目視では何も見えなかった」
「私達は1回その攻撃を受ける度に1人、また1人と意識を刈り取られていき、気づけば武器をすべて取り上げられ、手にはスキル封印の枷を嵌められてしまったのよ」
口々に全員が言うことは共通しており何も出来ないうちに無力化されてしまったという事だ。
「近づかない方が、いい、かな?」
「遠距離から最初は攻撃しようか。それと皆さん、2つやってもらいたいことがあります」
「なんでも言ってくれ」
全員が前のめりになってエリアスの方へ心なしか詰め寄ってくるので、圧に押されエリアスは少し後退する。
「ま、まず一つ。エジルを抑えていてください」
一斉に全員が頷く。
「もう一つはセーラさんを探してきてください。彼女が一番安全でもあり危険でもあります。親方と呼ばれるものは僕とアリスで足を止めておきます」
「分かった。だが俺たちは完全な丸腰だ。ここのパントリーを取り仕切る奴らはあの2人だけじゃなく他にも何人かいる。流石に分が悪い」
「それなら安心してください」
エリアスは目の前に手を伸ばす。
そして武器と防具の交換を念じる。
魔石が消費されていく。
安全マージンが十分に取れるほどの魔石以外はすべて使うくらいの量の魔石を消費仕切った時、空間に歪みが現れた。
眩い光がカッと猛威を振るったかと思えば目の前にあるのは武器、防具の山。
それもかなり良質の。
素材は希少金属とまではいくほどの価値のものではないが、鍛え方、手入れは素晴らしく、さらには属性付与まで可能な逸品となっていた。
手に嵌められていたスキル封印の枷も同時に外れている。
「な、何が起きたんだ!?」
「虚空から……武器が出てきたのよね」
「こんな能力が……」
現れた武器と防具の山に戸惑いと興奮を隠せない。
驚きのあまりぼーっとそれらの武器を眺めていたパーティーは興奮の色合いを変えていく。
「こんな能力があれば……」
「いけるかもしれない」
「光が見えてきた……」
エリアスはモチベーションの上昇へとパフォーマンスが一役買ったことに安堵を覚え、心強く思った。
「これを使ってください。素材はあれですけどかなりの業物のはずです」
「これは……!」
武器の中から剣をとった男が素振りをすると思わずと言った感じで感嘆の声をあげる。
「なんだこれ!?」
「軽い、手にフィットする!」
「ずっと一緒にやってきた相棒よりも……」
あとを追って同様の声が聞こえてくる。
「それではお願いします。エジルは多分親方によって救出されています。なので彼は出来たらでいいのでまずはセーラさんを救出してください」
エリアスは扉にもう一度だけ扉をつくる。
そしてパーティーが全員出ていくのを目にして視線を生い茂る木の奥へと向ける。
「アリス、構えて」
言われた通りにアイリスはオーラを収縮させて最大限の警戒・攻撃体勢に入った。
扉の創造を陰から静かに見守っていた男が現れる。
「いやー、素晴らしいですね。とても便利な能力だ。それだけでも君の事を欲しくなってきましたよ」
粘着質でおぞましい視線が視線の先から襲ってくる。
強者の風格と言ったものを相手は持っていないため余計にタチが悪い。感覚を研ぎ澄ませないと見失ってしまう恐れもありそうであった。
「おや、君もそんなに必死に私のことを見つめてくれるのかい。その綺麗な純金色の瞳を潰してやりたくなっちゃうじゃないか。その後にまた私が治してあげるからね」
アイリスとエリアスには目の前の男がオークを前にした時よりも相手が醜く見えていた。
「お嬢さんも私が美味しく頂いてあげよう」
「お喋りはもういい?」
埒が明かない会話に対してエリアスは言葉でジャブを入れることにする。
「やれやれ、そんなに早くやられたいのかい?君は相当なMだねえ」
「やられるのは僕達じゃない。お前だよ」
形相がすごい勢いで変わった。
「あぁん?」
コレにはエリアスとアイリスは体を竦ませる。
「よし、わかったよ君たち。そんなに早く私にいたぶって欲しいんだね。欲しがりさんだな~。それならくれてやるよ」
今度は表情筋が吊るのではないかと思うほどの満面の笑みに変わり、気味が悪くてしょうがない。
と、言葉を言い終えると同時に
二人は背筋に嫌な感覚を覚える。
同時にエリアスは吹き飛ばされた。
アイリスは多少後退はしたものの劇的に上昇した身体能力を生かして先制攻撃を耐えきる。
「ほう」
男はとても嬉しそうな顔をする。残酷で冷酷で狂ったものの笑顔。
「これを耐えますかね~、じゃあこれなんてどうでしょう」
アイリスは相手の攻撃の予備動作を狙って弾丸となり急接近する。
が、
ガン
アイリスは後方へと親方による初撃と同じ力、今回は連撃によって吹き飛ばされる。スキルを使っている状態にも関わらず。
エリアスもアイリスも後方へと飛ばされて壁へと激突したが大したダメージは受けていない。
けれども小さくない絶望に暮れる。
「なんだあの攻撃」
「速すぎ、るよ」
アイリスの早さを上回り、そのうえ連撃されてしまえばエリアスの〈収束〉が間に合わない。
何より2人には相手のユニークスキルの正体がわからない。
そう、これが本来のユニークスキル。
使い方のわからないユニークスキルは雑魚でしかない。
模索しているうちに体の動く旬は瞬く間に過ぎていってしまい気づけば人生の終盤となる頃にやっとの事で使い方に気づくなんてこともざらだ。
だが、センスのいいものは、運のいいものはすぐに使いこなせるようになるケースがある。
当然のことで相手には全く情報はなく、次の攻撃が読めない。動きがわからない。びっくり箱を前にして全く驚かずに戦いきって初めてまともな戦いとなるのだ。
そんな奴らが敵になるなんて面倒で恐ろしいに決まっている。
だから国も手を出したくても出せないのだ。
討伐したくても犠牲の数を計算すればためらってしまうのも致し方ない。
そして大体のユニークスキル持ちははぐれ者。
子供の時に使えないスキルを貰ったが為に馬鹿にされる。弱いと言われる。
極論まで持っていけば第一陣、第二陣でなくても覚醒したユニークスキルがあればやりあえる。それどころか圧倒だって夢ではない。
大人になった頃に、子供の頃にいじめられていたり辛い目にあった者達が国にいい思いを抱くはずがない。
ある日ぽっと訪れる覚醒。
過去との決別。
小さな革命
ユニークスキルは使い方。弱いものだって存在する。
ただ、本物を逃してしまった時、逃した魚は大きいのだ。ユニークスキルが戦況を掻き乱す。
ずっと昔から言われている事だ。
これがユニークスキルの本懐。
アンバランスな強さを持つ者達の宿命なのだ。
「アリス、あのスキルはなんだと思う」
「魔法が、スキルになった、とか?」
「確かにありそうだね」
近づいてくる人影。
新たに生成される衝撃波。
そこらに落ちている小枝のようにコロコロカラカラと地面を転がる二人。どうしても発動を阻止できない。見ることができない。
幸いなことにダメージは少ない。
エリアスが戦闘を続行可能であるという状況から鑑みれば相手はまだ力を半分くらいしか出していないのだろう。
「あいつのユニークスキルは衝撃波なのかな?」
「それだと、強すぎない、かな?」
確かにアイリスの言うことは最もだ。
神の言うには覚醒した第六陣のスキルと異能を超えるものはないような感じで言っていた言葉を思い出すエリアス。
「やっぱり魔法がスキルとなって現れたのかな」
また、新たな不可視の砲弾が迫る。
「何度もやられ続けるわけにはいかないんでね」
アイリスを自分のそばへと抱き寄せてから〈収束〉で攻撃を押さえ込み、すぐさま〈放出〉を行使する。
それによって次のタイミングで襲いかかってくる衝撃波を相殺し、その瞬間の隙をついて危険地帯から全力で横っ飛びして回避をする。
「ほう、これを避けますか。それに今私の攻撃を止めましたね。実に興味深いですね」
一層深まる相手のスキルの謎に焦る2人とは対照的に余裕で楽しそうな顔をしている男。
戦闘中ということを微塵も感じさせない出で立ちであり、そもそも今の状況を戦闘とは思っておらず一方的ないじめの時間だとでも思っているのであろう。
「ですが、ここまでです」
男はお遊びの時間の終焉、最後通告を告げた。
新たな衝撃波でエリアスとアイリスを危険に晒すかと思われた時。
ドンッ
エリアスの片手に握りしめられた魔導銃。
男は魔力の弾丸を衝撃波により確実に無力化していく。
「ほう、これは厄介な戦いだ」
親方と呼ばれる男はそう呟くと嬉しそうな顔をする。
エリアスの異能は相手の一方的な″距離″の有効利用による攻撃を相殺する術を手に入れた。
アイリスも準備は万端。
ユニークスキルの解明は急務だが、これからはまともな戦いが送れそうであると感じられる。
さあ、本当の戦闘の開始だ。
更新遅れてしまい申し訳ありません。
私事ですが大事な試験がありました。
更新頻度が下がらないようにこれからも頑張りますが、下がってしまった時には暖かい目で見ていただければ幸いです。
これからもこの作品をお願いします!





